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機械仕掛けのコウノトリ 41

第1話

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 夕食を食べ終えた後、自分の部屋に戻ろうとする宏人を制止して、またテーブルに着かせた。和人はいつもと違う私の落ち着いた表情に黒目を迷走させる。

「来週からお母さんも出張に行くことになったの。だから、少しの間、他のお母さんと同じように親が出張した子たちと一緒に暮らすことになるからね」

宏人は表情を変えずに私の目を見ていた。和人も私の目を見ていたが、すぐに口が動いた。

「少しの間ってどれくらいなの?」

和人の不安に揺れる声が胸を突く。しかし、突いたのは和人ではなく、自分自身であり、親としての当たり前をできない苦しさが言葉に詰まらせる。

それでも、私には親として伝えることが、この手足をもがれた中でできることだと食いしばった。

「本当に少しの間だよ。そんなに長くない出張だから。それまで和人は良い子でいてくれるよね?」

和人の無邪気に頷いて、また顔を上げる。不安の消えない和人の表情を、どこかで成長のためだと言い聞かせる自分がいた。

そんなずるい私の言葉でさえ、和人は信じて受け取り、真珠のように光る瞳のままで私を見続けていた。

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