なぜ、編集者に好奇心が求められるのか?
「編集者が身につけておきたい15のスキル」の記事にて、実用書の編集者に求められるスキルとして、企画力、コミュニケーション力、好奇心力などを、それぞれ大まかにご紹介しました。
その中でも「企画力」と「コミュニケーション力」の2つが最重要スキルであるお伝えしていました。
今回ご紹介する「好奇心力」は、重要なスキルである「企画力」と大きな関係があります。
では、詳しく見ていきましょう。
企画力に必要な好奇心
好奇心とは、珍しいことや未知の事柄に対して興味・関心を持つ心のことです。
好奇心が旺盛な人は、これまでと同じような事柄ではなく、新しいことが好きです。
つねに新しい情報、珍しい情報を入手するためにアンテナを張っています。
当然、流行に敏感です。
編集者は、新しい本を作り続けなければなりません。そのためには企画力が重要なのですが、好奇心力はそれを大いに助けます。
企画力について紹介した記事にて、企画力のひとつに「新しいテーマを見つけ出す力」があるとお伝えしましたが、好奇心力はその源になるからです。
流行に敏感な人は、多くの人がまだ知らない、流行りはじめの頃に新しい事柄に気づきます。
これが、新しいテーマを見つけ出すことのスタートですから、好奇心力がある人は、新企画を思いつくことが容易にできるのです。
だからこそ、好奇心力は、編集者に身につけておきたいスキルなのです。
また、実用書の場合、時代の1歩先の段階で刊行されたものは、興味を持っている人が少ないためあまり売れず、時代の半歩先のものがベストタイミングのため売れると言われています。
そして、実用書の制作には、スピードが求められるもので企画立案から3カ月程度で刊行され、時間をかけるものは1年程度かかります。
流行に敏感な人が気づいたときに企画を提案して本作りを進めていくことで、刊行時期が時代の1歩先ではなく、半歩先のタイミングになります。
そうなることで、多くの読者から支持される、売れる本となる可能性が高まるのです。
アイデア力が高いと、編集以外でも重宝される
旺盛な好奇心を持っている人は、次々とアイデアが浮かびます。
一般的な人には思いつかないような、思いもよらないアイデアを出すことが得意です。
自由な発想の持ち主であり、常識を打ち破ることができます。
企画は、何かと何かを掛け合わせることで生まれるケースが多々あります。
つねにアンテナを張っている好奇心旺盛な人は、インプットされる情報が多いため、AとB、AとC、BとCなどだけでなく、BとG、CとKのような組み合わせも思いつきます。
さらに、AとEとK、BとCとMのようなアイデアまで浮かびますから、思いもよらない発想となるのです。
つねに新しい企画を探し続けている編集者にとって、このような常識にとらわれない発想力を持つことは武器になります。
また、常識にとらわれないアイデアを考えられる人は、編集者としてだけでなく、会社全体としても重宝されます。
会社は、つねに変化を求めているからです。
編集者は地味な作業の繰り返しである、本作りをやり抜く粘り強さも兼ね備えていますから、好奇心力の高い編集者は、会社全体から見ても、とても貴重な存在になること間違いありません。
行動力を求められる時代
変化のスピードが速い現在では、行動力も求められます。
じっくり考えてから動いていたのでは、時代に取り残されてしまいますから、考えながら行動するような、行動力のある人が必要とされています。
好奇心力がある人は、珍しいこと、新しいことへの探究心が強いため、すぐに動きます。
行動力も兼ね備えてるのです。
たとえば、著者や監修者へのオファーに行動力が必要となります。
このような方々にオファーするのは、これまでの著書を読むことをはじめ、著者・監修者のネット記事を検索して読む・見るといった事前準備が必要ですから、多くの時間がかかります。
日々の仕事に忙しい編集者は、その時間を取ることができず、なかなか事前準備が進まずに、オファーするタイミングが遅くなってしまうケースがあります。
一方で、どれだけ詳しく調べ、魅力的であると考えられる提案をしたとしても、人気の著者・監修者には、多くの出版社からオファーが届いていますので、断られるケースも少なくありません。
断られた場合、第2候補の方にオファーするケースと、その企画自体をあきらめるケースがあります。
前者の場合は、新たな候補者の著作を読んだり、詳しく調べたりすることになります。
当然、これも時間を要する仕事です。
行動力のある人ならば、それをすぐにスタートさせることができますが、そうでないと、なかなか進みません。
後者の場合は、「いい企画だったのに実現できない」ということになります。
そのときは、別の新しい企画を見つけることになりますが、行動力がないとすぐに動き出せません。
好奇心力の高い人は、これらのようなことをすぐに始められる行動力も兼ね備えていますから、編集者に身につけておきたいスキルなのです。
今回は、「編集者が身につけておきたい15のスキル」のうち、「好奇心力」について、ご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
じつは、私は好奇心力が弱いほうだと自覚しています。
新しいことに挑戦するより、興味のあることを掘り下げることのほうが性格に合っています。
それではよくないと思っているため、積極的に新しいことに触れるようにしていますが、気を抜くと挑戦することを忘れているのが事実です。
一方で、知的好奇心に関しては、強いほうかもしれないと考えています。
新しい事柄について、多くの本を読んでいるからです。
ただし、ビジネス書が中心ですから、自分の興味・関心事からはみ出してはいませんので、好奇心旺盛な人から見ると、好奇心力は低いと評価されると思います。
この記事を書いたことにより、ふだんは読まないようなジャンルの書籍を読む機会を増やそうと思いました。
文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。
本づくりの舞台裏、コチラでも発信しています!
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