なぜ多くの人が「ジェフ・ベゾスに『モナ・リザ』を買って、食べて」欲しいのか【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.82】
米大手ECサイト、アマゾン・ドットコムのCEOで、世界長者番付の1位として知られるジェフ・ベゾスに、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた世界的絵画『モナ・リザ』を買って、食べて欲しいという嘆願書に署名が集まっている。
オンライン署名サイト「チェンジ・ドット・オーグ」のキャンペーンには、これまでに1万人以上が署名しており、立ち上げたミズーリ州在住のケイン・パウエルは「これまでモナ・リザを食べた人はいないし、今こそ、ジェフ・ベゾスが立ち上がってこれを実現する必要があると感じている」と書いている。
同サイトでは「これは、今の社会が必要としていることだ。ジェフ、あなたが社会のために犠牲となるべきだ」と冗談めかしたコメントの投稿も見られる。
「ニューヨーク・タイムズ」もこのジョークを真剣に取り上げており、「モナ・リザがダ・ヴィンチに描かれた1500年代初頭以来、人々はモナ・リザを盗んだり、コピーしたり、ティーカップを投げつけたりしてきたが、誰もそれを食べたことはない」と書いている。
このキャンペーンが立ち上げられたのは、実は1年以上前だ。この1週間ほどで急に盛り上がったのだが、立ち上げたパウエルも存在を忘れていたそうだ。
フォーブスの長者番付ではベゾスの純資産は1770億ドル(19兆4400億円)と推定されており、仮にモナ・リザが売りに出されたら買うことはできるかもしれない(売りに出ることはないだろうが)。同紙は「1962年にモナ・リザは絵画の保険査定で当時最高額の1億ドルと査定された。これは現在の価格に換算すると8億5000万ドル以上になる」と書く。
美術法の専門家であるニューヨーク大学のエミー・アドラー教授は「消化不良を起こすかもしれませんが、米国の法律では、所有していればそれを食べることを妨げるものはない」とコメントしている。
また、もし食べたとしても、「芸術を創造する手段としての芸術の破壊、という伝統の枠内に収まる」と述べている。その例として、ロバート・ラウシェンバーグが作品を制作するために、尊敬していた芸術家ウィレム・デ・クーニングのドローイングを消しゴムで消したことを挙げている。
この嘆願書は「ジェフ・ベゾスは何でも買って自分のものにすることができるという感情の現れ」だと教授は指摘する。同紙はこう締めくくっている。
「ユーモアを愛したマルセル・デュシャンも生きていれば署名していたかもしれない。彼はかつてこう言っている。『レンブラントをアイロン台に使え』と。」
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