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四角形ばかりが目につくようになると、東京に帰ってきたと実感する。 緑色から灰色の世界に…
自分の席に帰る途中、同僚に引きとめられた。 どうやら私が院長に呼び出されているらしい。…
「君には今日から入院する樺澤麗華さんの担当をしてほしい」 院長は背もたれに体を預けるとそ…
「どうして私が担当になったのでしょう?それほどの患者さんなら私よりも谷崎さんや江藤さんの…
家でつけっぱなしにしていたテレビからは「樺澤麗華緊急入院」と銘打ち、特集が組まれていた…
「ねえ、先生。先生は当たりなんですか?それとも外れなんですか?」 自由な難解で質問に、…
彼女が入院すると多くの人が見舞いに来た。 私は患者のプライベートに介入することを避けたかったし、実際、今まではデリケートな患者も多かった。 そのため、私の対応は無難で当たり障りないことを心がけた。 しかし、あまりにも見舞客が多い場合、それは患者にとっても負担でしかない。 そういった時、医者である私がどこかで制御しなくてはならないこともある。他に仕事もないのだから、脳の隙間を埋めるようにその意識は強くなる。 私が病室に入ると椅子に座った女性がこちらに振り向いた。
「できません。それで体調が悪化したなら、樺澤さんの身に何かある前に私の首が飛んでしまいま…
「確かに僕には女性を見る目はないでしょう。よかったら今後の女性選びの参考のために彼女につ…
「何がですか?」 私は彼女に合わせた。そういうセリフが用意されているものだと、私は元から…
「それは失礼しました。てっきり気分屋な女優さんなのかと思っていました。おしゃべりで悪戯好…
「先生はそんな小咄もできるんですね。驚きました。でも今回はこうして伝説の花が自分の足で玄…
秋の初め、新しいドラマが始まりだす頃、テレビで「樺澤麗華」の名前を見ることはなくなった…
病室のドアを二度ノックすると、すぐに「どうぞ」という声が聞こえた。 私は静かにドアを開ける。彼女は私に顔を向けて微笑んだ。 「あら、先生。もうそんな時間なんですね」 私はベッドの横に椅子を置いて座った。乾いた冷たい風がレースのカーテンを膨らませて揺らしていた。 「はい。問診の時間です。最近寒くなってきましたから。ずっと窓を開けておくのは控えてくださいね」 私はそう言うとすぐに問診を始めた。内容は何も変わらない。そして、彼女の答えも変わらない。 「先生に心配しても