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子供時代の夢を実現させる人は素晴らしいけれど、応援し続けた人や育てた人はもっと素晴らしい

藤井聡太竜王名人が八冠制覇したことで、地元のテレビニュースはたいへんな騒ぎです。
ただ……
瀬戸市内の商店街で街の人がインタビューされ、
「瀬戸の誇りです」と言っていたのには(テレビ局が期待する答えを発しているのでしょうが)違和感がありますね。
大谷翔平選手のホームラン王が決まった時にも、
「日本人として誇らしい」
とインタビューに応じたファンにも違和感がありました。
ちなみに、ホームラン王は取れても取れなくても、限られた出場機会であれだけの数のホームランを打った大谷さんの偉大さには変わりがない、と私は思います。
MLB時代のイチローさんが、
「首位打者にはこだわらないが安打数にはこだわる。打率は低下することがあるが、安打数は減らないからだ」
と言っていました。
以下は私の勝手な想像ですが、彼が言いたかった本質は、
《首位打者やホームラン王は他者との比較であり、安打数やホームラン数は自分の限界への挑戦だから》
ではないか、と思っています。
ボクシングや将棋における《一番》は相手を倒した結果なので《真の一番》なのでしょうが、首位打者やホームラン王はそうじゃない ── 対戦相手もチームメイトも異なる中での、ある『切り出し数字』を比較した結果だけのこと。

……と、世間が盛り上がっている最中に、またWet Blanketなことを書いてしまいました。
かつ、相当な『脇道逸れ』でもありました。

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10月6,7日の両日に渡り行われた将棋界で最も高額賞金をかけたタイトル、竜王戦の第1局は、藤井聡太竜王の勝利に終わりました。
この対戦は、21歳の竜王に対して同学年・20歳の伊藤匠7段が挑戦する、というフレッシュな組み合わせも話題になりました。
さらに、この二人は小学生時代に因縁があり、ご存じ、今回の藤井さん八冠制覇で、小学生将棋大会の準決勝で藤井少年が伊藤少年と対戦し、負けて号泣したことが話題になっています。両者3年生でした。

さて、書きたかったのはここからです(前振りが長すぎて申し訳ありません)。

私は今から約10年前、今回の竜王戦挑戦者の伊藤匠さんをテレビで見て憶えています。自分が将棋好きな事もあり、非常に印象的でした。

そのころ、NHKのEテレで『カラフル』というドキュメンタリーシリーズがありました。
毎週(だったと思う)何かに打ち込む子供を取材して、その『一所懸命な姿勢』や、時にうまくいかずに悩んだりする様子、そして、周りのオトナたちの応援や気遣いを描くのです。

知人がこの『カラフル』で武道に打ち込む小学生を取材して番組制作を担当した、という話を聞いて、その回だけではなく、前後の番組も観たのです。

そのひとつが、将棋に打ち込む少年でした。
当時小学校4年生の少年は、将棋が大好きで、一日中でも指していられる、と言っていました。
彼の名前『伊藤匠』は憶えていたので、知人に尋ねると、
「『カラフル』は過去分もNHKのホームページから今も観られるよ」
とのこと。

久しぶりに見てみました:

5歳の時から将棋を始めた。将来の夢はプロの将棋士。しかし将棋クラブの先生からは「ヘボ」と怒られる毎日。プロへの道は甘くない。

カラフル「もっと強くなるために」副題

師匠の宮田7段(当時)は、見込みがあるからでしょうが、彼を厳しく鍛えます。
伊藤少年がそれをわかっていて、
「厳しい方がいい」
と言います。
本人の夢は既に、
「将棋のプロになってタイトルを取ること」

お父さんも多忙な中、将棋の本など買って帰り、伊藤少年を応援しています。

10年ぶりにこの映像を見て、思いました:
うーん。竜王戦の第1局は完敗だったけど、第2局以降、藤井さんに全力で挑んで欲しい、できれば夢を実現して欲しい(その結果、藤井さんは7冠に戻ってしまうけれど)。

さらに、子供時代の夢を実現させようとする人、実現させた人はもちろん素晴らしいけれど、近くで応援し続けた人、夢が実現するように育てた人は、もっと素晴らしい。

もちろん、そんな人たちは、夢を実現させた人を誇りに思っていい、と思います。
そんな人たちは、『瀬戸の』とか『日本人として』とは言わないよね。

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