シェア
うちばやししゅん
2020年6月27日 11:49
海外で調査をしていくなかで、イギリスでは何度か苦いおもいをしたことがある。あるときは最悪といっていい調査旅行だった。 パリ北駅からユーロスターに乗ってロンドンはセント・パンクラス駅にむかう。北駅1階(日本でいう2階)で出国すると、そのすぐ先にイギリスのイミグレーションがある(つまり、パリのユーロスターのホームはイギリス)。 入国管理官に「なんのための渡航か?」と聞かれる。「研究活動だ」
2020年6月5日 00:49
本の佇まいに直結する装丁を見ていくのも、稀書を収集する上でのたのしみだ。19世紀のなかばのフランスとイギリスを例にとって比べてみると、フランスではほとんどが革装丁またはコーナーと背だけ革の半革装がおおい。 というのも、フランスでは本はカルトナージュと言われる暫定的なペーパーバックとして売られ、購入者は自分でルリユール(装丁家)のところにもっていって装丁をしてもらう。つまり、おなじ本でもおなじ
2020年5月17日 00:53
本書『開明奇談写真之仇討』は、写真史研究の泰斗・小沢健志さんによれば日本で最初の写真を題材にした小説だという。 奥付に「五明楼玉輔 口演」とあるように、もともとは落語の演目として成立したようだ。「聴き比べ落語名作選」のサイトの解題によると、明治19年に玉輔によって全40段が20回にわたって口演されたとあるが、国立国会図書館の蔵書検索システム「NDL online」によれば滑稽堂版は明治16〜
2020年5月11日 23:01
大学院のとき、同じ美術史ゼミの仲間と集中的に川柳や都々逸について調べたことがある。「サラリーマン川柳」やペットボトルのお茶のラベルのそれのように、川柳や都々逸は元来そのときどきの世相や流行りものを反映している。(*川柳は五・七・五で都々逸は七・七・七・五。後者は笑点などのお題としておなじみだ) なにを隠そう、明治時代はは写真もその立派な題材で、『明治文化全集』などを中心にあさっただけでも、"
2020年5月9日 21:35
フランスでは1855年以来、1867年、1878年、1889年、1900年と、19世紀後半におよそ12年周期で5回の万博が開かれた。1889年にはエッフェル塔が登場し、1900年はもっとも規模も大きく華やかな万博だった。 1851年に初めてロンドンで万博が開かれたとき、それは産業革命の成果を世界に誇示する文字どおりの産業フェアだったが、これにしてやられたと感じたフランス皇帝ナポレオン3世は、
2020年5月4日 01:12
数年前、出講先の大学のレターケースに、おつきあいのない古書店から封書が届いたことがあった。中をあけると、手書きの在庫目録。ちょっと不気味だなと思いながら目を通すと、探していた本が(!) なんでも一見さんお断りでアポイント制だという。講義を終えて即、午後見に行きたいと連絡を入れ、ソッコーで退勤。なんでも写真専門の書店というわけではないが、それなりに取り扱いがあり、おもしろそうなので目録を作って
2020年5月1日 21:25
写真に撮られると魂が抜ける。親指が腫れる。三人で写るとまんなかの人が死ぬ。影が薄くなる。どれも写真にまつわる有名な迷信だ。僕は、これらのほとんどは写真技術から読み解けるとかんがえている。 しかし、こうした迷信、我が国だけではない。たとえば中国では鏡に映った姿を撮ってはいけない、妊婦を撮ってはいけないという迷信もあったようだ。どれも「魂が抜ける」に通ずる気配がある。いったい、いつからこんな迷信