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看護師という働き方〜新人時代後編〜


本当はただ困っている人に寄り添いたいだけだった。


だけどそれは、まず自分を大切にできてからできること。



新人看護師だった私は早く1人前の看護師になりたくて、自分を犠牲にして、がむしゃらに勉強しました。
しかし、そんな無理な生活は1年ももたなかったのです。

死と隣合わせの環境で、自分がミスしたことで患者さんが亡くなる可能性の恐怖。

毎日勉強しても足りない知識。

先輩に怒られ、泣きながら同期と慰めあう日々。


常に命に直結する緊張感のある職場だったからこそ先輩は厳しかった。

新人看護師につくプリセプターと呼ばれる先輩がいます。私の担当のプリセプターさんは、看護師4年目でとにかく仕事ができました。

仕事も効率よく早く勤勉で、医師と肩を並べて議論し合い、全幅の信頼を寄せられている人でした。
後に医師を目指しているとの噂を聞きました。

私は、そんな先輩の教えについていけなかったのです。

沢山復習してイメージトレーニングをして仕事をするも、イレギュラーなことが起きたら対応できずパニックになる。

段々と先輩の顔が曇り、他の先輩とひそひそと話されているような気がする。


そして気づきました。

私、仕事できないんだ。

勉強してもわからないし先輩の言っていることが理解できない。

患者さんを満足に看ることもできず、このままだと患者さんに迷惑をかける。

同期の子は他のプリセプターの先輩とうまくやっている中、私だけこんな態度をされるのは私が駄目だからなのだろう。

ぐるぐるとマイナスな考えが巡り、もう終わりだと思いました。

社会人1年目での大きな挫折でした。



そして半年過ぎた頃から、仲の良い同期を避けるようになりました。

毎日泣き、頑張っていた課題も手につかず。
寝ていてもアラーム音や救急車の音の幻聴が聞こえ目が覚める。
朝は吐き気がして、体重は10キロ近く減りました。
誰も信じられず、他人との会話もぎこちなくなりました。

職場の看護師長は見て見ぬふりで、他の先輩達も年が近い先輩は優しかったのですが他は冷たい態度でした。


12月のある日、私は初めて仕事を休みました。

頭も家の中もぐちゃぐちゃで、身支度もできないほどに体がしんどかったのです。

看護師寮暮らしだった私は、一人でいるのに耐えきれず同じ市内の実家に帰りました。

「しんどくて今日は休みました。」

口数の少ない私に、立派な看護師になることを夢見ていた両親はがっかりと肩を落としましたが、あまりにもひどい身なりと表情だったからか多くは言われませんでした。


次の日も情けないことに親に電話をしてもらい休みました。

社会人になのに甘えて恥ずかしいと思いましたが、職場に電話をすると思うと吐き気がして泣き出したり、身体症状が止まらなかったのです。


携帯を見るのが嫌で、同期からは心配のメールや電話がきていましたが、なかなか返せませんでした。

結局3日ほど休んで復帰しました。


休み明けいつものように早めに行き、謝罪の挨拶をしようと職場に入ると、先輩に無視されました。気のせいかと思いましたが、他の先輩もいつも以上に冷たかったのです。

後で聞いた話ですが、社会人にもなって親が職場に電話してくるのもどうかと思う、非常識だと噂され笑われていたようです。


私は次の日から職場に行けなくなりました。


ぎりぎりまで張りつめていた心の糸が、プツンと切れてしまったのです。

汚い寮の部屋で、1日寝たきり状態に。

そこからの記憶はあまり覚えていません。


私は重いうつ状態だったのだと思います。

本当はカウンセリングや投薬をすべきでした。

この病院にはもういられないと思った私は、結局すぐに退職しました。

看護部長に「今やめたら今後のキャリアに影響するし後悔する。部署異動か休職にしなさい。」と言われましたが、辞めることしか頭になかったのです。


辞めた後に知りましたが、この病院のICUは既卒看護師でも入職するとほぼ辞めてしまうという環境だったらしく、その後は人事異動や職場環境の見直しが入ったとのこと。私の同期もしばらくして皆辞めていきました。


ただ最後にこれだけは言えます。

途中で辞めてしまっても、最終的には1人前の看護師に慣れる。地道に基礎を積んで、諦めなければ。


私はその後転職をして、また1からやり直しました。
そして教育係を含め色々な仕事を任されたり、リーダーを経験しました。

可愛い後輩も増え、自分より年上の人に教えたり仲良くなることもできました。

そして最終的に、看護師として働きつつ自分を大切にする。

そんな選択をできる、自由を得たのです。


長くなりましたが、次はそんな現在に至るまでを書こうと思います。














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