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J3 第22節 レビュー【福島ユナイテッドFC vs 鹿児島ユナイテッドFC】通りたいルートは?

2021.10.10 J3 第22節
福島ユナイテッドFC vs 鹿児島ユナイテッドFC

こんにちは。
今回もご覧いただきありがとうございます。

今回のお相手は福島。
最近は調子を落としていますが、戦術が論理的で、理に適ったサッカーをするチームです。

詳しく見れてないのですが、前節は富山に1-3の敗戦。
福島が調子を落としているといえど、富山は完勝しちゃうんですよね。凄い。

今回も福島のやりたかったこと、鹿児島の対応、鹿児島が出来たことなど、それぞれ見ていこうと思います。

ご笑覧ください。

スターティングメンバ―

TACTICALista_2021A福島戦スタメン

まずは鹿児島から。
萱沼と三宅がスタメン復帰を果たしました。

上野体制になってから、萱沼は求めるCFのタイプに当てはまらないのかなと思っていましたが、調子を上げてきたとのことでスタメン復帰。

福島としても、途中からならともかく、先発は予想外だったのではないでしょうか。

三宅については、後ほど。

続いて福島。
前節からは29番吉永→18番橋本、17番延→4番宇佐美、40番樋口→49番サイモンと3人を変更。

サイモンは移籍後、初出場となりましたが、まだまだフィットには時間が掛かりそうでしたね。時崎監督も同じようなコメントを残していました。

(時崎監督コメント書き起こし)
---サイモン選手を初めて使ったが、彼に対する期待と評価は?

来て合流期間も短くて、その中で彼が選手からの信頼・スタッフからの信頼というところを掴み、今日ピッチに送り出しましたけども、当然年間通してプレシーズンから今日に至るまで積み上げてる選手達と来てまだ時間が無いというところで、戦術の理解度だとか、ゲーム感だとか足りない部分はあったと思います。

今後、ゲームを経験していくことでイスマイラのように脅威的な選手になるポテンシャルは感じましたが、今節に限れば、保持・非保持共に効果は薄かったと見ています。

また、4番宇佐美が帰ってきたのも厄介でしたね。
一つ一つのポジショニングを取っても意図を感じ、悩ましい選択肢を迫られる場面が多く見られました。

そして、今節のフォーメーションは4-2-3-1を採用。
その意図は非保持で発揮されていたと思います。

前半

意図した福島の非保持

ミラーゲームにすることで、前線から噛み合わせて嵌め込んできました。

TACTICALista_2021A福島戦守備

具体的な現象としては、

・2トップが鹿児島CBを内側からプレス。49番サイモンは10番トカチと比べ、強度は低い。またGKまでは前進せず、CBからプレッシングを始める。

・噛み合わさるDHはそのまま前方まで追う。八反田の列落としには付いていくが、最終ラインに吸収されると放置。

・鹿児島CBが持った時、SHは鹿児島SHへのパスコースを背中で消す。構造上、SHは上図のような立ち位置になる。そのため、鹿児島SBにボールが出るとSHがチェックするが、内切りが多くなる。

・最終ラインも数的同数で待ち構える。

といったところでしょうか。
オールコートマンツーマンと言えばそうですが、SHの立ち位置・プレーの順序を見ると、チームとしてSBに誘導してボールを奪いたい意図が感じられました。

鹿児島としては、実際にそこで息詰まる場面も多く見られたので、上手く嵌められていた思惑だったと思います。

ただ、そこで奪い切る強度・その後のトランジションについては今ひとつな部分もあり、ロストから最悪なパターンに陥ることはありませんでした。

しかし、福島の入念なスカウティングと実行能力を見せつけられた序盤と言って良いと思います。

SHは強みとしているか?

とはいえ、鹿児島としてはそれで終わるわけにはいきません。それを踏まえて、有効な活路を見出したいところです。

が、チームとしての具体的かつ有効な前進ルートは見えてきません。特に三宅はその脈略の中で自らの強みを活かしにくい局面に立たされます。

ビルドアップにてCB→SBに誘導された後、立ち位置上内切りしてくる福島SHの外側を回って、フォゲッチ→落ちてきた後ろ向きの三宅に、という場面が頻発していました。

前向きで仕掛けることに強みのある彼が、後ろ向きで受けても脅威にならないどころか、4番宇佐美に後ろからチェックされ、潰しどころになっていたと思います。

勿論、福島の狙いがハマった要因はありますが、前向きの推進力を活かしたいSHが落ちてくることに戦術的な優位性はあったのでしょうか。

ふらふら〜っとポジションを彷徨う癖のある三宅の独断だったかもしれませんし、パパス体制ほどSHの質に依拠しないという表れかも、単に対プレッシングの解答案が無かったのかもしれません。

