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《本格派》より、《邪道》の匂いがする《強烈個性》が好き

たまにですが、NHK-BSの『球辞苑』を観ます。
毎回、マニアックなテーマで日本のプロ野球データを分析しています。例えば前々回(2023/11/11)のテーマは『挟殺プレー』、そして、一昨日(2023/11/18)のテーマが『投球間隔』でした。

しかし、この記事のテーマはTV感想文ではありません。
番組では、いつものように今シーズン『投球間隔』が長い投手、短い投手をデータを元にピックアップし、その理由などを調べ、紹介していきました。

そして……

史上最も投球間隔の短い、レジェンド・ピッチャーを紹介したのです:

元中日ドラゴンズ(1970-1979)⇒阪急ブレーブス(1980-1981)で活躍した松本幸行ゆきつら投手です!
おお、懐かしい!

番組でも紹介していましたが、左腕の松本投手はキャッチャーから返球を受け取るとすぐに次の投球モーションに入るという独特なスタイルで、当時から、
《キャッチボール投法》
と呼ばれていました。
『球辞苑』の中では「どれくらい短いのか」を示すビデオを流していましたが、残念ながらYoutubeなどで投球間隔を含む動画は見つかりませんでした。
投球フォームもまさにキャッチボール風:

彼の「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」の投球術が私は大好きでした。
1974年、中日ドラゴンズが20年ぶりの優勝を果たした時、松本投手は先発完投型で20勝9敗、最多勝と最高勝率を獲得したにもかかわらず、彼ではなく、リリーフに回った星野仙一が沢村賞を取ったのが解せませんでした(上記Youtubeも同意見)。
要は、キャッチボール投法の松本投手は、いくら勝とうが《本格派》とは見なされていなかったためでした。

時代をもう少し遡ると、さらに個性的な投手がこの球団にはいました。

アンダースローの小川健太郎投手です。
左足を優雅に舞わせるような投球フォームが美しく、少年時代の私は、彼を手本にアンダースローの投球練習をしていました。

29歳でドラゴンズに入団し、31歳で初勝利という遅咲きながら、1965年から5年連続2ケタ勝利を挙げ、1967年には29勝を挙げるエースでした。
特に有名なのは、苦手としていた王貞治選手と対戦した際に、自分の投球フォームの途中から、背中に回した右手でそのまま投げる『背面投げ』を行ったことです。
これも、残念ながら動画は残っていないようですが、公式戦で2球投げ、けれど2球ともボールだったようです。
タイミングを外した『背面投げ』でストライクを取る練習を相当やったようですが……。

「ケンタロー!」
スタンドから声援がやまない人気者でしたが、オートレースの八百長に関与したとして逮捕され、プロ野球界を永久追放処分になりました
いわゆる『プロ野球黒い霧』事件です。プロ野球での八百長試合で永久追放となった西鉄・池永選手、東映・森安選手らとは異なり、八百長野球には関わっていなかった小川健太郎選手でしたが、同じ処分を受けました

子供心にも、ヒーローの逮捕と永久追放はショックでしたが、
「お利口さんではない/アウトローっぽい」
小川選手らしい、とも感じましたね。

さて、打者ではどうでしょうか?
私の少年時代、最も個性的であり、しかも好成績を残したバッターが、大洋ホエールズの近藤和彦外野手です。
両手の間を開き、かつ、軽く持ったバットを地面とほぼ平行に構える独特なフォーム、
『天秤打法』
で知られていました。
この『脱力感満載』のフォームでタイミングを取り、ピッチャーの投球直前にバットを構えなおし、シュアなバッティングでヒットを量産するのです。
打法としては、『神主打法』とか『振り子打法』なんてのもありますが、『天秤打法』ほど奇妙な打法はないでしょう。

奇妙なフォームにもかかわらず、といっては失礼で、おそらくそれだからこそ、なのでしょう、毎シーズンのように首位打者争いをする『打撃の職人』でした。
打率ではリーグ2位を通算4回、打率3割以上を6回記録しますが、首位打者は獲得できなかった。
ちなみに、わたしはこの「打率1位」という称号には何の意味もない、と思っています。「打率」という概念自体が、前世紀の遺物です。
四死球を考慮に入れた「出塁率」や塁打をカウントした「長打率」の方がはるかに重要です。

近藤和彦選手のファンでもあった私は、当然、この打撃フォームも真似ようとしましたが、振り遅れて空振りするだけで、まったくダメでしたね。

小さい頃から『オリジナル』に重きを置いていたこともあり、プロスポーツでも『独特の流儀』を持つアスリートが好きでした。
例えば大相撲でも、立派な体格を生かして本格的な四つ相撲をとる大鵬ではなく、『蹴たぐり』の名手・海乃山土俵狭しと飛び回る、忍者・藤ノ川が贔屓でした。

すなわち、《邪道》に魅力を感じる少年だったのでしょう。
もちろん、ただの《邪道》ではダメで、《本格派》とも互角に戦える実力者でなくてはなりません。
《本格派》に泡を吹かせる《邪道》でなくてはいけません。

『個性』と言えば今や大谷翔平選手ですが、彼の大いなる個性は『二刀流』であること自体であり、投手としてのスタイルも、打者としてのスタイルも、まさに《本格派》 ── いわゆる外連ケレン味などはまったくありません。

いや、もちろん、大谷さんは人格も素晴らしく、投も打も、『超』のつく実力者です。

でもね、
『邪道』の匂いのする『強烈個性』も恋しい!

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