#008 任天堂がひたすらに無借金経営を続ける理由
任天堂は83.7%
この数字は何を意味するのでしょうか。か。実はこれは、任天堂の2019年度末の自己資本比率です。同社は一貫して無借金経営を貫いています。今回は経営戦略の面からその理由を紐解きます。
バランスシート
上記は任天堂の2009年と2019年の任天堂のバランスシートを並べた図です。同社はこれまで一貫して借入金を調達しておらず、その結果、自己資本比率は脅威の83.7%に達しています。
財務省の法人企業統計調査によれば、自己資本比率の全企業平均は44.3%となっていますので、任天堂の財務基盤の磐石さが良く分かります。
日本企業の約6割が実質無借金
みずほ総合研究所の資料によれば、2017年時点で日本企業の約6割が実質無借金になっています。この数字は、現在のアメリカ企業の約2倍に相当する水準です。
なお、上記の実質無借金は「手元資金>有利子負債」の金額がプラスになる企業の比率を示したものです。全く借入れをしていない任天堂は、「実質」無借金ではなく、「完全」無借金だと言えます。
WiiのヒットとWii Uの失敗
次に、任天堂の売上高トレンドをチェックします。2006年度に発売したWiiは累計販売台数が1億台を超える大ヒットとなり、社会現象を巻き起こしました。
ところが、その後発売したニンテンドー3DS、Wii Uの販売台数はそれぞれ1,000万台に留まりました。この2つの失敗により、任天堂は2012年~2014年の3年間赤字に転落します。
赤字に転落したのは、Wiiのヒットにより過去最高益を更新した2009年からわずか3年後のことでした。それくらい業績の変動が激しいことが、任天堂が無借金経営を貫く大きな理由の一つです。
スイッチ一本足打法からの脱却
任天堂の製品種類別の売上高をみると、Nintendo Switch関連の売上が9割近くを占めています。まさに「スイッチ一本足打法」です。ゲームハードへの依存度を引き下げ、業績を安定させる為、同社はIP関連事業を拡大させる戦略を取っています。
ゲーム業界は天国か地獄か
「ゲーム業界にあるのは天国と地獄だけ。中間はない」任天堂を世界的なゲーム企業に押し上げた「中興の祖」山内溥氏はそう語っていたとされます。
ゲーム機がヒットするかどうかによって、業績が大きく変動するゲーム業界の特性を踏まえて、任天堂は無借金経営を貫いているわけです。
現在の任天堂は、IP関連事業を拡大することにより、スイッチ一本足打法ともいえるゲームハードへの売上依存度を下げて、業績を安定させることを目指しています。
今回は以上です。
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