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営業が信頼関係を構築するために考えること&やること

日々営業活動をしている中で、耳にタコができるほど聞かされているフレーズのトップ3のひとつは「お客さんと信頼関係を構築しろ」ではないでしょうか。信頼が重要だ、信頼される営業であれ、と。

一方で「信頼関係を構築しろ、って言うけど何をどうしたら信頼関係って構築できるんだよ」とか「どうなったら信頼関係が構築できた、って判断できるんだよ」といった口に出せないモヤモヤがあると思っています。

今回のnoteでは、営業活動をしている営業職の方々が買い手であるお客さんと信頼関係を構築するためにどういう思考をして具体的に何をすると良さそうなのか考えるきっかけになる内容をお伝えしたいと思います。


素性の知らない人に対する印象

さて、まず以下を読んでみてください。

どうでしょう。多くの人は「怪しいなー」と思って断ると思います。帽子はちょっと高そうですが、お世辞にもピシッとした格好でもないですしね。変なモノを飲んで余計に具合悪くなるかもしれない、と思うでしょう。


さて次に頭の中を再度リセットして、以下を読んでみてください。

どうでしょう。薬、飲みますよね。
2枚目のストーリーには山岡氏が社会的に信用に足る情報、加えてあなたも山岡氏を信用して頼ってきた、ということが読み取れると思います。

営業活動において、インバウンドであれアウトバウンドであれ、初回面談の場においてはお客さんはあなたを信用するだけの情報がありません。もっと平たくいうと「あんた誰」と思っているでしょう。もちろんアポイントを了承したので露骨に嫌な顔をすることはないです。大人なので。心の中で「この人は一体どういう人なんだ」と半ば無意識下で警戒していると思うことは不自然ではないと思います。

一方で営業は面談前に程度の差はあれどお客さんのことを調べて準備していきますよね。どういう業界のどういう企業で、どういった役割で仕事をしている人で、どんなことに困っていそうなのか。
お客さんはあなたの「会社」のことは多少調べておくものの、あなたという「人」に対しては調べることはしないでしょう。なぜならお客さんが面談を了承したのはあなたの会社が提供しているサービスやプロダクトに多少の興味を持った場合か、面談の目的として興味があるアジェンダを提示されたからであって、あなたという人に会ってみたいから、ではないからです。

何が言いたいかというと、面談前において売り手と買い手の「相手に対する興味度合い」には大きなギャップが存在しているんだよ、ということです。営業パーソン自体に大して興味がないどころか、なんなら警戒すらしている相手に対して信頼関係を構築するということは相当難易度が高いことだ、ということをまずは認識してください。

特にマネジメントしている人。安易に「信頼関係を構築しなさい」とか口にしないように。そんな簡単にできるもんじゃないんだから。

ではどうしていくと良いのか、一緒に考えていきましょう。

信用とはなにか

ところで、上述した山岡氏のケースにおいて「信頼」ではなく「信用」という言葉を使っていたことにお気づきでしょうか。この2つは違う意味をもつので気をつけてください。

信用は英語でいうと馴染みがあるとおもいますが、クレジット(credit)です。そう、クレジットカードのクレジットです。日本はクレジットカード保有率が非常に高いので、皆さんも1枚は作ったことあると思います。
クレジットカードを初めて作った時のことは覚えてないかもしれませんが、カード利用限度額がとても低いところからスタートします。そしてカードを利用し、期日に銀行口座から利用した分が引き落とされいくと、カード会社からみてあなたは「大丈夫な人」になっていくわけです。そうすると利用限度額を増やしても支払ってくれるよね、という判断の上、あなたの利用限度額は50万円から100万円に増えるというのがざっくりとした仕組みです。

つまりクレジット(信用)というのは「過去の客観的な事実」によって蓄積されるものです。毎月毎月、カード利用分が銀行口座から引き落とされるという蓄積によって信用レベルが上がっていく。
他の例で言うと、例えば友達と集合時間を決めて会おう、となった場合。あなたは時間通り待ち合わせ場所に到着して、友達も遅れずに到着。その次も友達は時間通りに到着。その次も、その次も遅れることなく友達はあなたとの待ち合わせに現れます。そうするとあなたから友達に対して、少なくとも「時間に遅れない」という点について信用できる状態になりますよね。これもクレジットカードと同じく「過去」の「客観的な(時間に遅れなかった)事実」が蓄積されたものです。

信頼とはなにか

信頼というのは信用の上に成り立つもの、と理解すると良いと思います。以下の図は私がよく使う図なのですが、信用によって「この人は時間通り来る人だ」という信用を構築したら、「よってこの先もこの人は時間通り来るよね」という将来に向けた主観的な期待を抱くことになります。これが信頼です。

将来に向けて、主観的に信じられる状態を作るためには根拠が必要です。その根拠が信用になる、という整理をしていただくとわかりやすいと思います。

今まで時間通り来た。この人は時間通り来る人だ(信用)
なのでこの先もきっと時間通り来てくれる人だろう(信頼)

