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サッカー界の名将が実践する、3つのチームマネジメント

All or nothing ~マンチェスター・シティの進化~ を全話見た(全部で8時間くらい)。組織の動かし方・作り方についてサッカー好きだけでなく、ビジネスマンでも学ぶべきことが多い内容だったので、まとめておく。

世界最高峰のプロサッカーリーグがひしめき合うヨーロッパ。メッシやクリロナは言わずと知れた大スターであり、もはやサッカーをよく知らない人でも顔をイメージすることができるだろう。

サッカー選手の年俸は近年爆発的に高騰しており、フランスリーグの名門クラブであるパリ・サンジェルマンに移籍したネイマールについた金額はなんと約250億円にも上る。世界中から大きなお金が集まる中でスタープレイヤーばかりが目立っているが、このムービーでフォーカスを当てているのは、サッカーチームを組織として裏で動かしている「監督」だ。

前提の話となるため、ヨーロッパの4大リーグについて整理しておきたい。

リーガ・エスパニョーラ(スペイン)
メッシ率いるバルセロナとクリロナが1年前まで在籍していたレアル・マドリードなどが属する

プレミアリーグ(イングランド)
世界で最もフィジカル的に厳しいリーグと言われている。日本代表の香川選手が在籍していたマンチェスター・ユナイテッドや本記事でフォーカスを当てるマンチェスター・シティなどが属する

ブンデスリーガ(ドイツ)
サッカー日本代表の香川選手が在籍するドルトムントやバイエルン・ミュンヘンが属する。

セリエA(イタリア)
本田圭佑選手が在籍していたACミランや長友選手が長らく在籍していたインテル、クリロナが在籍しているユヴェントスが属する。

このムービーで焦点が当たるプレミアリーグ、マンチェスター・シティの指揮を取るのは、現役の監督では世界で最も実績を残していると言ってもいいであろう、「ジョゼップ・グアルディオラ」だ。「ペップ」の愛称で親しまれている。彼は2016年にマンチェスター・シティの監督に就任し、翌年にはリーグ最高連勝記録となる15連勝を達成した。

ちなみに、最多連勝記録と言えば、リーガ・エスパニョーラの最高連勝記録は2011年にバルセロナが達成した「16連勝」、ブンデスリーガの最高連勝記録は2014年にバイエルンが達成した「19連勝」。どれもグアルディオラ監督がチームを率いていた時代だ。また、彼は10年に及ぶ監督キャリアのうち、8回のリーグ優勝を達成している。これはとてつもない記録だ。

結論から言おう。グアルディオラ監督は選手のメンタルコントロールが非常に上手い(あくまで私個人の意見)。戦略・戦術が一流であることに変わりはない。それ以上にチームが並外れたパワーを発揮する理由は彼の選手に対するメンタル・モチベーションマネジメントにあると思う。

特筆すべき点は3つ。

1. 高い目標を掲げ続ける

試合前のロッカールームでは、チームの中心に立ち選手を鼓舞する言葉をかける。適度なプレッシャーを与えつつも、同時に自信を持たせる言葉を織り交ぜていることが印象的だ。「このチームは今季世界最高のチームだ」「必ずいい試合ができる。できない理由があるか?」

2017年は残り5試合を残してリーグ優勝した。通常なら選手のモチベーションが落ちて、残りは消化試合のようになってしまうだろう。しかし、グアルディオラ監督はリーグ史上最高記録となる「勝ち点100」を次なる目標に掲げ、チームの士気を上げた。「リーグ優勝で満足してはいけない。私たちは歴史に挑戦することができる。ここでの妥協は絶対に許されない。」

目標達成への喜びは一瞬。次の瞬間から再度目標を設定し、高みを目指す姿勢はビジネスの世界でも同じだと強く共感した。

2. 選手のプライベートを最優先させる

中盤の要、スペイン代表でもあるダビド・シルバの小さな息子は体調不良でシーズン中に入退院を繰り返していた。その様子を知った監督はシーズン中にも関わらず、ダビド・シルバに休暇を与え、故郷へと帰らせている。

グアルディオラ監督自身、勝敗を左右する決定的な要因はメンタルだと語っていた。超一流が集まるプレミアリーグにおいて選手のスキルに大きな差はつかない。選手とは何度もコミュニケーションを取り、メンタル面の確認をしていたことが印象的だ。

上記のダビド・シルバの例は、人生で最も大切な家族に問題が起きていては、サッカーに100%集中することなど不可能と判断したのだろう。

マズローの5段階欲求で安全欲求は生理的欲求の次に位置する。家族や恋人の安全が確保できていなければ、その先の自己実現欲求へ目が向かないという点でとても理にかなっている。

3. うまくいった時は、徹底的に褒める、肯定する

試合前に大きな声で鼓舞して、選手にプレッシャーをかけていることは先にも述べた。その代わり、チームが試合に勝ったり結果を残した場合は、全力で選手やスタッフを褒める。

優勝が決まった後の選手・スタッフが一同に会する場で、グアルディオラ監督は開口一番こう言った。

聞いてくれ
優勝した瞬間には一緒に祝えなかったが、
おめでとう。我々はイングランドのチャンピオンだ
裏方のみんなにも礼を言いたい
監督や選手ばかりが称えられるが、裏方なしには勝てなかった
優勝できたのは君らのおかげだ
素晴らしい仕事をしてくれて本当にありがとう
君たちはロッカールームを最高の雰囲気で満たしてくれた
我々から裏方のみんなに大きな拍手を送りたいと思う

また、シーズンの全試合が終了し、プレミアリーグ史上歴代最高の勝ち点100を達成した後のチームミーティングでは、こんな話をしている。

人はこういう
"さすがペップ"
あちこちでね
"彼の指揮はすばらしい ペップは最高だ"

違うね
違う

君たちの功績だよ
メディアの連中は監督を称える
本当は君らの功績だ
プレーする君たちの
俺じゃない

君らなんだ

ムービーを通じて監督は孤独な仕事だと思った。
結果が出なければすぐに解雇され、結果を残しても褒めてくれる人はいない。(オーナーは褒めてくれると思うが)

社長が孤独な仕事と言われるのも同じ構造だろう。
組織の上に行けば行くほど、意思決定の比重が大きくなり、助けてくれる人もいなくなる。

それでも組織をマネジメントし、結果を出すべく挑戦する姿。
だからこそ、リーダーはかっこいい。

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