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「2位じゃダメなんでしょうか?」に責任者は論理的かつ明確に答えなくてはならなかった

はじめに言っておくと、私はこの政治家個人の支持者でもなければ、彼女が所属する政治グループの支持者でもない。
申し訳ないけれど、彼女の話し方(内容ではなく)はどちらかといえばあまり好きではない。

でも、この人が都知事選に立候補するとのニュースに触れたので、表題の件に関してかつて抱いた感想を書きます。

ご存じのように、民主党が政権を取り、『特別会計の事業仕分け』をした時、スーパーコンピュータ『富岳』開発プロジェクトが巨額予算になる理由が『計算速度世界一を目指す』だったことに対しての質問でした。

これに対して、役人側から論理的定量的な答えはなく、
「世界一の研究のため」
「国民に夢を与える」
など曖昧で、定性的ですらない、堂々巡りっぽい回答だったように記憶しています。

このやりとりが報道されると、予算を獲得したいプロジェクト推進派はもちろん、おそらくは単に足を引っ張りたい反対陣営の政治家まで、この『素朴な』質問をあざ笑うかのような声が巻き起こった。

けれど、どうなんだろうか?
少なくとも民間企業で働いている人間は(おそらくは、開発を担当する富士通の技術者も含め)、
「(自民党政権時代には出なかったかもしれないが)当たり前の質問」
と思ったのではないでしょうか?

「『科学』は『費用対効果』の考えになじまない」
と言う人がいるかもしれない。
ならば、そもそも予算額自体の議論はできない。
例えば、その計算速度が天気予報の迅速性や正確性などをどれくらい革新的に向上させるのかなど半定量的に説き、『世界一』はその結果としての副次的なもの ── 辺りが答えなら、議論は次に進んだのではないでしょうか?

彼女の質問は、いわゆる『なぜなぜ分析/なぜなぜ5回』のうちの最初の『なぜ?』にあたるのでしょう。そして、それに役人が明確に答えられなかった。

『なぜなぜ分析』というのは、企業で問題が発生した時に真因をつきとめるのに使われますが、それ以外のあらゆる判断事項に対しても行われる。
『なぜなぜ』を繰り返すうちに、例えば、
『新材料開発にとって必要不可欠な装置の新規購入』
を議論するうち、
『既存装置の改良によって可能性を見極めてから仕様を決めて独自に設計する方が得策』
に結論が変わったりする。

ワンマン社長が牛耳っている会社ならともかく、まともな企業で『なぜなぜ』に対して納得できる論理的な(できれば半定量的な)答えが出ないプロジェクトは、
「ちょっと待てよ!」
となるでしょう。

しかしながら、長らくの自民党政権下で、
『政府与党の有力者が推進する事業ならば予算が通るのは当たり前』
に慣れていた人たちは、答えをマジメに考えていなかった。

「何言っているんだ。1位でなきゃダメに決まってるだろう!」
保守系政治家がそう怒鳴った記憶がありますが、もちろん、何の答えにもなっていない。

まったく別件ですが、東京オリンピックの施設建設などへの予定外の莫大な出費に対しても、この種の、
「何言っているんだ。必要に決まってるだろう!」
の恫喝が何度も通ったことでしょう。

それらの積み重ねとして、この国は莫大な財政赤字を抱えるに至ったのかもしれません。

オリンピック競技でも、そりゃ2位より1位の方がいいけれど、それは決して『国威発揚』のためなどではない ── 全体主義国家じゃないんだから。

彼女の都知事選立候補宣言が過去の『2位じゃダメなんでしょうか?』発言を想起させるその日、このニュースが流れた。

あるいは、私だけなのかもしれないが、とても『象徴的』に感じました。

おそらくは、
『なぜオリンピックで最高位スポンサーを継続するのか?』
から始まる『なぜなぜ』を何回かして、『費用対効果』を定量的に検討した結果、上記のような結論に達したのでしょう。

彼女の『出馬宣言』に、自民党の政治資金問題が前面に出ていることが気になります。
勝つための手段と思っているのかもしれないが、そんなことより、東京都の予算に『なぜなぜ』を持ち込んで必要な見直しを行い、国に対しても範を見せて欲しい、と思う。

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