となるわけです。
尚、例えば孫正義さんが何か言葉を発した時に「孫さんが言うならきっとそうなんだろう」というものは「信仰」となるという整理です。


「信用」なくして「信頼」はない

つまり何が言いたいかというと、信用なくして信頼はないよ、ということです。しかし「信用を得るための努力」をしているのでしょうか?と疑問に思うことが多々あるため、特に営業活動における信用獲得→信頼構築について再考してもらえると、また1つ皆さんの仕事がよくなると思っています。

例えば「インサイト営業」とか「ソリューション営業」「提案型営業」という営業スタイルがありますが、課題が顕在化していない買い手においては「顧客に示唆を出しアドバイスし、課題を顕在化して商談に繋げていく。そのプロセスにおいて顧客との信頼関係が重要だ」と部下に指導しているマネージャーは多いのではないでしょうか。

一見それっぽく正しいこと言ってる感じがするのですが、そもそも「信用していない営業」を脱しないと、示唆とかアドバイスなんて「余計なお世話で鼻につくノイズ」にしかならないわけです。

信頼信頼!と言う前に、信用を獲得する。

では信用獲得するために何をすると良いのか?についてお話します。


信用を得るには「減点をしない」こと

結論から言うと信用を得るためには「減点をしない」ことです。まずはこれを意識して行動してみてください。先ほどのケースを思い出してください。「時間通りに来ない」ことは減点になりますよね。逆に時間通り来たからといって加点はされない。だって決めた時間に来ることは多くの人にとって当然と言えば当然ですから。

営業、つまりビジネスのシーンにおいて減点をしないために具体的にどういうことを気をつけると良いのか、は以下の例をご参考に。

上記を見ていただいた方の中には「何を当たり前のことを」と思っている人も多くいると思いますが、思い当たるものがある人もそれ以上にいるのではないでしょうか。もちろん私自身も減点してきたと思いますし、今でも減点ゼロだと言うつもりはありません。

特に「スタートアップだしカジュアル(な服装やコミュニケーション)でOKじゃんね」という社風で働いている場合、知らない間に減点されている可能性がある、ということは昨今スタートアップ企業がたくさん登場してきている現代においては意識しておく点かな、とも思っています。

上記に書いた減点可能性ポイントはあくまでも一例です。言いたいことは「TPOに合わせて減点しないように気を配ることが大切だよ」ということです。

昨今、スタートアップにおいて「エンタープライズ攻めるぞ!」という流れが強くなってきています。右を見ても左を見てもエンプラエンプラ、と。大手企業に対して商売をしたいということで営業プロセスや組織、コンテンツやプロダクト等を大手企業向けにアップデートしていく動きはとても頼もしいですし、良いことだと思いますが、歴史ある大手企業であるお相手の社風や文化に合わせた接し方をしていますか?減点されることをしていませんか?ということを改めて認識してもらうと良いのでは、と思うことが散見されます。

自分の常識、他人の非常識。相手に合わせて減点されない振る舞いや言動を心がけることで減点を防ぐことができ、結果として信用を獲得することに繋がるということを心に留めておいて欲しいと思います。

信用していない相手(営業)がどんなに熱く想いや製品について語っても心に響きません。信用していない相手の言う「**が必要だと思います」等という発言は、前述の見知らぬ初老の男が薬を差し出しているのと同じ行為です。

お相手のことをしっかり調べて仮説を準備して面談に臨んでも、相手から信用されていなければ商談には進みませんよ。

信頼を得るには「加点を狙う」こと

皆さんのプライベートにおいても同様だと思いますが、この人信用できるな、と思ったらどういう態度になりますか?自分の考えていることや思っていることを伝えたり、相手から何か質問されたときにはぐらかすことなく答える、といった振る舞いになるのではないでしょうか。

営業活動においても同様です。信用されたかどうかは相手の受け答えや話の内容を観察することで判断ができます。信用してくれたな、と思ったら、信頼構築を試みましょう。このあたりの判断は皆さんの感覚的なものになります。間違っても「僕のこと信用してますか?」なんて聞かないように。

さて、信頼関係を構築するには、減点を防ぐというよりは「加点を狙う」という意識と行動になります。減点を防いで「この営業さんは変な人じゃなさそうだ」と信用をしてもらったあとは「この先に向けてこの営業さんと話をしていきたいと思うかどうか」という信頼の構築が必要になります。ここはお相手の将来に向けた主観的な期待であるため信用獲得に比べてコントロールすることが難しくなります。

加点を狙うにはどうしたらいいか。その1つが「スループット」です。端的に言うと「示唆」に繋がる意見を伝えるための思考プロセスです。本noteでは詳しく書きませんが、以下の連載記事にどういうものなのか書いてありますのでそちらを是非ご覧ください。


おわりに

  •  信用とは、過去の実績や客観的な事実の積み上げで得られるもの。

  •  信頼とは、過去に積み上げた信用をもとに判断される、将来への主観的な期待。

  •  信用なくして信頼は構築できない

  •  信用を得るためには、失点のリスクを減らす

今一度「信用を得る言動や行動をとっているのだろうか?」と振り返ってみてみると良いでしょう。ビジネスパーソン、営業パーソンの前に人です。人として信用を得られる状態を目指してから、商売の話に向けて信頼構築を進めてみてください。


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