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アカデミー作品賞、個人的ランキング①(90位~81位)

みなさんお久しぶりです。
今回はアカデミー作品賞を全作品鑑賞したので、個人的ランキングを書いていこうと思います。
実はこの企画、前にやっていたアメブロでもやっていたのですが、途中でこちらに移って中途半端になったり、今では評価が変わった作品もあるので仕切り直しということで書きたいと思います。
対象作品はアカデミー作品賞を受賞した95作品(第1回のみ作品賞『つばさ』と芸術作品賞『サンライズ』の2作品)です。
下から順にランキングしていき、最後にワースト5とベスト10を書くという構成にしたいと思います。
ということで、今回は81~90位の10作品について書いていきます。

90位 『愛と追憶の日々』(第56回・1984年)

11ノミネート・5受賞
受賞 : 作品賞、監督賞、主演女優賞(シャーリー・マクレーン)、助演男優賞(ジャック・ニコルソン)、脚色賞
ノミネート : 主演女優賞(デブラ・ウィンガー)、助演男優賞(ジョン・リズゴー)、作曲賞、美術賞、音響賞、編集賞

他のノミネート作品
『ライトスタッフ』(8ノミネート、4受賞)
『再会の時』(3ノミネート、0受賞)
『ドレッサー』(5ノミネート、0受賞)
『テンダー・マーシー』(5ノミネート、2受賞)

 本作は何といっても大スター、シャーリー・マクレーンが5回目の主演女優賞ノミネートにしてようやく受賞した作品として知られています。
 しかしながらこの回はバーブラ・ストライサンドが監督・主演した『愛のイエントル』が批評・興行的に成功を収めながら主要部門から外されてしまったという回でもあります。日本ではDVDすら出ていないですね。観たいので輸入盤買ってしまいました。
 まあそれはさておき、話に全く感情移入できず、これが作品賞?というのが正直な感想です。ジャック・ニコルソン、シャーリー・マクレーンは演技自体はいいのですが二人とも変人すぎて途中からどうでもよくなりました

89位 『カサブランカ』(第16回・1943年)

8ノミネート・3受賞
受賞 : 作品賞、監督賞、脚色賞
ノミネート : 主演男優賞(ハンフリー・ボガート)、助演男優賞(クロード・レインズ)、撮影賞(白黒)、編集賞、作曲賞

他のノミネート作品
『誰が為に鐘は鳴る』(9ノミネート、1受賞)
『天国は待ってくれる』(3ノミネート、0受賞)
『町の人気者』(5ノミネート、1受賞)
『軍旗の下に』(2ノミネート、0受賞)
『キュリー夫人』(7ノミネート、0受賞)
『The More the Merrier』(6ノミネート、1受賞)
『牛泥棒』(1ノミネート、0受賞)
『聖処女』(12ノミネート、4受賞)
『ラインの監視』(4ノミネート、1受賞)

 「君の瞳に乾杯」といった名台詞で知られる本作ですが、意外にも主演のハンフリー・ボガートは受賞しておらず、イングリッド・バーグマンはノミネートすらされていないんですね。
 名作と言われるのも納得で、やはり主演二人のスターとしての魅力が輝いていていいのですが、どうも僕はメロドラマというものと相性が良くなく、物語に全く入り込めずに見終わってしまいました。

88位 『スラムドッグ$ミリオネア』(第81回・2008年)

10ノミネート・8受賞
受賞 : 作品賞、監督賞、歌曲賞(「Jai Ho」)、作曲賞、編集賞、録音賞、撮影賞、脚色賞
ノミネート : 歌曲賞(「O Saya」)、音響編集賞

他のノミネート作品
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(13ノミネート、3受賞)
『フロスト×ニクソン』(5ノミネート、0受賞)
『ミルク』(8ノミネート、2受賞)
『愛を読むひと』(5ノミネート、1受賞)

 これは、今では重要な指標となったトロント映画祭観客賞を受賞しアカデミー作品賞までこぎ着けた最初の作品です。ダニー・ボイルは『トレインスポッティング』以降パッとしませんでしたが、本作で電撃的な復活を遂げ、監督賞も制しました。
 最大のライバルと言われたのはデヴィッド・フィンチャーの『ベンジャミン・バトン』で、最多ノミネートを獲得しました。また『愛を読むひと』はワインスタインのごり押しによってノミネートされたと言われています。果たして『ダークナイト』や『WALL・E / ウォーリー』を押しのけてまでノミネートされるほどだったかという議論になりました。これによって翌年からは作品賞が5枠から10枠へ変更されました。
 確かに大衆に受けるのは分かるなという、スピード感のある展開が魅力の作品です。しかしながら話運びはご都合主義の極み、勢いだけで押し切られてしまったという印象が強いです。僕としては『ミルク』が受賞するべきだったと思っています。

87位 『アパートの鍵貸します』(第33回・1960年)

10ノミネート、5受賞
受賞 : 作品賞、監督賞、脚本賞、美術賞(白黒)、編集賞
ノミネート : 主演男優賞(ジャック・レモン)、主演女優賞(シャーリー・マクレーン)、助演男優賞(ジャック・クルーシェン)、録音賞、撮影賞(白黒)

