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CX DIVE 2019 AKI 参加レポート

CSプラットフォームのKARTEを提供している株式会社プレイドさんの主催するCXカンファレンスに参加してきましたので自分の備忘録としてレポートを。今回のテーマは「consummatory(コンサマトリー)」。行為に目的や手段としての価値を見出すのではなく、行為それ自体を楽しむという発想。このconsummatoryをベースにして各スピーカーがセッションを行った。

Keynote Session

登壇者
株式会社クラシコム 青木さん

株式会社協同商事コエドブルワリー 朝霧さん

(コエドブルワリー朝霧さん)
COEDOのミッションはビール本来の姿を日本のお客様に知っていただくこと。
昔は「クラフトビール」ではなく「地ビール」と言われていた。地ビールは流行として扱われ、そして低迷した。土産物はいらないと言われた。会社もそのトレンドに巻き込まれ、赤字に。
そこで「Beer Beautiful」というブランドコンセプトを打ち立てた。
「地ビール」ではなく、自分たちの世界観をより表現できるクラフトビールを文化として広げていこうと思った。

Japanese Craft Beerとして日本初で世界のマーケットに広げていきたいと考えている。

(クラシコム青木さん)
買わない人にどうやってサービスできるか。買おうと思っている人をamazonと取り合っても勝ち目が無い。買わない人を買う気にさせるのであれば勝てるかも知れないと思った。買い物と関係ないコンテンツを沢山作っている。サイトを買う場所→遊ぶ場所へ。

最近「BRAND NOTE」という広告の記事制作をうける様に。また、最近1番注力しているのは動画制作。オリジナルドラマコンテンツ制作。

そのタイアップ企画を広告として販売。1番伸びているのはpodcastでのラジオ配信。80%が視聴完了する。立体的なコンテンツでお客さんの可処分時間をどれだけ使ってもらえるかを考えている。

クラシコム。自分たちがユーザーとして面白いと思えるかが行動の基軸になっている。ここ数年、やることを楽しむことを意識してきた。楽しいからやることに合理性を感じる様になってきた。クラシコムは数年前に①オリジナルブランドを作る②広告を出してもらえるメディア事業を作ると決めて具現化してきた。

TVCM制作を考えていたが、クラシコムには合わないのではと考える様になり、ドラマ制作を思い立った。どういうものならお客さんが喜んでくれるかということしか考えてなかった。世界観とか考えてなかった。

はじめは分からなかったが、ドラマ制作の現場にずっと一緒にいることで、ビジネスとしてどうマネタイズすればいいのか、徐々に分かるようになってきた。今はエンタメをもっとやっていきたいと思っている。

コエドブルワリー。テクノロジーの進化で衰退した農村手工業が再び価値を帯びる時代になると思っていた。人間起点なものづくりが大事にされていく。日本では地ビールがまちづくりの道具になっている。ビール自体が目的化されている。ビールの媒体力、ビールには人と人をつなぐ力がある。それを事業としてやっていくと考えた。

父の事業を継いだ時点では経営が厳しかったのでやらないことを決めた。その中でビールを残した。ビールのコンセプトを丁寧に伝えていくといいね、といってくれる人がいた。事業はかなり属人的であり、数字で見たらビール事業は廃止していたかもしれない。

会社の中でものを作ったりコンテンツを考える際に、自分たちがもっと早く世に出したい、待ちきれないと思っていること。失敗しても反省できる。自分たちがそういうテンションになっているのか。

ものが溢れていて気軽に手に入る時代に選択する最後の意思決定は微細な差による。例えば現在、ビールはマスプロダクトでも質の良いものは沢山ある。それだけだと選ばれない。そういう「どっちでもいいや」と思われる時代の中でものづくりをしていく。やっぱり人の熱量。

【クラシコムの新規事業をやるときのステップ】
1. 現場がキャッキャ言ってるか
現場のテンションがぶち上がっているか
2. 期待値を超える
顧客の期待値を超えるものが出来ているか
社外の反応でキャッキャ言ってるか
3. 収支が合うか
最終的に収支が合わないと結局面白くなくなる
まず収支は合わなくていいが、バジェットの話の方が大事。
バジェット内であればコンサマトリーにやっていい

コエドブルワリーのデザインの話。デザインは資産。PLにはすぐヒットしてこない。

リブランディングについて。コエドブルワリーは背水の陣だった。全商品終売。完全にリスタート。5種類の定番を同時に発売して、その後新版は無し。顧客の選べる楽しみを考えた。地ビールは失敗。一般的にネガティブな印象を拭うのは難しい。根本的に違う形で伝えた。世界のビールコンテストで金賞をもらったりして第三者のお墨付きを得るようにした。

ブランドを作るときに「どうやったら愛されるか?」が良く話題になるが「誰を愛するか」を決めて仲間にすることが大事では。ネスカフェは職場でコーヒーを振る舞ってくれる人を愛することを決めてアンバサダープログラムを作った。「どうやったら愛されるか」、ではなく「誰を愛するのか」定義を決めるべき。

googleがオンライン空間を席巻する中、プラットフォームにどうやったらロックインされないか?を考えている。ディズニーはその点コンテンツとしてとても強い。お客さんとの関係性という知的財産をいかに築くか。

