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これ、出版業界のタブーかも!? 世の中に「パクリ本」が多いのはなぜ?

 書店に行くと、皆さんも気づきませんか? 「この本、あの本と似てるな……」と。

そうです。今回のテーマは、いわゆる「パクリ本」です。どの業界でも“パクり”(と思われる)商品はあると思いますが、出版はなかでも特に多く見られる傾向にあるように思います。

しかも、出版界は「パクリに寛容」な部分もあると、個人的には感じます。そこには明確な理由もあるので、今回は正直に(笑)、その辺りをわかりやすく紐解いてみようかと。

「着想パクリ」は日常茶飯事

 ベストセラーといわれる本。たとえば、かの有名な児童書『ざんねんな●●』などが並ぶ書店の棚を見ると、隣に『せつない●●』とか『泣ける●●』といった類似作が数多く並んでいると思います。

 微妙に体裁やニュアンスを変えてはいるものの、編集の視点から見れば、完全に「着想パクリ」といえます(スミマセン笑)。そして、この程度のパクリは出版界では常識というか、普通のことと認識されています。

 逆にいえば、売れている本は、ほぼ100%に近い確率で、どこかの出版社からパクリ本がリリースされる運命にありますし、それを得意とする出版社もあるほどです(笑)。個人的には、自分が制作した本のパクリ本が出てくると、「あ〜売れたのだな」と実感するバロメータになっていたりもします(笑)。

 ではなぜ、出版界にはそのような「パクリ本文化」が根づいているのでしょう?

 答えは簡単です。「売れる確率が高い」から。一冊の本の企画が成立するまでの過程を考えると、それがよくわかります。

 一冊の本も商品です。出版社はその商品を開発するにあたり、少なくはない金額を投資することになります。売れなければ大損害。企画にGOを出すには、それなりに「売れること」を見込める裏づけが必要になるわけです。

類書の売上が裏づけになる!

 その裏づけのひとつの要素となるのが「類書の売上データ」です。出版社は主要書店や本の問屋である「取次」の売上データを見ることができ、類書の売れ行きを分析することで、新規企画の見込みを予測します。ほぼすべての企画において、類書の分析はなされていると思ってください。

 そこで、ある出版社の「あの本がすごく売れている!」となれば、これに近い体裁の本を制作すれば、確実にニーズはあるであろうと予測されるんです。

 映画やドラマの業界でも、現在はオリジナル脚本の作品が滅法少ないというのも同じような理由。原作の漫画や小説が売れていれば、ある程度のファンがついているし認知度も高いため、少なからずの売上が見込めるという裏づけになりますよね?

 たとえば30万部売れている本は、書店でもとても目立つよい場所に置かれます。それに似た本を制作すれば、類似作として、その隣に置いてもらえます。テーマ性のニーズもそうですが、書店での置かれる場所も本の売上に大きく関わるので、それだけで「売れる確率」が高まるというもの。オリジナル作の1割としても3万部ですから、それだけでベストセラーが見込めるというわけです。 

 ただでさえ、出版不況といわれるこのご時世ですから、パクリ本をつくりたくなってしまう出版社の気持ち、わかりますよね?

 私も若い頃、よく出版社の担当さんから「あの本は200種類載せてるから、うちは210種類載せればいいだけの話」みたいなことをオーダーされたものです(今はそれで通用するほど甘くないですが……)。

たかが「パクリ本」、されど……

 私個人のことはというと、その類の本の制作は恐縮なのですが、お断りしています。だって「つくっていて面白くない」ですから。

この年齢になると、新しい挑戦をしないと、つくり甲斐がないんです(これまでにたくさんの本をつくってきたのでお許しください)。誰もやったことがないでしょうっていう要素を入れて、それが読者の皆さんに受け入れられ、喜んでいただけることがなによりうれしい!

でも、前例のない企画は、裏づけが取りにくいので、非常に成立しにくいということがあります。そうなると、あとは編集者の熱意のみ! 見込みを重視する堅実な出版社内の反対勢力を納得させるという大仕事を乗り越え、どれだけその企画を世に出したいのかという気迫の勝負になります(笑)。
 
ちなみに、私が制作した本もパクられることがあるんですが、それらの本を見たときに思うことがあります。

「せめて後出しなんだから、オリジナルを超えてほしい!」ということ。自分が気づかなかった視点を盛ってこられたら、すごく勉強になるんです。「そんな見方があるのか〜」と。逆にオリジナルの劣化版みたいな感じの仕上がりだと、とても残念な気持ちになります。

 出版界全体の未来を考えれば、我々編集者が日々スキルを高め、新たな着想で表現することは、なにより大事なことだと思います。

 一見なにげないもののように見えてしまう画期的かつ斬新なアイデアというのは、生みの苦労がものすごく大変なものだと思うんです。

そのアイデアを安易に模倣するのではなく、たとえ「パクリ本」であっても、編集者一人ひとりがそれを超えてやろうとする気概を持つことが、業界全体の活性化につながるのではないでしょうか? ……と、思う今日この頃(笑)。

(文/編プロのケーハク)

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