他のノミネート作品
『エルマー・ガントリー 魅せられた男』(5ノミネート、3受賞)
『息子と恋人』(7ノミネート、1受賞)
『アラモ』(7ノミネート、1受賞)
『サンダウナーズ』(5ノミネート、0受賞)

 この回は大スター、ジョン・ウェインが制作・監督・主演した『アラモ』が大規模なキャンペーンを行ったことで知られます。しかしながら『アラモ』は録音賞の受賞のみに留まりました。ヒッチコックの『サイコ』やキューブリックの『スパルタカス』が作品賞ノミネートを漏らしています。
 ジャック・レモン、シャーリー・マクレーンのそれぞれはステキなのですが、ロマコメとして魅力的なカップルかと言われるとそこまでのマジックは働いていないように思いました。
 また前述したように男女の恋愛もの、特にメロドラマ(ダグラス・サークは別として)、ロマコメが個人的に苦手なのであまり面白いと感じることができませんでした。演出にも特出すべきものはなく、職人芸といったものしか感じませんでした。

86位 『巨星ジーグフェルド』(第9回・1936年)

7ノミネート、3受賞
受賞 : 作品賞、主演女優賞(ルイーゼ・ライナー)、ダンス監督賞
ノミネート : 監督賞、原案賞、美術賞、編集賞

他のノミネート作品
『風雲児アドヴァース』(7ノミネート、4受賞)
『孔雀夫人』(7ノミネート、1受賞)
『結婚クーデター』(1ノミネート、0受賞)
『オペラハット』(5ノミネート、1受賞)
『ロミオとジュリエット』(4ノミネート、0受賞)
『桑港』(6ノミネート、1受賞)
『科学者の道』(4ノミネート、3受賞)
『嵐の三色旗』(2ノミネート、0受賞)
『天使の花園』(3ノミネート、0受賞)

 今までの作品は作品賞と監督賞を同時受賞していましたが、本作は違います。監督賞は本作のロバート・Z・レナードではなく『オペラハット』のフランク・キャプラが受賞しました。基本的には作品賞と監督賞は一致することが多いのですが、本作が逃したというのは作家性が認められなかったという現れではないでしょうか。
 また基本的には作品賞が最多受賞することが多い中(最近は分散することが多いですが)、本作は『風雲児アドヴァース』に受賞数で敗れています。
 ジーグフェルドというのは豪華なセットや膨大な出演者を用いたブロードウェイショーである「ジーグフェルド・フォリーズ」の興行主の名前です。
 確かにそのショーを再現したシーンは素晴らしく、有名なウェディングケーキのセットは唖然とさせられます。ただし物語自体に特筆すべきものがなく、作家性も感じられず単なる伝記映画以上のものを見出すことができませんでした。

85位 『ゾラの生涯』(第10回・1937年)

10ノミネート、3受賞
受賞 : 作品賞、助演男優賞(ジョセフ・シルドクラウト)、脚色賞
ノミネート : 監督賞、主演男優賞(ポール・ムニ)、原案賞、作曲賞、美術賞、録音賞、助監督賞

他のノミネート作品
『新婚道中記』(5ノミネート、1受賞)
『我は海の子』(3ノミネート、1受賞)
『デッドエンド』(3ノミネート、0受賞)
『大地』(4ノミネート、2受賞)
『シカゴ』(5ノミネート、2受賞)
『失はれた地平線』(6ノミネート、2受賞)
『オーケストラの少女』(4ノミネート、1受賞)
『ステージ・ドア』(3ノミネート、0受賞)
『スタア誕生』(6ノミネート、1受賞)

 本作は『巨星ジーグフェルド』の翌年の受賞作ですが、これも作品賞と監督賞が異なる作品にいった回です。監督賞は『新婚道中記』のレオ・マッケリーにいきました。また主演女優賞は二年連続でルイーゼ・ライナーが『大地』で受賞しました。
 さて本作ですが、やはりエミール・ゾラの伝記映画です。監督のウィリアム・ディターレと主演のポール・ムニは『科学者の道』でも実在の科学者ルイ・パスツールの伝記映画としてタッグを組んでいます。
 本作もやはり単なる伝記映画としての枠を出ておらず、ポール・ムニの存在感はなりきりっぷりは素晴らしいのですが、全体に冗長で退屈です。ゾラという人に興味があればいいと思いますが、そこまでなければわざわざ観る必要はないかなと思います。

84位 『パットン大戦車軍団』(第43回・1970年)

9ノミネート、7受賞
受賞 : 作品賞、監督賞、主演男優賞(ジョージ・C・スコット)、脚本賞、編集賞、美術賞、録音賞
ノミネート : 撮影賞、作曲書

他のノミネート作品
『大空港』(10ノミネート、1受賞)
『ファイブ・イージー・ピーセス』(4ノミネート、0受賞)
『ある愛の詩』(7ノミネート、1受賞)
『M★A★S★H マッシュ』(5ノミネート、1受賞)

