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激太り、歯並び異変、膀胱炎、そして鈴木京香。人生後半は病と不調と寄り添い生きる。

女優の鈴木京香さんが、体調を戻されたとFRIDAY DIGITALの記事で読み、よかった、ほんとよかった・・・・・としみじみした昨夜。これを書いている私と彼女は同学年、なので体調不良で主演ドラマを降板したニュースを読んだときは、他人事とは思えませんでした。いや、鈴木京香と自分を同じ世界線で語るなんて言語道断なのは重々承知済み。でも50年以上生きてると、いろいろあるから。勝手に芽生えるのです、仲間意識が。


鈴木京香も夜に眠れず、スマホを見つづけて逆にギンギンになっちゃうのかな、とか、どうせ寝れないのならとネトフリを見始めて、「あの若手女優、私の組みたかった脚本家に呼ばれてる!」と嫉妬で身もだえしてもっと覚醒しちゃうのかな、とか、隣で寝ている長谷川博己をたたき起こして「男はいいよな!体も心もラクにできてるよな!仕事さえしてれば褒められるし家事すればボーナスポイントもらえるしな!」と罵倒しはじめちゃうのかな、とか・・・・(いやしないだろう絶対)。

熟睡ができなくなって、もう3年くらい経ちます。ようやく、医者にかかり、クスリを服用するようになってましにはなりましたが、病院に行くまで2年かかりました。
今回は、編集者歴30年以上を振り返り、業界病ともいえる自分のかかった病(やまい)や不調について書こうと思います。 

俗に編集者は病気持ちが多い、といわれます。不規則極まりない食生活、暴飲暴食、恒常的な睡眠不足、昼夜逆転、、、、そんな生活を続けていれば、体や心が悲鳴を上げても不思議ではありません。しかもその悲鳴を「自分、頑張ってる!」勲章のように捉えるのが昭和平成の編集者あるあるでした。

私も例に漏れず、まず入社して半年後には12キロ太りました。激太り、というやつです。原因は、どう考えても連日の深夜に及ぶ食事。しかも編集部の机で、エンピツ(まだ原稿は手書きの時代でした)を握りながら、すぐにお腹にたまる炭水化物系をガツガツと。たいてい編集部には近所の中華料理店から届いた大量の出前食があったので(それを頼むのも私の仕事だった)、わざわざ外出せずともチャーハンや酢豚などが目の前にあったのです。

今日はいつもより早く帰宅できそう、という日は、たいてい男性上司の「◯◯先生と飲み行くぞ!」のかけ声で新宿へ。そうなるとほぼ朝まで飲むコース。といっても私は完全な下戸なので、アルコールは飲めません。しかし、断ったところで「なに寝言いってんの?」で終了なのが平成初期のヘルジャパン。できるだけお酒を口にするタイミングを減らすため、「焼きそばくださーい」「乾き物追加してくださーい」「キスチョコも食べたいでーす」と次々と固形物をオーダーしては口に詰め込み(しかもどれもこれも学生時代に食べた物より各段に美味しかった・・・・)、家に帰れば歯も磨かずにバタンキュー(←古い)。そりゃあ太るわ! 当然だわ!!

激太りに加えて大きなダメージを食らったのは、「歯」でした。あるときふと鏡を見て「おや?」と抱いた違和感。なんか私、顔が、へん・・・・え、歯並びが変わってる? そしてなんだか左の頬が、こぶとり爺さん並みにふくらんでいる・・・・?? 理由は、「歯ぎしり」と「親知らず」でした。歯医者さん曰く、睡眠中にギリギリやっていたせいで、歯の形が変わり、つれて歯並びも変わり、しかも親知らず(生えていたのは気づいていたがほったらかしていた)が歯周病になっていて、周辺の歯ぐきが異様に腫れている、と! たしかに、ときどき左の奥歯あたりがズキズキと痛んでいや~な予感に襲われる夜があったっけ・・・・・でも子ども時代のトラウマで歯医者さんに行くのが恐ろしく、「いやいや気のせい」「あの治療をされるくらいならこの痛みの方がマシ」とわけのわからない理屈をこねて、放置していたのでした。

