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フリーランスとお金

今からさかのぼること13、4年ほど前のこと。

会社勤めを経てフリーランスのイラストレーターになったぼくは、その時はじめて「お金」というものに”ちゃんと”向き合うようになりました。

それまでは給与という形で毎月決められた金額をなんの疑問も抱かず受け取るだけだった日々。それが一転、時に自分の報酬額を自分で決め、掴み取っていかねばならない修羅の世界へ乗り込んだのです。

否が応でもお金のことは避けて通れない状況となりました。


お金のことがわからず、話せず、失敗した過去

開業当時はとにもかくにも働いて稼がねば…とは思いつつ、自分の仕事(ぼくの場合はイラストレーション)に対してどのくらいお金をいただけるものなのか。これがさっぱりわからず見積もりができない。

ざっくりとした相場や料金表の一例みたいなものは調べればいくつか見つけられるのですが、顧客ごと案件ごとに内容が細かく違うのでそれが当てはまらないことも多く悩みます。

発注側である顧客も顧客でわかっていないことも多く、お互いに手探りになることも。お金の話は野暮なことだと思われているのか、あまりしたがらない人もいます。

わからないまま突き進んで見積もりで失敗し、あとで大きく後悔したこともありました。同業者の皆さんはどうしているのかなぁと尋ねてみると、同じ悩みを抱えている人がかなり多いことに気がつきます。

#フリーランスしくじり話 その1


このままではよくない、受注側も発注側ももっとお金のことについて意識し声を上げていかないと状況はよくならない!と思い、noteやtwitter上で「 #もっとお金の話をしよう 」というハッシュタグをつくり、多くの方の声を集めようという運動をはじめました。

#もっとお金の話をしよう


報酬額は自分への評価を数値化したもの

フリーランスにとっての報酬額というのは、評価を数値化したもの。自分がどれだけクライアントや社会に貢献できたかを、わかりやすく知るひとつの指標。だと思っています。

自分の仕事を高く買ってもらうことは大変ありがたいことです。売上の数字が良ければ、それだけ役に立つことができたのだなと実感できます。

こちらがどれだけ情熱を注いで、時間をかけて作り上げたものであっても、それが取引先の役に立たなければ価値はない。極端かもしれませんがそういうものかなと。

金額交渉の場ではそう考えて話をしています。評価してもらうべきは労働力ではなく成果。この仕事における自分の貢献度は高いと思えば強気に出ることもありますし、貢献度に応じて自分から報酬を下げてくださいと願い出ることもあります。(ごくたまに)

以前、納品後にご厚意で報酬を大幅アップ(20万円→30万円!)してもらえたことがありました。こうして評価をしていただけることは、お仕事をしていて最も嬉しいことのひとつです。

もしかしたら最初から30万円の予算があったのでは?という想像もできますが、たとえそうだとしてもこんなふうに喜びを与えられるお金の使い方はステキだなと。自分もお金を渡すときにはこうありたいと思ったものでした。


見積金額に表れる自信・責任感

見積書。それは自分がどれだけ自信をもって仕事に取り組めるかを数字で示す申告書、でもあると思っています。

駆け出しの頃はよく「自分なんて実績もなく、まだまだなんだし…」と思って余計に低く見積もることがあったのですが、それはまさに自信のなさの表れであって、「安く請ける代わりに多少期待に添えなくても大目に見てください…」と、逃げ道をつくっているということでもありました。仕事をはじめる前からこれでは無責任というものですね。反省しています。

ではどうやってその自信をつけていくのか。ぼくの場合はとにかくたくさん作ることでした。表現のバリエーション、提案のかたち、その数を増やすことでどんな依頼にも対応できる状況を作りました。こちらから出せるものが増えれば不安は減り、見積り金額も強気で決められるようになります。


実はお金そのものに価値があるのではない?

親しいイラストレーター仲間に、自分の報酬額を上げるための交渉には力を注ぐのに、いざ請求のタイミングになると面倒くさくなって手続きを忘れる(というか、しない)という人がいます。

どうして?変わってるなぁ。と思って話を聞いていたのですが、その人にとってはきっと相手からの評価を知ることが重要であって、実際にお金を手にするかどうかはあまり重要でないんだということがわかりました。

そうなってくるとお金そのものに価値があるということでもないのか?なんて思い始めたり。いや、ぼくは大好きなんですけど。おかげでますますお金というものがわからなくなってきました。結局わからんのかい、どないやねん、と。すみません。


一年に一度、確定申告の帳簿をつける時に振り返るお世話になったクライアントとの取引記録。数字を見るだけでどんなお仕事をさせてもらったか、どんなやりとりをしたかが思い浮かぶようです。「お金に色はない」なんてこともいいますが、案件ひとつひとつにいろんな思い入れや記憶があり、それもまた仕事を続けていく上での大きな喜びです。



え?一年に一度?

そうですね…、帳簿は毎月つけたほうがいいですね。(なかなかできていないので反省しつつ)。日記をつけるような感覚でもっと自然に数字と向き合っていきたいと思います。



この投稿は【 freee × note 「 #はたらくを自由に 」コンテスト 】という、働き方について考える投稿コンテストの参考作品として主催者の依頼により書いたもので、わたくしサタケはその審査員として参加しています。
応募締め切りは2020年2月29日(土) 23:59まで。発表は3月上旬予定。「はたらき方の多様性」や「仕事と人生のあり方」について語られた作品を募集中です。

サポートはもちろんありがたいです!が、それよりもこの投稿をシェアしていただいたり、ご意見やご感想をいただけるのがより嬉しかったりします!