Vol.28 疲労回復の観点から観た静的ストレッチング

最近とても暑く、読んでくださっている方の中には
"疲労感が抜けない"
"連戦がきつい"
という方も多いのではないでしょうか。

今回は疲労とストレッチに関しての論文の紹介です。

今回のストレッチのタイミングは
激運動直後のストレッチです。
そして、その後に再度激運動を行う実験です。
インターバルやセット間レスト、ハーフタイムに応用できそうな研究かもしれません。

それでは早速観ていこうと思います。

○参考論文

ストレッチングの筋疲労回復に関する研究

○実験方法

被験者は医療系専門学生であった。
w-upを5分間行い、その後30秒間全力自転車エルゴメーターを2セット行った。

セット間には10分のレストを取り、
レスト中2分〜8分の6分間で
・安静臥位
・ストレッチング
・軽運動
の3種類の疲労回復処置を行った。

・安静臥位
6分間横になり休ませた

・ストレッチング
大腿直筋とハムストリングスに対して各30秒間、交互に6セット行った。

・軽運動
w-upと同じ強度で自転車エルゴメーターを6分間漕いだ

○測定項目

・筋柔軟性
・血中乳酸値
・自転車エルゴメーターの値
・アンケート

を取り上げた

・筋柔軟性

(w-up後と実験終了後の比較)

この二つの方法で大腿四頭筋とハムストリングスの柔軟性を測りました。

・血中乳酸濃度
(1セット目終了後1分、4分、8分、
2セット目終了後1分、4分、8分、15分に測定)

・自転車エルゴメーター値
ピーク回転数・平均パワー・対ピーク比を測定
パワーマックスにより測定。
1セット目と2セット目の差を比較。

・アンケート
「筋疲労回復処置の実施による筋疲労回復程度」
「筋疲労回復処置の実施による2セット目への意欲」
の2項目で4段階評価

○結果

・筋柔軟性

大腿直筋に関してはストレッチングが1番低下した
→ストレッチにより筋肉が硬くなった

ハムストリングスは安静座位が最も低下した。

どちらも軽運動(軽い自転車エルゴメーター)が筋肉の柔軟性を1番落とさなかった。

・血中乳酸値

グラフを見てもあまり優位な差はないように思われる。
安静座位が高くなっているようにも見えるがほとんど変わらない。

・自転車エルゴメーターの値
最も回復率が良かった処置は軽運動
最も回復率が悪かった処置はストレッチングであった。

・アンケート
1番前向きな回答が返ってきたのが軽運動
1番後ろ向きな回答が返ってきたのが安静座位

だった。
あまりストレッチングにより気分的にも回復して次の運動に行こうという意欲はもたらされなかったようです。

○考察

今回の実験からすれば運動が続けてある場合
(各スポーツのハーフタイムやクーリングブレイク、セット間レストなど)
では1番次のセットのパフォーマンスに好影響を与えるのは軽運動である事がわかった。

また、ストレッチングはこのような状況下では、あまり良い効果が得られない事が示唆された。

○本論文の考察からの私見

本研究では激運動のセット間にストレッチを入れて次の効果をみた研究であった

もしかしたらサッカーのハーフタイムで15分の中で6分間ストレッチに充てる人もいるかもしれない。

そのような人は
"これはやめた方が良いな"
と思った人も少なくないと思う。

しかし考えて欲しいところは
・被験者が4人だという点
・30秒の無酸素運動が実験項目だという点

ここに注目してみると、母数が少ない事と、30秒間の無酸素運動を10分のインターバルを置いて行う競技はなかなかないという事。
そして、疲労回復を目的としたストレッチってセット間にやるものなのか？翌日の効果や疲労の蓄積に対しての効果じゃないのか？みたいなことを思う人も多いと思います。

この実験に対して否定的な意見を持つわけではないですが、このような論文が出ると理解のない人は

・クールダウンにストレッチが意味がない！
・ストレッチはよくない事だという研究が発表された！ストレッチは運動後にやめよう！

という意見を持つ人もいるのではないかなと思います。

正直生理学の実験なんてあくまでその条件下の結果です。

この論文でも強調されていますが
ストレッチの効果を否定するものではない
と述べています。

何でもかんでも、

研究結果がそう言っているだろ！
科学的に証明された！

というようになってはいけないですよねって話です。

やはり自分で情報を見て取捨選択する事が大切です。

今回は論文の内容よりもこっちを伝えたかったかもしれません。
皆さんも様々な情報が錯綜するこの世の中で、自分に合う知識というものをたくさん探して選んでみてくださいね。
その手助けになる事ができれば嬉しいです。

#運動生理学 #ストレッチ #大学生 #ブログ