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ロマンポルノ無能助監督日記

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2020年5月の記事一覧

ロマンポルノ無能助監督日記・第7回[ムッシュ田中登監督『人妻集団暴行致死事件』にサードで就く]

ロマンポルノ無能助監督日記・第7回[ムッシュ田中登監督『人妻集団暴行致死事件』にサードで就く]

日活に入って、1ヶ月で白井伸明さん、根岸吉太郎さんと二人の監督を経験したわけだが、所内では、いろいろな監督を目にするようになって、顔と呼び名を覚えていった。

ガイコツのように痩せている神代辰巳(クマ)さんは、芝生にゴロ寝しながら、ニヤニヤとご機嫌で煙草をふかしていたり・・

長身の西村昭五郎(ニシ)さんは、鼻歌(多分シャンソン)を歌いながらブラブラと歩き、すれ違う旧知のスタッフに「残業だよ」と苦

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ロマンポルノ無能助監督日記・第6回[『情事の方程式』撮影中・助監督の殺意とは?]

42年前のことを、これだけ詳細に書けるのだから、女優さんの美しき御姿も微細に覚えてるだろう、とか言われるかも知れないが、正直、ハダカを見てエッチなことを考える余裕なんて、無かったデス。

女優さんは、写真が残っているので、それと照らし合わせて映像的に記憶している。

ナマの記憶で覚えているのは、山口美也子さんのシャワーシーンで、テスト(リハーサル)が終わっても、ボーッと突っ立ってたらしいので、

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ロマンポルノ無能助監督日記・第5回[根岸組『情事の方程式』でカチンコへの恨みを募らせる]

クランクインの何日か前には、自分専用のカチンコが、支給された。
今の現場では、新人助監督が、2万円も出してカチンコを買う、というのを聞いて驚く。
この「奴隷の鎖」みたいなものに、自分の金を出すのか・・・

あ、言い過ぎた?

赤白の踏切みたいな拍子木の部分は、叩いて跳ね返る時に「カチン!」と、高く乾いた音がする。跳ね返さないと、バコン!と鈍い音になる時がある。
だが、どうしたら実際にバコン!という

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ロマンポルノ無能助監督日記・第4回[根岸組『情事の方程式』で優秀な助監督と思い込みながら初日に忘れ物をする]

僕は、「根岸組」サードに編入されて台本をもらった。

ナゼ映画のタイトル『オリオンの殺意・情事の方程式』じゃなくて、監督の名前に「組」を付けるだけなのか、ヤクザから由来でもあるのかよ、と不思議に思ったが・・・

ひとつの撮影チームには、それぞれの「部」がある。
ロマンポルノの「組」では、「演出部」が、監督、チーフ、セカンドと続き、通常は、助監督が二人しかつかない。

「根岸組」は、セカンド那須博之

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ロマンポルノ無能助監督日記・第3回[新人監督・根岸吉太郎組で那須博之さんと出会う]

1978年4月1日から1週間、撮影所の中にある「日活芸術学院」の黒板のある教室で、「新入社員研修」が行なわれた。

僕ら助監督2名プラス10名ほどの営業新入社員に向かって、社長をはじめ、制作部長、営業部長、興行部長、ビデオ部長、ダビング課長・・・計30人くらいの〇〇長たちから、それぞれ1時間づつ、訓示を頂いた。当然、面白くは無い。
いちおう、ノートとるフリしました。

〇〇長の皆さんが言っていたの

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ロマンポルノ無能助監督日記・第2回[助監督試験に合格して自慢しまくった]

調布の日活撮影所。

広い、明るい、助監督試験面接会場。

片手には大きな映写機を持ち、もう一方の手には、直径7.5cmの8ミリフィルムを持って、面接官の前に突っ立っている・・・

3分間の『変身』はもちろん、カフカの「ある朝目が覚めたら毒虫になっていた」のパロディーだ。

出演者は二人。

一人は高橋朋子・・・三鷹高校3年の時、受験勉強しながら作った30分の失恋映画『水色の日射し』のヒロインで、

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