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「1位にならなきゃ?」順位に関する考察

あたかも『世界一になる』のを目的に巨額の予算を申請した国家プロジェクトの事業仕分けに際して、
「2位じゃダメなんでしょうか?」
と質問した政治家の考え方を支持する(この政治家を支持しているわけではない)意見を書きました:

この記事は『なぜなぜ分析』によりプロジェクトの妥当性や真の価値を炙りだしていく手法の重要性に触れたものでしたが、この、
『2位ではダメか/1番がそれほどいいのか』
という根本命題については書いていない。

また、昨シーズン、大谷翔平選手がリーグのホームラン王を獲った『偉業称賛』に対し、『ホームラン王』や『首位打者』のようなタイトルをたまたま獲ろうが逃そうが、彼の偉大さには何も替わりがない、とも書きました。

ホームラン王は取れても取れなくても、限られた出場機会であれだけの数のホームランを打った大谷さんの偉大さには変わりがない、と私は思います。
MLB時代のイチローさんが、
「首位打者にはこだわらないが安打数にはこだわる。打率は低下することがあるが、安打数は減らないからだ」
と言っていました。
以下は私の勝手な想像ですが、彼が言いたかった本質は、
《首位打者やホームラン王は他者との比較であり、安打数やホームラン数は自分の限界への挑戦だから》
ではないか、と思っています。
ボクシングや将棋における《一番》は相手を倒した結果なので《真の一番》なのでしょうが、首位打者やホームラン王はそうじゃない ── 対戦相手もチームメイトも異なる中での、ある『切り出し数字』を比較した結果だけのこと。

https://note.com/shunkanzenji/n/nad5dcf2ef8a3

これらの記事のように、時事テーマ中に考え方を織り込むのもいいけれど、時にその考えを論理としてまとめることも必要かな、と思います。

個別の記事は、特定の発見について書いた、
『Original Paper(原著論文)』
であり、一連の知見を整理してまとめるのが、
『Review Paper(レビュー論文)』
にあたります ── 大げさかな。

アスリートだったり、実業家などで、子供の頃から、
「1番になれ」
と言われて育った人の話題が出ることがあります。
では、1番ってなんだろう?
競技などで1位と認められる場合、試験などで最高得点を取る場合などあるでしょう。
これを分類してみると、

1.達成型
2.対戦型
3.得点型
4.切り取り型

ぐらいに分けられるのでしょうか。

1の「達成型」とは、エベレストに初登頂したとか、月面に初めて降り立った人/グループという類で、歴史に残り、その結果、多くの人の記憶に残ります。一方、2番目の人/グループの名はあまり知られない。
多くは競争が目的ではないけれど、対象は「前人未踏」などと称され、競争のように煽られたりするし、達成すれば実際、かなりの名誉になるため、個人だけでなく、国家が「威信をかけて」バックアップすることも多い。

2の「対戦型」とは、将棋やボクシングのように1対1での対戦の積み上げで最終的にその頂点に立つ1位が決まるケースで、対戦上のクジ運はあるものの、1位になれば、その範疇での最高実力者、と言っていいでしょう。

3の「得点型」とは、試験の成績のように、ある条件で課された問題で最高得点を挙げた人/グループが該当します。
陸上競技や水泳など、時間、長さなどの達成した数値で競う競技もこれです。
例えばマラソンのレースなどは一斉に行われるので2の「対戦型」のように見えますが、結局はフィニッシュタイムという数字を競うものなので、「得点型」でしょう。
これも、1位になれば、その試験/競技における最高実力者と言えます。

4の「切り取り型」とは、プロ野球の『ホームラン王』『首位打者』『最多勝』のように、本来の目的はチームとしてゲームの勝利を積み重ねるために行う活動の、ある側面の数字だけを切り出して、あたかも3の「得点型」のように取り扱って表彰したりするものです。
この「切り取り型」でファンが一喜一憂するのはやめた方がいい、と思うのです。打撃の弱いチームで最多勝利を挙げるのは相当難しく、前後の打者が不調な場合は打点を挙げられない。個人の能力以外の要素が大きい「切り取り方」で個人を顕彰するのはフェアでない。

個性的な『天秤打法』で知られた大洋ホエールズの近藤和彦外野手について書きましたが、『首位打者』などは二重の意味で問題があります。

打率ではリーグ2位を通算4回、打率3割以上を6回記録しますが、首位打者は獲得できなかった。
ちなみに、わたしはこの「打率1位」という称号には何の意味もない、と思っています。「打率」という概念自体が、前世紀の遺物です。

《本格派》より、《邪道》の匂いがする《強烈個性》が好き|谷 俊彦 (note.com)

さて、
「2位じゃダメなんでしょうか?」
で議論になった(いや、「議論」にならなかった)スパコン開発予算はどうだったのでしょうか?

これは一見、『計算速度』という数値で「世界一を目指す」というものなので、
3の「得点型」
のように見えます。
それを、開発チームやプロジェクトを押す役人・政治家は、
1の「達成型」
のように語り、「国の威信をかけて」開発すべきだ、と強調したのでしょう。確かに、人類がこれまで実現していない計算速度を達成するわけで、この型にも見えます。

でも、どうなんでしょうか?
スパコンの開発目的は世界一の計算速度を達成することではなく、大規模な全球気象シミュレーションによる気象予報など、重要な計算を意味のある時間内で行うことだったはずです。
プロ野球のペナントレースはチームが最高勝率を挙げるために戦うのが目的であり、『ホームラン王』などはあくまでも「切り取り型」の1位勲章であるのにも似て、スパコンの計算速度世界一も「切り取り型」の勲章なのではないでしょうか。
専門家ではありませんが、スパコンには計算速度以外にも、アクセスし易さのような使い勝手や汎用性、省エネルギー性など別側面の性能もあるはずです。

さて、この記事の結論は、
1.達成型
2.対戦型
3.得点型
は正当な1位だけれど、
4.切り取り型
はそうじゃない ── ということだけではありません。

「1番になれ」
と言われて育ち、1番になれなかった人って不幸なんだろうか?
1.達成型
2.対戦型
ではそうかもしれない。
でも、その中で「1位」ではなく、個人成績に関わる別の目標値を決め、その達成を目指して努力すれば、他人が自分より高い値を叩き出して1位になれなくても、
『自己満足』
することができる。そして、これまで何度も書いたけれど、
── 幸福とは、『自己満足』にある。

イチローさんはよくわかっていました:

MLB時代のイチローさんが、
「首位打者にはこだわらないが安打数にはこだわる。打率は低下することがあるが、安打数は減らないからだ」
と言っていました。
以下は私の勝手な想像ですが、彼が言いたかった本質は、
《首位打者やホームラン王は他者との比較であり、安打数やホームラン数は自分の限界への挑戦だから》
ではないか、と思っています。

https://note.com/shunkanzenji/n/nad5dcf2ef8a3
(再掲)

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