いずれにせよ、米澤・三宅というアタッカー2人をSH起用した采配と見比べると、疑問符を付けたい場面でした。

外から見た感覚だと、「エリートリーグで三宅キレッキレやん!よっしゃ、使ったろ!」に見えるんですよね。

それも大事ですが、その質をどうやって活かすのか?に対するビジョンが無いとどうしようも無いです。

やりたいことは出来ていたのか、そもそもやりたいことは何なのかについてもう少し見て判断して良いかもしれません。

改善策・SHの質を活かす

萱沼使ったんならこうして欲しかったぜ!の案です。

TACTICALista_2021A福島戦改善策

まず前提として福島は序盤、八反田の列落としへの対応が怪しかったです。とはいえ10分頃に、八反田が最終ラインまで吸収されると放置する方向にシフトはしましたが。

そうして放置するため、上図のように福島DHは中原と秋山を見るような縦関係になることも多く見られました。

そこで、萱沼の偽9番の仕組みが上手くハマるのではないかという配置になっていたと思います。

三宅・米澤がハーフスペースへのフリーランを匂わせることで福島DFライン4枚をピン留め。少し落ちた萱沼が晴れてフリーになる構造ですね。

実際にそれらしい場面も、23分・31分頃には見られました。その場面では、SHが前向きの状態でボールを供給でき、三宅のドリブルを活かせるような場面でもありました。

萱沼も序盤は、今日に限って最前線で我慢してるんじゃ…?と思ったんですが、徐々に我慢出来ずに降りてきましたね。結果オーライ。

でも、我慢している様子は見られましたし、三宅を見ても、エリートリーグに続き良い状態でボールを受けられた時は、質の高さを示しました。良い意味で「誰でも良い」状態にはなってきていると思います。

また前半終盤には、インサイド表を使えるフォゲッチ・中を向きやすい衛藤が、中原や秋山経由してオープンなSHに入れられるなど、3人目を使った前進も出てきました。このパターンが1番高頻度で前進出来ていたかもしれません。

それらがピッチ上の機転で行われていたのか、監督から指示があったのか断定は出来ません。が、多分前者。

やっぱり上野監督、詳細についてのコメント欲しいなぁ…

後半

福島の明確な3バック化

3バック化は前半終盤にも見え始めていました。
下図は、前半にDHの41番上畑が列を落としたパターン。

さらに左SBの4番宇佐美がDHの位置に入って、24番鎌田大と共に八反田・中原をピン留めします。

TACTICALista_2021A福島戦3バック

このことで、鹿児島のプレス基準をズラし、2番鎌田翔をフリーにしたり、フリーマン化したトカチがビルドアップの出口になったりと前進のパターンが増えてきていました。

後半に入ってからは2番鎌田を上げて、DFライン3枚で3バック化が多かったです。これもプレス基準がズラせたり、4番宇佐美が最終ラインにいることで運べる・楔を打てるといったメリットを享受していました。

正直この方が嫌だったので、3バックで来るかなと思っていたのですが、プレッシングを優先してミラーゲームでしたね。いずれにせよハメさせてしまったのは反省です。

60分の交代

嫌な時間帯になるなぁと踏んでいた60分。
福島が18番橋本→9番森、4番宇佐美→29番吉永と交代しました。

この交代により、29番吉永を右SBに、2番鎌田翔を左SBに持ってきて、4-4-2の陣形からSBを積極的に押し上げるやり方に変えてきます。

ここから鹿児島にとっては楽になったと思います。

SBを大外から押し上げる代わりに、中に絞るSH。それは良いのですが、最前線が中央密集するため、鹿児島としては中央を締めときゃ良いよね!という時間帯になりました。

また、福島はトランジションを見ても、取るべき立ち位置・走るべきスペースを占有できない様子もありました。

押し込まれてはいれど、やるべき守備の形は分かりやすく、また完遂出来た時間帯だったかなと思っています。

終盤のオープン

そして時計の針は、75〜80分に移行していきます。
足が止まってきた両者はオープンな殴り合い体制に入りました。

60分過ぎとは打って変わって、どちらに転ぶか分からない展開。

試合を締め方としてはよろしくありませんが、広いスペースで相手を往なすことについては質の高い鹿児島の選手たち。多くのチャンスを作ることも出来ました。

特に9番森が最前線までプレスするため、晒されることが多くなった29番吉永の裏は頻繁に取れました。ちょっと可哀想。

ただ両者あまり再現性は無く、どちらに転ぶか。という展開の中で決め切ったのは福島。

得点を挙げた10番トカチは、前半から自分でどうにかしようとしすぎなシーンも多く助かっていましたが、遂に3本目の決死シュートで沈みました。

あとがき

トカチの一撃に勝ち点を取りこぼしたとも、序盤の出来を考えるとよく対応したとも言える試合でした。

ただ個々の機転はあれど、チーム全体の挙動としては「?」が付くシーンも多く、ゴールまでの道筋がよく分からないとも感じます。

しかし、やはり上野監督としては「縦に速く」が1つキーワードになっているのかなぁと思います。

今後も注視していかないといけません。

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