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映画評 DUNE/デューン 砂の惑星🇺🇸 〜IMAX限定リバイバル上映〜

(C)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

第94回アカデミー賞で最多6部門受賞を成し遂げた傑作SFが、Part2公開に先立ってIMAX限定で再上映。IMAXスクリーンで見る迫力に加え、改めて見ることによって気付かされる本作の面白さにのめり込むこと間違いない。

全宇宙から命を狙われる、たった一人の青年、ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)。彼には未来を見る能力があった。宇宙帝国の皇帝からの命令で一族と共に、抗老化作用を持つ香料メラジンを採掘するべく、アラキスこと「砂の惑星/デューン」へと移住するが、ハルコンネン家と皇帝が結託した陰謀だった。父を殺され、巨大なサンドワームが襲い来るその星で、ポールも命を狙われることなる。

DUNEはまさに、IMAXスクリーンで観るべき映画の一つであると強く断言できる。見渡す限り広がる砂漠景色、ハルコネコン家による襲撃、ポールに襲いかかるサンドワームなど、迫力のある映像がこれでもかと続き、従来の映画スクリーンで観る以上にDUNEの世界観に入り込む没入体験ができるだろう。特に、サンドワームはIMAXであるからこそ巨大な姿からくる迫力とデューンで最も恐れられている生物としてのと恐ろしさに説得力が増す。ドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品には画面いっぱいに風景ショットを入れることから、風景の美しさと迫力が増すIMAXとの相性が抜群であることもDUNEを通じて証明された。

IMAX効果は迫力を増幅させるだけに留まらない。ポールが未来を視る際に現れる謎の女性チャニ(ゼンディア)は、まるで一枚の絵画のように神々しく映る。従来の上映システムから1.6倍も明るい鮮明な映像を投影できることによって、チャニが今後の物語の鍵となる人物としてのミステリアスさや選ばれし者としての確固たる佇まいを演出するのにアシストをする。身体に響く重低音を表現できるIMAXのサウンドの恩恵も預かっている。”ボイス”という特殊な発声で他者を意のままにコントロールできる技は、より体が吹き飛ばされるのではないかと思うくらいにビビるほど。DUNEほどIMAXで観ないと勿体無い映画は、そう多くはない。

(C)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

ストーリー展開としては、壮大な闘いの序章だ。が故に展開が少なく物足りないと感じてしまうのも無理はない。しかし、一本の映画にまとめようとしたがあまりダイジェスト版のようになってしまったデイヴィッド・リンチ監督版『デューン/砂の惑星 』とは異なり、DUNEの世界観をこれでもかと丁寧に描いたともいえる。

まず、それぞれの立場がハッキリとしている。本作は、アトレイデス家とハルコネコン家の対立を描いており、和平を前提に統治をする前者とは異なり後者は駆逐・討伐を前提に統治をするため、考え方が異なる両者は睨み合う。また、アトレイデス家の勢力を脅威に感じた宇宙全体を統治する皇帝が、アトレイデス家滅亡の計画を企て実行するためハルコネコン家と手を組むという、宇宙全体を用いたスケールの大きい政治映画だ。また、修道女や神学者など多彩な顔を持つ女性だけの組織ベネ・ゲリセットが「クウィサッツ・ハデラック」という人類の記憶を保持し、未来を見通す人間を誕生させようとするなど、それぞれの大義のために暗躍しているのだ。

砂の惑星アラキスでのみ採取される香料メランジについて触れないわけにはいかない。宇宙航宙をする上でナビの役割を担うためメラジンを欠かすと放浪を意味する。また、覚醒作用もあり、ベネ・ゲリセットが特殊能力を用いるためにも必要不可欠だ。アラキスを統治できたものは全宇宙を制する所以は、外交、貿易、経済、政治、宗教などあらゆる側面で優位性を保つことができるからなのだ。

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政治映画の軸がありながら、もう一つ軸がある。それは、ポール・アトレイデスの成長談だ。アトレイデス家の時期王となる血統を受け継いでいるものとして、リーダーとして国民をまとめ政治家的にも外部(フレメン)とのやり取りを行う。また、人を殺したことのないポールはアラキスでの生活を通じて、実践経験を積み軍人としても成長する。そして、「クウィサッツ・ハデラック」の候補として、能力を覚醒させていく様が描かれ、次から次へと巻き起こるピンチを脱していく姿には逞しさがあり、初々しい序盤とは打って変わり王族としての佇まいを見せる。

現予定2部作のうち一作目に当たる本作は、DUNEの世界観をゆっくり、丁寧に描いた、壮大なスケールの映画だ。次回作もIMAXスクリーンで観ることによって、よりDUNEの世界観を楽しめること間違いない。

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