案の定、医者からは「正しい食生活」「食後の歯磨き」「変だなと思ったらすぐ医者に行く」「治療を怖がらない」の大切さをキレ気味に語られ(叱られ)てしまいます。しかもその先生、やたら声がでかく、待合室にも朗々と響き渡っていたようで(今みたいに個人情報云々という時代ではなかったのでいろいろ筒抜け)、なんかもういたたまれず「すぐ抜きます!」「ちゃんと通います!」「定期検診も受けます!」と叫んでその場を立ち去ったのでした。 

・・・・のはずなのに、けっきょく予約した時間にまにあわずにキャンセル、が何度か続き、気まずくなって通うに至らず・・・・。そんな不義理を、何人の歯医者さんにしたことか・・・・・(今は「勤務先か自宅の徒歩数分内がいちばん通いやすい(逃げ場がない)」とようやく気づき、神保町の某クリニックにお世話になっています)。

腔内トラブルの次は、膀胱炎。これは「あ、私も!」と手を挙げる女性が多いのではないしょうか。

ある時期、「トイレに行く暇がない」ほど忙しい時期がありました。いや、ちょっと違うな。行く暇がないのではなくて、行くタイミングを上手に編み出すスキルが自分に足りなかった、というべきでしょうか。

席から数歩歩けばトイレがあるのに、そこに行く時間を捻出するのも惜しい。この電話が終わったら、あの会議が終わったら、撮影依頼書を書き上げたら、スタジオの予約が済んだら・・・・・とちっちゃな(でも重要な)案件をクリアしていくうちにトイレに行く回数が極端に減り、ある日をさかいに排泄コントロールができなくなり、あわわ・・・・!の事態に。

激太りも、歯のトラブルも、膀胱炎も、きちんと健康管理を行っていれば見舞われなかった病です。そう、自分の意識の低さと若さへの甘えが引き起こした、病というより罰みたいなもの。

ところが、40歳を過ぎると、自分を責めてばかりはいられない、むしろ誰を責めればいいのかわからない、責める先がないのが逆に苦しい、、、ここでは重すぎて書けない病にも悩まされました。そして50歳を過ぎたいまは、絶賛更年期症状継続中。

自然と、まわりの同業者とも、病の話をするようになりました。

若い頃は、できなかった。なんだか自分の弱みを見せるようで、抵抗があったのです。ほんとうは良い病院とかクスリの情報交換もすればよかったのだけど、せいぜい「小川町に新しくできたマッサージ店、どお?」どまりで。

話してみれば、みな、それぞれに「歴」を抱えています。よくぞそんな状態で仕事してきたね、すごいね、あなたもあなたの家族も・・・・! と肩をたたきたくなる同業者もいます。

人生後半戦、これまで以上に「病」と寄り添って生きていくのは必定です。いままで容易にできたことも、やがてできなくなるでしょう。30代、40代のときには考えられなかった物忘れをするし、言葉に詰まる機会も増えました。できればヒト様に迷惑はかけたくないので、タスク管理は最重要事項です。だから私のスケジュール帳はメモだらけ。スマホのメモ帳にも「やることリスト」を書き込んで終わったら消して、をちょこちょこくり返すから、バッテリーの持ちがすさまじく悪い。余談ですが、スマホの能力が新品の状態からゆっくり確実に落ちていく感覚は、ヒトが加齢で衰えていくのに似ている気がします。

昔、会議の席で、レオナルド・ディカプリオの名前が出てこなくてうんうん唸るおじさんを見て「マジか」と思いましたが、マジなんですよこれ、出てこないんだよ、若者よ!

ポンコツになった自分を受け入れつつ、まわりにポンコツ菌をまき散らさないように策を講じ、我が身と同じくポンコツになった人を「迷惑」とか「老害」とか邪険にせずおおらかな気持ちで受け入れるーーそんな人生後半戦を生きたいと思います。京香とともに(←余計)。

文/マルチーズ竹下(出版者勤務)

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