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初回アポで終わってしまう営業の共通点

「資料だけ送っておいてください。検討してまたご連絡します」

アポの最後にそう言われたきり、次につながらなかった経験はありませんか。

B2B営業アドバイザーとしてスタートアップの初回アポを見ていると、上記のような「初回アポで終わってしまう営業」を多く見かけます。

どの営業も、顧客のことを念入りにリサーチして準備している。特に目立った粗相もない。にも関わらず、次につながらないのはなぜなのか。考えてみると、初回アポで終わる人は、共通して「ある行動」をしていることがわかりました。

自社プロダクトに自信があるし、顧客の役に立ちたい情熱もある。顧客のことはちゃんと調べて準備しているにも関わらず音信不通になってしまったりこちらから連絡しても塩対応されてしまう営業の方々の一助になれば幸いです。

事前に準備したとおりに語ろうとしてしまう

早速ですが、結論をお伝えします。
初回アポだけで終わる営業に共通することの1つは事前に準備したとおりに語ろうとしてしまうこと」です。

どういうことか。
営業のみなさん、そもそも初回アポの目的って何だと思いますか?

自社を知ってもらうこと?
プロダクトの魅力を伝えること?

特にアウトバウンド(売り手からアプローチをしてアポイントを設定する活動)においては、初回アポというのは商談、つまり商売のはなし(談)ではありません。売り手と買い手が存在する場において、商談(商売のはなし)とは双方が商売の話をしている状態を指しますから、売り手だけが「商売のはなしだ」と思うだけでは商談とは呼べません。

ということは、初回アポは「面談」と捉えるべきです。そうなると、面談の目的は何でしょうか?

それは、商談に進むことの合意形成をすることです。
1 - そのために必要なのは買い手から見た時に「この業務領域に投資をして改善をする必要がある」と合理的に理解してもらうことです。
2 - そのために必要なのは、買い手が解決すべき課題を営業との会話によって整理することです。
3 - そしてそのために必要なのは買い手が営業から発せられるコミュニケーションを真面目に受け止めて思考することです。
4 - そしてそのために必要なのは買い手がその営業を信用し、信頼することです。

つまり、初回アポ、つまり初回面談においては、上記の4点を実施する必要があると整理できます。

営業活動というものは、「あなた誰?」と訝しむ感情を持たれた状態からスタートします。つまりマイナススタートです。特にアウトバウンドの営業ではなおのこと。買い手に「この営業の言うことを信じよう」と思ってもらえないと、買うか買わないかの話以前に、買い手が困っていることや解決したいと思っていることを話してもらえません。
なので、初回アポでは「買い手からの信頼の獲得」に時間を割く必要があるわけです。(詳しくは以下の記事をぜひお読みください)

しかし、初回アポで終わってしまう営業の多くは、顧客からの信頼をすっ飛ばして、自分が事前に準備したとおりに語ってしまいがちです。せっかく準備して気合い入れて臨んでますからね。
初回アポでは、主に以下のようなことをしてしまう人が多いです。

・アポ開始後、さらっと自己紹介して、資料を投影もしくは画面共有し、すぐに資料に書いてある会社概要やサービス概要を話し始める
・売り物の話に繋げるための「みなさんコレ課題だそうです。御社はいかがですか?」というなんちゃって課題解決型営業をし始める

・突如不自然にあらかじめ用意したヒアリング項目を質問する

これは一言で言うと聞きたいことを聞き、伝えたいことを伝える一方的なコミュニケーションであり、「会話する」という意識が抜け落ちた振る舞いと言えます。

「売り込んでくるんだろうな」と訝しんでいる状態である買い手に対し、まともに「会話」もせず一方的に話し不自然な質問をする営業と胸襟を開いてコミュニケーションをしようと思うでしょうか。
半ばスピーチロボットと化した営業は聞かれてもないのに見積りの話をし、「いかがでしょうか」とうかがう。とは言え買い手も大人です。あからさまに不快な表現はしません。打ち合わせを終了する目的で「社内で関係者と検討してみますので資料をいただけますか」と営業に伝える。そして営業は「よろしくお願いします!」と返事をする。

初回アポがうまくいかない人は、こうした行動をとっているケースが少なくありません。スピーチロボット状態になり買い手と会話できない営業は「説明動画を渡せば済む」程度の営業活動を行っているとも言えます。

なぜ事前準備とおりにしか進められないのか

原因は多岐に渡りますが、主に代表的なものを2つ紹介します。

1. 会話よりも準備どおりに話すことを選んでしまう

1つ目は、会話よりも準備どおりに話すことを選んでしまう「意識」の問題です。

初回アポの場合、買い手がどんな人なのかわかりません。事前準備をしようにも多くは想像に頼らざるを得ません。そうなると、会話をしながら「この人にとって自分がどう役に立てるのだろうか」をその場で考える必要があります。

例えば「今、強めの言葉をお使いでしたが、問題意識が強い部分ですか?」というように、相手の言葉の雰囲気やトーンを観察し、どのあたりに関心がある人なのかを会話しながら把握していくことが求められます。

以下のnoteで詳しく書いているので、あわせて読んでくださいね。

相手のことがよくわからない上にわかろうとしないと、相手に焦点を当てた会話をすることはできません。結果として「準備してきたとおりに話す」という行動をとってしまっているのではないでしょうか。その結果、用意した資料に沿って「説明」をする独演会に走ってしまうのだと捉えています。

