見出し画像

編集者のハラスメント問題

こんにちは、フリー編集の元塚Bです。
12月は「職場のハラスメント撲滅月間」(厚労省)ということで、最近感じたハラスメントに関する話をしたいと思います。

若いライターのWさんからこんな相談をされました。
なんでも、X出版社の編集者Y氏が校了の間際になって、Wさんにとってかなり不利な条件を出してきた。
出版社の常識として、こんなことはありうるのだろうか……と。
私はX社の人間ではないので、もちろんX社や編集Y氏の事情はわかりません。
ですが、「あくまでも私の経験と推測ですが」と前置きしたうえで、「残念ながら、ありうることです」とお答えしました。
出版社も予算、スケジュール、人員など、かなり限られた条件下で本を製作せざるを得ません。
私自身も、ライターさんに厳しい条件を呑んでもらわなくては、企画が成立しないという状況を何度も経験してきました。

それをライターのWさんにお話しすると、「なるほど……」と力なくうなずきつつ、実際にX社のY氏が送ってきたというメールを見せてくれました。
私は一読して、Y氏の物言いに引っかかりました。
「それにしても、ずいぶんと一方的で、高圧的なニュアンスですね」
というと、Wさんは「そうなんです! そこなんです!」と強く頷きます。
どうやら、執筆中から終始、上から目線でものを言われ、まったくWさんの言い分は聞いてくれず、ずっと悔しい思いをしてきたとのこと。
そのあげく、校了間際に厳しい条件を突き付けられたものだから、いやがらせをされているのではないか、と感じたようです。
さすがに条件面については、会社員である一編集者が勝手に決められることではないはず。
なので、Y氏がWさんへのいやがらせで予算を削ったとは考えにくい。
しかし、Wさんは、
「ずっとY氏から高圧的な言われ方をし続けていたので、何がなんだかわからなくなってしまいました……」
と吐露。
これではパワハラではないか……。
と、私はとても残念な気持ちになりました。

出版市場は、ますます厳しくなってきています。
そんななかで「痛み」を分け合う状況は、個人レベルではどうにもできないことが多々あると思います。
だからと言って、ベテランの編集者が新人ライターに高圧的にものを言って一方的に条件を押し付ける、というのは非常に残念なことです。
シュッパン前夜においても、youtubenoteで、出版業界におけるハラスメント問題を取り上げてきました。
相手が若いから、経験が少ないから、女性だから、あるいは男性だから……と、高圧的な物言いをする編集者がまだまだいることは事実です。
編集者と著者・ライターの関係は密室的で、ハラスメントが発生しやすい状況かと思います。
また、密室的であるがゆえ、ハラスメントであるか否かがあいまいになりがちです。
それを、いちいち「ハラスメントだ」と指摘することを、息苦しく感じる人も多いでしょう。
しかし、それはこれまで無意識・無自覚に「ハラスメントをしてきた側」の言い分。
「ハラスメントされる側」は、誰にも言えず、ずっと苦しんできた
のだと思います。
私自身も常に「加害者」にも「被害者」にもなりうるのだと、気を引き締めるきっかけとなりました。
(関係者に配慮し、一部脚色しています)

(イラスト・文◎元塚B)

本づくりの舞台裏、コチラでも発信しています!​
Twitterシュッパン前夜

Youtubeシュッパン前夜ch


この記事が参加している募集

編集の仕事

ライターの仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?