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左手に金の滝が打つ 5

第1話

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「宏人。最近の調子はどうだい?」

散歩中の犬に話しかけるような乾いた優しい声が聞こえる。

「はい。調子はいつも通りです。頼んでいた本は今日届いて早速読ませてもらいました。日本語訳のものだと意訳されていて本来の意味と異なるものが多いので、とても役に立ちました」

私はパソコンの中にいるスーツ姿の老人に深く頭を下げた。

「そうかそうか。君は才能に溢れているのだから遠慮なく言ってくれ。金はいくらでも準備できるのだから」

「ありがとうございます。私も制限されることなく学びができるようになったことに幸せを感じています」

老人はまた嬉しそうに頬を持ち上げていた。私は言葉を選びながらも本心を伝えることができていたので淀みはない。

際限なく知識を深め、広げられることは私にとって幸せ以外の何物でもないのだから。

「ああ、そうだそうだ…」

老人は、父親は、何かを思い出し、また話し始めた。

三ヶ月前と同じで会社人事の手伝いか海外出張の付き添いかと気だるい溜息が漏れてしまいそうになるのを寸前でこらえた。

次話

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