なぜ企業が成熟すると、悪いニュースが届かなくなるのか?

以前のnoteでノキアの復活物語を取り上げました。ガラケー時代の覇者で「フィンランドの奇跡」とも呼ばれたノキアは、スマホシフトの波に飲み込まれ一時は倒産の危機に直面しました。

そんなノキアはリスト・シラスマ氏のリーダーシップのもと、本業である携帯電話事業の売却という荒療治によって復活していきました。そのあたりは、シラスマ氏の著書に記されています。

今回はその書籍から、いわゆる大企業病について取り上げます。巨大なノキアでは官僚主義が蔓延り、トップマネジメントまで悪いニュースが届かなくなってしまっていました。シラスマ氏は、これを成功の毒性と表現しています。今回はこのメカニズムを整理します。

失敗を隠蔽するインセンティブ

みんな批判されることを恐れて、悪いニュースを公表することを恐れているかもしれない。あるいは、とにかく悪いニュースを持ってくるよう強く言われたので持っていったところ、後で叱責されたり解雇されたりすれば、ほかの全員に「口をつぐめ」というメッセージを送ることになる。

成功の毒性を示すサインとして、悪いニュースが届かなくなることが挙げられます。背景にあるのは、大企業に良く見られる「失敗を隠蔽するインセンティブ」です。なぜこのようなインセンティブが働くのでしょうか。

事業が成功し、市場と技術が成熟してくると、競争の基盤はコストや効率性に移る傾向にあります。現場のカイゼンを積み重ね、競合他社よりも高い効率を達成した企業がより多くの利益を得られるわけです。

最高効率を目指すことによって、業務の標準化が進み、マニュアルが整備されていきます。そうした中で、従業員はとにかくミスをしないように仕事を進めます。これが失敗の隠蔽に繋がっていくのです。

悪いニュースや厳しい現実を詳しく調べない

悪いニュースが届くようにすることも大事だが、自分でも探しにいく必要がある。自分が会社の問題の根本原因を調べなくても、きっと部下が調べるだろう。何か重要なことがわかったら、部下がきっと知らせてくるだろうと、心の中で言い訳しているかもしれない。しかし、そうとは限らないのだ。

また、人々が悪いニュースや現実を詳しく調べなくなるという現象も複合的にです。何も自分がやらなくても、他の誰かがやるだろうという意識がノキア社内には蔓延していたとシラスマ氏は回想します。

企業が成熟し成功体験が積み重なってくると、いわゆる勝ちパターンが確立してきます。そうすると、そのパターンから逸脱しないように動こう、というインセンティブが生じるわけですね。

成功の毒性にさいなまれたノキアは、本業の売却というウルトラCを繰り出したわけですが、その改革がなければ消滅していた可能性も高かったのではないでしょうか。

今回は以上です。

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