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【レビュー】映画「カメラを止めるな!」はクリエイター魂を揺さぶるか【ネタバレあり】

話題の映画、「カメラを止めるな!」を観てきました。

私は、前情報ほぼ無しで行ったので、まだご覧になっていない方にはこれから書くネタバレも是非全く観ずに劇場に足をお運び頂きたいと、強くお勧めします。

私は映像作品に関わった事はありませんが、演劇時代に舞台経験があり、役者、照明班として活動していた経験があります。それを踏まえ、個人的に思った事等を綴って行きたいと思います。

【あらすじ】(ネタバレあり!!!)



(先をお読みになりたくない方はここで引き返して下さい)


とある廃墟で自主制作ゾンビ映画を撮っている一行。「本物」を求める監督の意向に女優がなかなか添えず、テイクは42となっていた。

らちが明かず休憩となるが、俳優こうちゃんと女優なつきは、スタッフのなおからロケ場所に使われている廃墟についての恐ろしい「いわく」を聞いてしまう。

その内本物のゾンビに襲われるようになるこうちゃん、なつき、なお達。監督は「これこそ本物だ!」「カメラは止めない!」と常軌を逸した様子で撮影を続ける。

ついにゾンビと化したこうちゃんを、なつきは斧でころしてしまう。廃墟の屋上、「血の呪文」の印の前で空を見据えるように見上げるなつきであった……。

しかしこれは実は、生中継、ワンカットで作られたゾンビ映像であった。

一か月前、「ゾンビもの、ワンカット、生中継」と言う有り得ない企画のオファーを受け、それに向けて奔走するちょっと冴えない監督の姿があった。娘も監督志望、主演女優は軽いノリのアイドル、主演俳優は口答えばかり、助監督役は気弱、音声役はお腹が弱い、アルコールが手放せない細田など、凸凹のメンバー達がどうやってあの「ゾンビ映像」を作り上げるに至ったのか。

後半では、その「答え合わせ」、「ネタ晴らし」となり、苦労を乗り越えて番組を全うした全員の汗まみれの努力が展開されて行く……。


【感想】

まず私はホラー映画をあまり見ないので、ゾンビが出てきた時点でちょっと幻滅してしまいました。しかも、予定調和満載の演技。所謂「B級ホラー」ってこんな感じなのかな、と思いながら「これはコメディーなのだな」と感じ、仕方なく付き合うかと言う感じでゾンビ映像を眺めました。
(浄水場、旧日本軍の話が出たあたり)

その前の、全員で階段を上がる辺りから
「あれ、これワンカットだな」
と気づきました。それなら私がやって来た舞台演劇と通ずる部分があると思ったので少し興味も持ちました。

「予定調和」と言いましたが、どのあたりがそうかと言うと、

*なつきが怖がりながら自分の後ろの壁を見つつ斧を構える演技
*ゾンビが時に暴れたり、時にそろりそろりとなつきにせまる辺り、「都合の良い演出」と感じた
*「同じ空気の連続」が中だるみに感じた

等の点からそのように思ってしまいました。

「B級ホラー映画は殆どコメディーとして楽しむものだ」

と言う友人が居たので何とか対処できましたが、前半のクオリティ―はもう少し何とかならなかったのでしょうか。

監督のキャッチフレーズが

「速い、うまい、出来は……そこそこ(笑)」

でしたっけ、最後の「出来はそこそこ」の伏線を回収しているとも言えますが、私はそれが前提になっている事に未だ納得していません。

劇中劇「ONE CUT OF THE DEAD」の監督役となお役が打ち合わせと違う事に途中で気がつきました。その理由は、(見進めて「後半はメイキングなんだ」と分かっていた段階で)何かしら提示されるのだろうと思っていましたが、二人が乗った車が事故で来られない、仕方なく二人の代役を立てる、と言う展開でしたね。

これも、もう少し「あっと驚く工夫」があったらと思います。

例えば、現場リハの途中で「ゾンビ映画を撮っていたら本当にゾンビが出てきた流れの映像」を撮っていたら、本当にゾンビでない何者かの心霊現象に二人がダウンしてしまったとか。

血のりが、「ONE CUT~」中の「役」と「本物のゾンビにやられて出た本物の血」の区別があまり無かったのも気になります。些細な事と言われるかもしれませんが、血のりに余り変化が無かった事で、「あ、これ”そう言う体(てい)”の映像を作っている所だな」と途中で分かってしまい、冷めました。

全てにおいて、「出来はそこそこ」に「逃げ」て欲しくなかったです。


ただ、此処まで酷く書いてしまいましたが興味深いと言う意味で面白かったのは事実です。

舞台の演劇では、一度幕が上がったら何があろうと途中では止められません。外科手術と同じです。演者もスタッフも、一丸となってカーテンコールまで何としてでも全うしようとします。

そのドキドキを思い出し、「また演劇に関わってみたいな」と思える作品でした。

事実、
「舞台袖は一番の観客席である」
と言う言葉もあります。お芝居を作っている側が、舞台袖に控えているスタッフが、演者が、実は一番楽しいのです。

一度でも演劇や映像に関わった事のある方なら、それは理解して頂けると思います。

でも、「リメイクまで作品として見せる」演劇は他にもあります。私も知り合いの劇団さんで観た事があります。それは、劇団の中に一人「人形劇をやりたい」と言う役者が居て、伏線回収で本番の舞台ではトラブルの起きた役者を舞台上で人形のように操る、と言うお話でした。

普段演劇や映像作品をに関わらない、作った事が無いと言う方には、「こんなに面白い作業なんだよ」と教えたくなるような作品でした。

また、助監督役の市原洋さん、音声役の山崎俊太郎さん、細井学役の細井学さん(当て書きなのでお名前が役名なのですね)の演技には特に惹かれましたので、今後ますますのご活躍を楽しみにしております。

監督の「顔顔、顔ー!!」の演技は熱が入っていましたし、アドリブの「お前顔合わせの時から口答えばっかりしやがって!」と言う咄嗟の演技は、「答え合わせ」があると成る程なと笑えますね。監督してやったり、言いたい事言えて良かったではありませんか。

最終的には「努力」「達成感」「青春っぽい」爽やかさが鑑賞後残ります。

ここで終わったのは本当に勿体なくて、「一ヶ月後はどうなったの?」「本当にそれで終わったの?」と続きが気になりました。まあ、それは野暮と言うものかもしれませんが、全体的にコメディーにしたいのか怖がらせたいのか、もう一度どんでん返しがあると決定的に良くなったと思います。


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お読み頂きありがとうございました。普段の活動は、「写真詩作家」です。ブログ上で、写真に詩を添えた作品を発表しております。

詳細プロフィールなど、詳しくは下記リンクをご参照下さい。

正直に申し上げて、今現在演劇や映像に関われていない私個人のジェラシーから辛口評価になってしまったかもしれませんが、これからも映画を撮る方々には情熱を持って頑張って欲しいと思います。


それでは、またお会いしましょう!

ありがとうございました!


 




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