ホームアーキテクトとして役割 ー「ロカデザインラボ」のはじまり
1_はじめに
こんにちは。昨年スタートしたロカデザインラボという会社のサイトリリースによせて、わたしたちの会社のコアにある想いをここに記したいと思います。
↓2024.4.1にリリースしたサイトはこちら。
2_はじまり
昨年の8月、ロカデザインラボという会社を設立しました。これまで携わってきた空間デザインを生業とする会社です。
大学生の頃だったか、いつからかぼんやりと、いつか自らの会社をつくりたいと思うようになり、それが人生の大きな目標のひとつとなっていましたが、年月を経て、いまやっと現実の形として踏みだすことができました。
会社設立は、同じく設計者である飯山友太さんとの共同代表としてスタートしました。
会社の設立の仕方など、なにもかもわからないことだらけで不安もありましたが、それよりも、なにをやってそしてなにをやらないかをはじめ、すべてを自分たちで決められるということに、これまでの会社員時代には感じたことのない自由を感じました。
設立の準備段階から2人で話し合い、わたしたちの会社のかたちとはどんなものであるべきかを模索してきました。具体的なイメージがないままスタートを切った私たちでしたが、話し合いをはじめた当初から、わたしたちの会社の目指すべき形が、設計事務所やデザイン事務所、またはリノベーション会社のような既存の会社組織とは似て非なるものである事だけは、ふたりの間での共通認識としてありました。
ですが、それが具体的にどういうものであるか、アウトラインを明確にするための作業が必要となりました。その作業は、トレーシングペーパーの上に、何度も線を重ね、その輪郭をすこしずつ浮かび上がらせるような、これまでやってきた設計の作業と似て、同じように地味で、そして同じように多くの時間を費やす必要のあるものでした。
幸いなのか、まだ仕事もあまりなく、時間だけはあったわたしたちは、ロカデザインラボのコアにあるものを納得するまで掘り下げ、浮かび上がらせることができました。
3_ロカデザインラボの由来
まずは、屋号について。
このロカという屋号には、「濾過」、「local」、「loka」の3つのイメージを重ねました。
濾過
何かを付け足すのではなく、時間をかけて要素を純化していく。わたしたちの考えるデザインという行為は、「濾過」というイメージに重なること。つまり、デザインとは、デザイナーが要素を付け足して華美にみせることではなく、あくまでもクライアントの要望やその他の諸条件を掘り下げ、整理した結果生まれる澄んだ雫のようなものであること。そして、その雫は、濾過する過程でミネラルが多分に溶け込んだ豊かな一滴であるように、という意味を込めました。
local
ローカル:その地域に特有のもの
と、広辞苑にあります。
ロカのデザインは、ローカルの意識を常にもったものであること、そして、たとえ小さなプロダクトデザインひとつを生み出すとしても、そのおかれる場所との連続性を意識したデザインでありたいというわたしたちの意思をここに込めました。
loka
サンスクリット語を元にする仏教の言葉で、生物が生存し輪廻する空間を意味しており、localやlocationという言葉と共通の語源を持った言葉です。東洋をルーツとするこのlokaという言葉は、わたしたちのアイデンティティを表現し、私たちの屋号に掲げるのにとてもスムーズな印象を抱きました。
これら3つのイメージを重ね、わたしたちは、ロカデザインラボという会社を始めることとなりました。
4_ロカデザインラボのコンセプト
既存の設計事務所や、リノベーション会社などの形態を漠然となぞるのであれば、コンセプト設定はあまり必要ではないかもしれません。だけれど、これまでにないものをつくっていくためには、新たなコンセプトの設定が必要でした。わたしたちは、何度も打合せを重ね、下記のようなコンセプトを設定するに至りました。
このコンセプトには、次の2つの見直しが根底にあります。
1_フェーズの見直し
2_距離感の見直し
このふたつです。
4-1_フェーズの見直しーホームアーキテクトとして
まずわたしたちは、設計者が誰かから依頼を受け、その段階からプロジェクトに参画して設計をするというフローに疑問をもちました。
なぜなら、これまで組織に所属する設計者としての経験のなかで、あるプロジェクトが設計者のところまできた段階で、すでに空間の方向性の大枠がきめられていて、その段階からわたしたち設計者にできることがすでに限られてしまっていることが非常に多かったからです。そして、それではクライアントの悩みや要望の本質のアプローチできていないと感じていました。
