《お得感》というプラス価値
駅に設置されたロッカー型の自動販売機で、賞味期限内でありながら廃棄されるパンを約3割引で売り出したところ、大人気、という記事です:
パン屋さんはたいてい、普通に売れる以上のパンを製造するんだそうですね。でないと、途中から売り場が歯抜けのようになって見栄えがよくないのだとか。
従って、閉店が近づくと値引き販売する店もあります。
こうしたパン屋さんが、このロッカー型自販機に賞味期限内の売れ残りを持ち込んで値引き販売をすると、連日完売だそうです。
この『複雑な心境』ってホントでしょうか?
「パン屋さんたち、『こんなに売れるなら、自分の店で定価で買って欲しいのに……』と思っているに違いない!」
……と、記者が勝手に想像しているんじゃないの?
だって、このパン自販機、
① 便利な地下鉄駅の中にあって、
② 3割引だから、飛ぶように売れるのであって、
定価で店に置いておいても売れない可能性が高いから、ここに持ってきている ── パン屋さんもよくわかっているはず。
この種の『書式』を使う記事って多いですよね。
『困惑』なんて言葉もやたら使われます。
── それはともかく、
この『3割引』というところが当然重要で、この企画の本来の(?)趣旨であるSDGsより、そちらで売れています。
パンを食べたい人はもちろんですが、食べたくない人 ── 例えば、既にその日の献立は決めており、朝食だってパンは食べない ── なんて人も買ったりするんじゃないかな。
つまり、
──『3割引』販売の『お得な商品』を逃したくない。
単に欲しいものが安く買える、という『実利』以外に、この《お得感》というプラス価値が《幸福感》と結びついているのではないでしょうか?
拙宅近くの大手スーパーでは、全商品が『20% OFF』だったり、『30% OFF』だったり、時には『冬物全て半額』など貼り紙のある女性服店が駐車場から建物に入ってすぐの場所に陣取っており、おそらくは食料品を買いに来ただけの女性客がまんまとトラップされている。
(ほとんどの商品が割引販売だったら、『定価』の意味って一体なんだろう?)
と頭をひねるのですが……
その店はやはり、
《お得感》をプラスして《幸福感》をもたらしている!
のでしょう。
通販などで
── XX円のものが今だけYY円になるのだから、
「買わなきゃ損!」
なんてフレーズはまさにその裏返しで、
《買わなければ損をする》などということはあり得ないにもかかわらず、その言葉に釣られて購入手続きをすることで一時的な《幸福感》がもたらされるのでしょう。
……後から不要なモノを買ってしまった、と幸福が後悔に変わったりもしますが。
子供の頃によく買った、
『グリコのおまけ』
なんてのもそうですよね。
『おまけ』といいつつ、小さなプラスチック製のおもちゃもキャラメルのコストに上乗せされているのは明らか ── にもかかわらず、
『おまけ』といわれると『タダ』でもらったように錯覚し、《幸福感》を感じてしまう。
私の住む名古屋はこの『おまけ』に弱い人がやたらと多く、亡父などは、展示会などにわざわざ出かけて『粗品』をもらうのを楽しみにしていました。
(それ、ホントに欲しい? ゴミになるだけじゃないの?)
と首を傾げるのですが、『タダでモノをもらった』ことに《幸福感》を感じるようでした。
おそらくそうした風土と関係していると思うのですが、かつて、名古屋の喫茶店でコーヒーや紅茶を注文すると、必ず小皿にピーナツやビスケットがいくらか載ってついてきたものです。
── おつまみ、というわけで、これも『おまけ』です。
コーヒーを頼んでコーヒーしか出てこないと、
「この店、おつまみ付けてこんがね」
「ケチだねえ」
とオジサンオバサン、ささやいていました。
朝食をタダでコーヒーに付ける『モーニングサービス』もこの『おまけ』制度の拡大版だったのでしょう。
タダのサービスについて書いたところ:
ぺれぴちさんから、なるほどのコメントをいただきました:
そうなんです。全て最終価格に含まれているはずなんです。
………まあでも、『割引/タダ/おまけ』の《お得感》に《幸福感》を誘発されてしまうんですよね~。
桐谷八段のおススメで広く一般に知られるようになった『株式優待』も、コストになるだけだから取り止めて『配当』に回せ、と海外の機関投資家は大反対しているそうですが、やはり、国内の一般投資家にとってはあの《お得感》がたまらないのでしょうね。
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