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フリーランスの死活問題!? 消費税のインボイス制度

消費税のインボイス制度をご存知でしょうか?

じつは、これ、出版業界にとっても大きな問題。
フリーランスに対して、出版社が発注しなくなる可能性があるからです。

消費税の納税のしくみ

消費税を納める必要がある事業者(会社や個人事業主)を「課税事業者」といいます。
一方、消費税の納めなくていい会社や個人事業主、つまり納税を免除されている事業者を「免税事業者」といいます。

免税事業者は、年間の売上が1,000万円以下の個人事業主や会社です。

出版業界に関わっているフリーランス(個人事業主)、たとえば、イラストレーターやカメラマン、デザイナー、ライター、フリー編集者などには、売上1,000万円以下の方が少なくありません。
売上500万円、経費100万円で、年収が400万円のような方です。

このような方は免税事業者という扱いになるため、消費税を納める必要はありません。

そもそも事業者(会社や個人事業主)にとって消費税は、「預かっているものを納める」制度。受け取った(預かった)消費税額から、仕入れを含んだ経費等で支払った分の差額を納めるものです。

たとえば、売上500万円なら消費税10%の50万円を上乗せして受け取り、経費100万円なら消費税10万円を支払っていることになります。
その差額の40万円の消費税を納めるということです。


出版業界のフリーランスの消費税

出版業界のフリーランスは、売上1,000万円以下の免税事業者が多いため、たとえばギャランティ50万円のときに消費税を上乗せせずに50万円だけを支払っている出版社や編集プロダクションもあります。

もちろん、消費税の5万円を上乗せして、55万円を支払っているところもあります。

消費税が上乗せされている場合、報酬を受け取ったフリーランスが免税事業者なら5万円、得をすることになります。

もちろん、売上50万円に対する経費に10万円がかかっていれば、その10%である1万円を消費税として上乗せして支払っているでしょうから、得するのは4万円です。

反対に、消費税を上乗せされていないフリーランスは、10万円の経費に上乗せされた1万円の消費税は損をしているということです。

これを損にしないためには、税務署に課税事業者に変更する手続きを行い、それをクライアントである出版社に伝えて5万円の消費税を上乗せしてもらいます。
そして、経費で支払った消費税の1万円を差し引いた4万円を、預かっている消費税として納税することになります。


インボイス制度とは

インボイス制度は、正しく消費税を納めるしくみで、2023年10月より正式にスタートします。

私は、上記の例で4万円の得をしているような人に対して、その分をしっかりと徴収し、税収をアップさせるしくみだと思っています。

インボイス制度は、課税事業者から発行された正式な請求書や領収書のみ、正しい証憑(経理の証拠)として認める、つまり受け取った(預かった)消費税から差し引くことができるというものです。

要するに、免税事業者であるフリーランスが発行した請求書等は認めないのです。

出版社も本の売上に、消費税を上乗せして受け取っています。
この受け取った(預かった)消費税の金額から、フリーランスへの報酬への上乗せした消費税や、経費の支払時に上乗せされて支払った分の消費税額を差し引いて、納税しています。

しかし、インボイス制度では、免税事業者のフリーランスに支払った消費税は、差し引くことができません。

それでは、出版社が納める税金が増えてしまうことになります。


出版社は、フリーランスへどう対応するか?

このようなことになっては困るので、まず出版社は免税事業者のフリーランスへは、消費税を支払わなくなるでしょう。

これまで消費税を上乗せされていないフリーランスにとっては、何も変わりませんから大きな問題に感じないかもしれません。

でも、これで問題が解決するかと思えば、そう単純ではありません。

ここがフリーランスにとっての、もう一つの大きな問題です。

それは、出版社の経理社員の負担

フリーランスには、免税事業者が多いですが、そうではない課税事業者のフリーランスもいます。
また、出版社は印刷所や製本所にも支払いがあり、これらの会社は課税事業者です。

要するに、支払先に免税事業者が交じっていると、そうでない支払先と区分しなければならないのです。
本1冊でさえ、著者、デザイナー、カメラマン、イラストレーターなど複数の方への支払いがあります。雑誌でしたら、1冊に数十人の方が関わります。

このような支払先を、一つひとつ区分していく作業は、容易ではありません。
大変なのです。
出版社にとっては人件費がかかるということです。

それを回避するために、免税事業者のフリーランスへの発注を控える、という可能性が生じてしまう。これが、もう一つの大きな問題の正体です。


課税事業者になるには

このような、インボイス制度を理由にした発注の手控えに巻き込まれないためには、フリーランスが課税事業者になることです。

ちなみに、インボイス制度では、課税事業者のことを「適格請求書発行事業者」といいます。

この適格請求書発行事業者になるためには、

 ①税務署に申請し、登録番号をもらう
 ②インボイス制度に沿った、正しい請求書等を作成・発行する

が必要です。

ちなみに、①の申請はすでに始まっていて、2023年3月末が申請期限です。


フリーランスの方は、経理が苦手な方が多いと思います。

確定申告の直前に、なんとか領収書を整理して帳簿をつけて確定申告する、というような方です。

こういう方にとって、上記の①②は、容易ではありません。

しかし、個人的には免れないと考えています。

確定申告が苦手でも、回避できないことと同じです。

でも、現実的に、すべてのフリーランスが①②を行うのは不可能です。

そのため、日本出版者協議会が、インボイス制度の中止を求める声明を発表しました。
https://www.shuppankyo.or.jp/post/seimei20220203


もともと政府が副業を推進しています。
副業の多くは、フリーランスのような個人事業主です。

そして、そのような方のほとんどは、インボイス制度のような経理の知識がありません。

さて、国はどう動くでしょうか?


✳︎上記は、私の知っている知識で書きました。
 もし、間違っていたるところありましたら申し訳ありません!
 間違いに気づかれた方、ご指摘いただければ嬉しいです。



文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。


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