現状の空間に問題を抱えた人が、その問題がなにであるか、そしてそれはどうすれば解決するのか、それは既存の空間を改変することによって解決できるのか、もしくは、場所を移す必要があるのか。いまの社会のなかで、そんな漠然とした悩み、つまり0フェーズの悩みを、気軽に話せる相手をみつけることはなかなかできません。
そこで、わたしたちが0フェーズから関わることで、人々が抱える問題の本質にアプローチできるのではないかと考えました。わたしたちは、下記のようにフェーズを設定しました。
0フェーズ 空間を考える
1フェーズ 空間をみつける
2フェーズ 空間をつくる
3フェーズ 空間をつかう
これまで、いわゆる「設計者」としての関わりかたは、2フェーズ(空間をつくる)のみに限られることがほとんどでした。ですが、それだけでは人々の本質的な悩みにアプローチすることができません。
わたしたちは、0フェーズを中心として、1(空間をみつける)・2(空間をつくる)・3(空間をつかう)のフェーズを、循環し終わることはないサイクルとして考えています。そして、空間とは暮らしのなかで、そのときの自分に合うように常に改変していくべきものだと考えています。ここで、空間の改変とは、大掛かりな工事を伴うものだけではなく、ほんの少さな家具を新しくすることでも良いのです。
建築とは、第三の皮膚と言われるように、わたしたちを構成する身体の延長のようなものです。なので、自分を包む空間を、自分の一部のように大切にしてほしい。そして、ひとりだけでは答えが出ない問題については、なんでも相談してほしい。そのように思っています。
わたしたちは自らの役割を、クライアントに寄り添うカウンセラー、もしくは、かかりつけ医(ホームドクター)のようなものと捉えています。
今日、ヨーロッパの多くの国では、ホームドクター制をとっていて、些細な身体の悩みを気軽に相談できるホームドクターという存在がいます。私たちは、身の回りの空間について、気軽に話せるホームアーキテクトとして社会と関わりたいと思っています。
4-2_距離感の見直し
もうひとつの見直しは、距離感の見直し、つまり、"いま、わたしたちと空間の関係は疎遠になってしまっているのではないか?"という問いです。言い換えるならば、私たち自身が自分の身の回りの空間づくりにもっと主体的にかかわってよいのではないかという疑問でした。
ロカが考える、人と空間の適切な距離感とは、わたしたちが子どもの頃にした秘密基地遊びのようなものです。子どもの頃のわたしたちは、秘密基地にふさわしい空間をさがし、そこに空間をつくり、その空間でどうやって過ごすかを、 わくわくしながら考え、遊びました。
わたしたち大人も、秘密基地あそびをたのしむ子どものように、身の回りの空間を自由に改変していくような、「空間と親密な関係」理想とし、空間にあそぶ社会を目指しています。
ですが、今の社会においては残念ながら、不動産業者、ハウスメーカーなどの売り手側の効率を考えた結果、空間というものが商品としてパッケージ化され、わたしたち消費者は限られた選択肢の中からただ選ぶという不自由さのなかにいます。
たとえば、住宅展示場に行き、住宅メーカーを決め、何案かのプランのなかからひとつのプランを選びと、スムーズにどんどん私たちの住まいのかたちは決まっていきます。まるで流れ作業に乗せられたかのように。そして、完成した家のなかで、多くの人が思うのではないでしょうか。本当にこれが自分のほしかった住まいなのだろうかと。
わたしたちを包み込む空間、特に住まいというのは、洋服のように飽きたらまた別のものを買えば良いというわけにいきません。一時のムードを満たすための洋服などであれば良いけれど、家というのは毎日帰ってくる場所であり、フィットしない空間に住み続けることは、心も身体も不健康にします。
すべての人には、ひとりひとりにそれぞれ違ったかたちの暮らしがあります。家族との関係性、生活様式や信仰、癖や大切にしている時間の過ごし方など、あたりまえですが、ひとりひとりにとっての暮らしのかたちは個性的で、それであるから美しいのではないでしょうか。そして、その暮らしを包みこむ空間も真摯に取り組むならば、ひとつひとつちがうはずなのです。
5_では、僕らはなにができるか?
わたしたちロカのメンバーは、空間に悩みを持つ人の身近な存在、ホームアーキテクトとして、より良い空間をデザインするお手伝いをしていきます。
そしてさらに、自らの空間について語り、もっと気軽に空間を改変していく社会にすること。そして、その結果として、人々が心から健康な暮らしを営む社会を目指していきます。
具体的な活動のかたちについては、これから少しずつ考え、実現に向かっていきたいと思います。わたしたちの活動を応援よろしくお願いします。
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