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彼は誰時君を想う

   エーリュシオン駅のカラフルな美しい光が降り注ぐ駅の待合室。ホームから人々が笑みを浮かべて改札口へと向かう。不安そうに待合室を進む清河ルナ(28)に通りかかる立花幹生(52)が話しかける。
立花『ようこそ、エーリュシオンへ。ここは美しい花々が咲き乱れる、太陽が沈まない村なんですよ。どうしてここへ?』
ルナ『とても優しい人々が陽気に歌い踊る楽園の様な所と聞いて!私、自分自身のために幸せになりたいんです』
立花『人は誰しも幸せになりたいという欲求をもっている。それはごくごく当たり前の欲求で自然なものですよ。自分だけが幸せを独占できる世界、自分だけが満たされる世界があるとしたら素敵でしょ』
ルナ『私だけが幸せになろうとすることに、何の意味があるんでしょうか?』
立花『自分自身の未来のために、人生の目的の種を植えてるのでしょう』
ルカ『私の行動は、一見相手のためだけのようであっても、それは今の自分だけのためであり、また未来の自分ためだったのかも』
立花『目の前の世界は、心の持ちようでいくらでも変えられます。貴方が幸せだと思えば、目の前の世界は瞬時にそのようになるでしょう』
ルカ『でも私は、目の前にある幸せがはかないものと心の底では気づいてたかもしれません。何を得ても、心からの安心も満足も感じられなかった』
立花『感情に揺れ動いて一喜一憂する自分を見つけると、自己嫌悪やむず痒さを感じ、妄想、トラウマ、不安、恐怖、それは想像を絶する悪夢の始まりになるのです』
   x x x
   ルナが改札口前で立ち止まる。
ルナ『喜んだり、悲しんだり、興奮したり、怒ったり。これらの感情ひとつひとつが私の生きる世界を豊かにしているのだと信じます。楽しくて、悲しくて、面白くて、やりきれない。そんな世界は美しくて、ときには残酷で、そして素晴らしいものだと思う』


   電車の中、ルナのうつむく横顔、涙が溢れている。ルナが乗っている車両が動き出す。
ルナ『今になって あなたの気持ち。初めて分かる。 痛いほど。
私だけ 愛してたことも』


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