どれも全巻ないあなたの家で
小綺麗にしている部屋を見て、僕が来るからと掃除をしたわけではないことを思った。生活感のある、居心地のいい綺麗な部屋だ。
「なにか飲む?」
既に冷蔵庫の麦茶を手に取ろうとしている彼女に、お茶で、と一言伝えた。この先この2人は、彼女を先頭に物語が進んでいくのだなと感じた。少し呆れたように苦笑いした。それを他人事のようにただ俯瞰して考える僕も、それを望んでいるのかもしれない。また少し呆れて、一人で小さく笑った。台所でプシュという音が聞こえた。
二ヶ月が経って今日、僕は初めて彼