 普通はアカデミー賞をもらったら嬉しいものですが、本作主演でアカデミー賞を受賞したジョージ・C・スコットは受賞を拒否し大いに議論を巻き起こしました。
 とはいえパットンという戦争しか頭にない一種の狂人の演技は凄まじいものがあります。それは否定できません。
 ただやはりこれも結局は伝記映画に留まっており、デヴィッド・リーンの『ライアンの娘』やアルトマンの傑作『マッシュ』を抑えて受賞するほどだったかというのは疑問です。

83位 『スポットライト 世紀のスクープ』(第88回・2015年)

6ノミネート、2受賞
受賞 : 作品賞、脚本賞
ノミネート : 監督賞、助演男優賞(マーク・ラファロ)、助演女優賞(レイチェル・マクアダムス)、編集賞

他のノミネート作品
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(5ノミネート、1受賞)
『ブリッジ・オブ・スパイ』(6ノミネート、1受賞)
『ブルックリン』(3ノミネート、0受賞)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(10ノミネート、6受賞)
『オデッセイ』(7ノミネート、0受賞)
『レヴェナント: 蘇えりし者』(12ノミネート、3受賞)
『ルーム』(4ノミネート、1受賞)

 この回は近年で最も納得がいっていない回の一つです。まずそもそも作品賞、監督賞に傑作『キャロル』がノミネートすらされなかったのは怒りすら湧いてきます。またこれも作品賞と監督賞が異なる作品にいったパターンで、監督賞は『レヴェナント』のイニャリトゥでした。本作が2受賞に留まったのに対し、最多受賞はなんと『マッドマックス』でした。これは今年の『コーダ』に対する『DUNE』に近いものを感じますね。
 さて本作ですが、もちろん題材が重要で、それを誠実に扱った作品とは言えるとは思います。しかしながら演出の凡庸さが目立ち、題材以上のものがみえない極めて平凡な作品だと思います。『ブリッジ・オブ・スパイ』『マッドマックス』『キャロル』が受賞するべきだったと思います。

82位 『オリバー!』(第41回・1968年)

11ノミネート、5受賞
受賞 : 作品賞、監督賞、美術賞、録音賞、ミュージカル映画音楽賞
ノミネート : 主演男優賞(ロン・ムーディー)、助演男優賞(ジャック・ワイルド)、脚色賞、撮影賞、編集賞、衣装デザイン賞

他のノミネート作品
『ファニー・ガール』(8ノミネート、1受賞)
『冬のライオン』(7ノミネート、3受賞)
『レーチェル レーチェル』(4ノミネート、0受賞)
『ロミオとジュリエット』(4ノミネート、2受賞)

 この作品は長いこと『邪魔者は殺せ』『落ちた偶像』『第三の男』といった歴史に残る傑作を残しながらオスカーを手にしたことがなかった巨匠、キャロル・リードに対する功労賞的な意味で受賞したと言われています。
 原作はもちろんディケンズの「オリバー・ツイスト」ですが、それをミュージカル化した舞台の映画化というものです。キャロル・リードが初めて手がけるミュージカルということで、やはり「キャロル・リードはミュージカルには向かない」という証明になってしまったように思います。
 ビジュアル的に素晴らしいシーンはあるのですが、とにかくミュージカルとしてはテンポが悪い。間延びしてしまっているように感じました。一級の美術や衣装はよいのですが、これを2時間半みせられるというのはなかなかの苦行でした。

81位 『フォレスト・ガンプ 一期一会』(第67回・1994年)

13ノミネート、6受賞
受賞 : 作品賞、監督賞、脚色賞、主演男優賞(トム・ハンクス)、編集賞、視覚効果賞
ノミネート : 助演男優賞(ゲイリー・シニーズ)、撮影賞、作曲賞、美術賞、メイクアップ賞、音響編集賞、録音賞

他のノミネート作品
『フォー・ウェディング』(2ノミネート、0受賞)
『パルプ・フィクション』(7ノミネート、1受賞)
『クイズ・ショウ』(4ノミネート、0受賞)
『ショーシャンクの空に』(7ノミネート、0受賞)

 最近はあまりパッとしませんが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作などのヒットメーカー、ロバート・ゼメキスの名作ですね。トム・ハンクスの演技も素晴らしく、面白いには面白いのですが、テーマの扱い方自体に問題がある作品とは言えるでしょう。
 まずこの回は結構珍しいのが、本作以外の作品賞候補作で一個もオスカーをとれなかったのが3作品もあるということです。そして複数受賞を果たしたのがティム・バートンの『エド・ウッド』、キアヌ・リーブス主演『スピード』、ディズニーの『ライオンキング』で、それぞれ2受賞でした。『フォー・ウェディング』に至っては作品賞と脚本賞にしかノミネートされていません。今年ほどではありませんが異例な回と言えるでしょう。
 本作が最もよく批判されているのが、「公民権運動を全く描いていない」という点です。近代アメリカ通史のようなつくりであるのにそこをスルーしていいのかというのが問題です。白人中心的な世界観はやはり我々アジア人からしても違和感を抱かざるを得ません。
 面白いんですよ!でも上位に置くには気が引けるという意味でこの位置にしました。

ということで今回は90位~81位までの作品を紹介しました。
次回もお楽しみに!

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