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日々の雑感 day60【「主体性」という出発点・ 世界最高の教室④】

今月末から全国高校生マイプロジェクト・長野summitがスタートを切ります。

人のより良い変化。特にこうした10代、20代があっという間に変化し、駆け上がっていく時間を横で見つめていける。そんな時間は、ライフワークとしても僕自身にとって最も幸福度の高い瞬間といえるでしょう。今年もどんな高校生達が来るのか楽しみです。

さて、今回の4回目で一応、世界最高の教室レビューは終了。
最後のテーマは「主体性」。

How to とかプロセスの細かいところを知りたい方等、ぜひ購入してお手元に置いて頂ければと思います。これからの時代の指針となりうる名著です。

☆「主体性」に対する勘違い

我が社、あるいはこれまでの個人としてこれまでの経験で、会社や先生、親といった「指導」することを前提にしたポジションの方が共通して使う言葉があります。それは

「こんなにやっても自主性が生まれない」
「どんだけ言っても主体的に行動しない」

といった自己正当化丸出しの表現です。とどのつまり、こうした言葉は「俺は悪くない」「私のせいではない」という主張に過ぎない・・ということです。

こうした指導的なポジションにいる人の個人的な思い込み。
アップデートされない「出来ている」「出来る」「分かる」「分かっている」「常識」「当たり前」という身勝手な主観がいかに「主体性」を殺してしまうのか。そのことをダイアン達は証明してくれてもいます。

☆大人(指導側)こそ「教える」を手放す

昨今の全国高校生マイプロジェクトでは、この「主体性」をテーマや価値観に入れ込んで出場してくる高校生達を見かける事も多くなってきました。

一昨年の長野県、篠ノ井高校の女の子はフルアドリブでプレゼンを実施。

そのキーワードが主体性であり、そのアドリブで生まれた言葉は

「先生が掲示板に【主体的】と貼ったり、書いたりした瞬間に【主体性】はなくなってしまう」

というものでした。
彼女はプレゼン前に「先生や教育委員会の人に一番伝えたい」と語ってくれていたものの、彼女の順番の前に彼女が最も伝えたい人達は、知ってか知らずか移動してしまった・・と大変残念がっていました。

この言葉が高校生達の共感を得たことはいうまでもありませんが、ダイアン・タヴァナー達が育み続けているこの summit でも、ファーストチョイスとして「勉強は先生から教わるもの」という前提を変えることとし、親や教師が「教える役割を捨てる」という挑戦を実行、実現しています。

☆教える(教師・Teacher)から見守る(コーチ・coaching)へ

クラウドファンディングでイエナプランの本場・オランダへ学びに行った大学生達がいたのですが、そこで彼らが目の当たりにしたのは「コーチング9割以上で、とにかくよく聴いて、よく見守っている。知識としてその場でどうしても必要な事や緊急性の高いことだけを伝えていく(選択権は常に相手にある)が先生や指導する人の在り方だった」という内容の話を聴いたことがあります。

オランダではポジティヴヘルスのようなコミュニティによる健康向上の仕組みでもコーチング技法は上手に取り込まれていて、とにかく【心理的安全性】の醸成に国をあげて取り組んでいるという印象を持っています。

ダイアンは彼女の学校でメンターともなる教師の採用で

「この教師は、別のやり方も出来ると考えられるだろうか? これまでの経験や自分が受けたトレーニングから離れて、別のアプローチを取得できるだろうか?」

と意識しているようです。
つまり、従来のやり方(How to)の中で工夫してカイゼンするのではなく、目的(子供達が人生で成功する為に必要な学び)の為に、よりよい方法を生み出せるか、作れるかということが問われているわけです。

☆大人(指導側)こそ、説明できるのか?

よくこの国あるあるで

「なんで、こんな役に立たないことに時間使うんだ?」

という子供の学問的問いに対して、答えられない大人(指導側)が「常識」「当たり前」「みんなが」といった各種の圧力でねじ伏せたり「お前がやってるゲームよりマシ」といった証明されない論点のすり替えでいい気になったりしています。

でも、そもそもで学問の起源とも言われる古代ギリシャでは、こうした「問い」と「議論」による学問の多様性こそ大事にされていたわけです。そして、国からお金がもらえるような「教師」という職もなかったので、こうした「問い」に応えられる「大人」こそお金を払ってでも学びたいプロとして認められていた。そんな学問のルーツもあったりします。

ダイアンらの summit でも

「今学んでいる事が、将来どんなことに活きていくか?」

とエビデンスを示したり、仮説を構築する事はとても大事にされていますし、これらを事前に「こういう効果があります」と伝える事による学習効果の上昇も実は研究されたりしています。

☆大人への問い

というわけで、私達は、大人だからこそより学び、より未来の世代にふさわしい役割(ロールモデル)である為に自らを磨き続けていかなければいけなさそうです。

ダイアンも本書で語ってくれていますが、多くの大人たちは「教育」というテーマを前にすると「自分の体験、経験」という世界の中だけで判断しがちです。つまり「私にとって良かったことは今の子供達にもいいこと」とか「私が子育てで成功したことは正解(に決まってる)」といった単なる思い込みを客観視出来ないのです。

当たり前ですが、その事実が確実に再現されるのは当人やその家族だけです。何よりも今の時代は「ここをおさえておけば大丈夫」というタスクやスキル、教科は減っていく一方です。

共感し、相手の立場を尊重しながら提案をしていく。そんなプロコーチのような関わり方はすぐに出来ないという人もいるでしょうし、出来ないから無理だからと諦める方向へ向いてしまう人も指導側には多いでしょう。そして、そんな姿勢が本当はロールモデルとして相応しくない事もわかっている筈です。ですので、私達はダイアンの問い

「今いる場所にもっと早く辿り着けたら。退屈な事や大変だけなことではなく、興味のあること、有意義な人間関係の構築といったことに時間を使えていたらどうだったろうか?」

という自身への内省からスタートする事はとても良さそうです。
そしてこの方法は、僕自身が2013年に東日本大震災の支援でボランティアとして入った大槌町のコラボスクールで中学生達から学び、自分自身と向き合ったプロセスにも合致します。

そして最近の僕自身は、僕が40代後半にしてようやく得たようなことを、彼ら、彼女らが30代、あるいは20代でクリアしてしまうといいなと心底から考え、実行しています。

そのうえで、そこからの10年を彼ら、彼女らがどう使っていくのか?

を見つめていけるなら、僕自身にとってもそれはとても幸せな事ではないかと考えているわけです。皆さんにとっては、いかがでしょうか?

*前回まで


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