特にプロダクトが好きで入社した場合は「うちのプロダクトがあれば、この人たちの不を改善できる」と気持ちが強く入ります。あたかもプロダクトの導入自体が、顧客の変化を直接的に促すものだと思ってしまうのも、プロダクト説明を優先してしまう一因だと思います。(実際は、顧客の業務にプロダクトが浸透する=活用されることではじめて変化が起こりますからね)


2. 事前準備のサンクコストにとらわれてしまう

理由の2つ目が「せっかく準備したんだから伝えきろう」と考えてしまうサンクコストの問題です。

気持ちはわかりますが、事前準備の目的はあくまで顧客と会話するためのものであって、独演会(一方的に伝えること)をするためのものではないです。調べた情報をもとに、買い手が抱える問題点を設定し、その問題を構成する原因と課題を整理する。これを仮説として顧客と会話をし、問題解決に向けて何をすると良さそうなのか明らかにしていく。

病と同じで、問題という症状を持っている買い手は何が原因でその問題が起きているのかわからないから困っているわけで、その状態の相手に対して一方的に「腹痛によく効く薬はコレです」とアピールされても困るわけです。この腹痛の原因が何なのかわからないのに解決策提示されても、と。

仮説はあくまでも仮説であり、買い手が問題に向き合って解決に向けて思考するための呼び水でしかありません。話を聞く姿勢になってしまうと会話は成立しませんから、相手に問診をしながら原因を一緒に探求する。ここには多分にアドリブが求められます。

真剣に事前準備をして仮説を作れば作るほど、その仮説を「説明」したくなる。何故ならたくさんの時間と労力をかけて準備したから。この「サンクコスト」にとらわれると、準備どおりに喋りたくなってしまって「会話」をすることから離れていってしまうということは大事なポイントです。

では、改善するためにどうするべきでしょうか?

今すぐできる「事前準備とおり」から脱出する方法

たくさんの改善方法があるのですが、1つだけご紹介すると「資料のタイトルを見直す」です。ちょっとした工夫で改善できると思うので、騙されたと思ってやってみてください。

多くの営業資料でよく見るのですが、「**のご紹介」というケース。これをやめて「ミーティングの目的」をタイトルにします

例えば以下のようなタイトルです。

・〇〇業務のコスト効率〇〇%削減に向けた要件整理ミーティング
・〇〇の売上150%達成に向けた〇〇活用の可能性について

ご紹介、というタイトルでは「紹介してもらう」という受け身のスタンスを醸成してしまいます。紹介するだけならわざわざ営業が人としてアポに臨む必要はないです。紹介動画を送ればよいわけで。
営業は紹介をすることは目的ではないはず。初回アポにおいて、何を目的にすることが相手にとって好ましいミーティングになるのでしょうか。表紙は資料の顔です。相手に出した時に期待値調整が始まっていると考えてください。

そうなると、資料の構成も変わります。
紹介と書いた資料だと、文字通り会社と事業とプロダクトを「伝える」構成になってしまいます。アポの立て付けとして「サービス詳細を知りたいから教えて欲しい」という買い手のリクエストがある場合は、「サービスの主にどのあたりに比重を置いて説明をすることが**さんにとって良いのか理解してからご紹介させていただきたいのですが、差し支えなければ2,3伺ってもよろしいですか」とお断りを入れてからお相手のお仕事内容や責任範囲、掲げているゴール、業務における困りごと(上記で言う「症状=問題」)などを質問すれば良いです。

少し横にそれますが、問題には複数の原因が存在しており、その原因に紐づく形で課題が存在する。この構造はあらゆるビジネスにおいて共通しています。わかりやすく絵にすると以下の通りです。みなさんの解決策は複数の課題のうち1つを解決するに過ぎない、という前提に立つことが大事です。

この「問題-原因-課題-解決」の普遍的な構造を頭に入れておくと、自社のプロダクトをアピールすることがどれだけ相手からすると困惑するものなのかお分かりかと思います。
稀に、原因特定と整理ができており、紐づく課題もわかっている。ただ解決策が見当たらない、というケースにおいてはプロダクトを紹介だけすれば提案に向けて進むことができますが、それは買い手の能力に依存した営業活動、と言えます。これで契約できても営業活動が優れていたわけではないと言うことです。

資料を作るのであれば、まず表紙から。
全ての初回アポに対してゼロから資料を作る必要はありません。表紙と仮説(問題は何か、原因は何か、課題は何か)のページだけ相手に合わせて作れば良いです。
ものすごく大事なことですが、仮説については自社のプロダクトを売るための仮説ではなく、買い手の問題を解決するための仮説です。ここを間違えると仮説はただのセールストークになって、買い手はまたあなたと話したいとは思わなくなってしまうでしょう。

おわりに

本noteで書いた内容は、初回アポをアップデートしていくためのごく一部の考え方や改善策でしかありません。大事なのは「なぜ人として営業活動に介在しているのか」「買い手は営業と対峙したときにどういう状態なのか」「自社のプロダクトは買い手問題を構成するどの原因を解決するものなのか」という問いを常に持っておくこと。

これが成長に向けてとても大事なことです。


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