クラシコムでは音楽制作もしている。spotifyでプレイリストを作っている。spotifyではプレイリストが強い影響力を持つ。そのプレイリストを魅力的にし、クラシコムが作っているという印象を持ってもらう。tiktokも研究している。うちっぽくないが、スタイルさえチェンジすればうちっぽくなれるかもしれないと思っている。

DIY。自己体験がベースになっている。また勇気を持つこと。

体験でイノベーションを生み出す

登壇者
わかる事務所  玉樹さん
任天堂Wiiの元開発者。

LUCY ALTER DESIGN代表 / 煎茶堂東京 青柳さん

THE GUILD代表/ YAMAP CXO 安藤さん 。

モデレーター:株式会社weaving代表/インクワイア編集者 小山さん

任天堂wiiについて。当時任天堂はゲーム人口の拡大が課題だった。ライトユーザーとヘビーユーザーが二層化してしまっている状況を変えたいと考えていた。ゲームを敬遠するお母さんでも楽しめるものをテーマとして考えた。「わかる体験」をどう作るか。目指す体験のかたちは、そもそも嫌われない。ゲームだと片付けられないこと。ものづくりをしていると後ろの体験に向きがちだが、手前の体験を考える。

YAMAPについて。自然を楽しんでもらいたいという思想で作っている。地図を見て山頂を目指す。山地図を読むのは一般人には難しい。スマホはGPSもついてgooglemapもある。我々の世代がまよう最後の世代と言われている。山は電波が届かない問題もある。そこを解決するプロダクト。

煎茶堂東京について。日本人はコーヒーには詳しいがお茶のことは知らない。自分たちの国のものを知らないということに疑問を持った。シングルオリジンの茶葉に感動した。グローバルなプロダクトにもなり得ると思った。急須で入れるのが面倒なことが敬遠されてるのかもしれないと考えた。また、お茶は茶葉の開きが風味にとって重要なのに急須だと茶葉が開かない。煎茶堂東京はハンドドリップで新しい体験を提供している。

ゲームも山アプリも煎茶も全て非日常品。無くても困らない。価値ってなんだろう。煎茶。なくてもいいが、精神的な充足感をもたらしてくれる。登山。自然に赴くことが自己内省に繋がる。スポーツ的な側面よりもその体験に価値がある。もっとみんなに体験して欲しいと思っている。無くてもいいが、あることで豊かな気持ちになれるものが体験価値。

デザインという言葉をどう解釈するか。デザインは意図を伝わらないといけない。YAMAP。安藤さんは冬にも装備を揃えて登山している。登山者にめちゃくちゃ話しかける。YAMAPの話ではなく登山全般の話について。それをプロダクトに活かす。YAMAPはCSもしっかりやって顧客接点もあるがその既存顧客の声に引きづられすぎない様にしている。

お茶。今、自宅には急須が無い。急須自体の機能をアップデートするデザインは誰もやっていなかった。透明急須を作った。割れない・熱くない・省スペース。お茶を普及する前に、ハードの普及が大事だと思った。知らない間にメディアに取り上げられ、アウトドアのユーザーがつく様になった。

体験の余白とどう向き合っているか。

Wii。基本的にはソフトを面白くするための余白を作ることが仕事である。ゲームを作っている人もユーザーが楽しむ余白を作っている。行動が想像できるような余白を考える。余白を作ることはユーザーが自分で考えて判断し行動できる。ゲーム自体が人生の余白。余白で人生の豊かさが決める。

お茶。お茶を立てる事自体が日常に無い。生活の余白の中にどう落とし込むかを考える。コーヒー、ペットボトルといったものを競合とは考えていない。自分ではお茶を入れないが、家族や恋人とお茶を飲む人をターゲットにしている。

山。山の楽しみ方は人それぞれ。そういった余白にアダプトしていく。

コンサマトリーを「プロセスを楽しむこと」といった捉え方をした場合に自分の好きな領域を選択することがおすすめ。CXOがカスタマーのエクスペリエンスをコントロールする立場と言われているが、エンプロイー(作り手)のエクスペリエンスのコントロールが大事だと思っている。

コミュニティを作る=ファンを作ることではない。そのプロダクトを体験したいと思える社会を作る。

なぜニューバランスというブランドに惹かれるのか?

登壇者
株式会社New Balance Japan 牧嶋さ

株式会社ヤプリ 金子さん

株式会社Moonshot 菅原さん

株式会社インフォバーン 羽村さん

ニューバランスを買い続ける理由。
20年ずっと同じ品番が手に入るすごさ。NIKEとかも買い続けているが、「買い続けている感」が無い。

ニューバランスは生まれたときのファーストシューズのシェアが高い。物心つくと他のシューズを買う。大人になってまた戻ってくる。卒業されないブランド。マックの様にちゃんと入学できる。

アメリカでは父親が子どもにいいシューズとして履かせる。

ブランドとCXの体験
一貫して顧客体験が管理されている。買った時、履く時、履き続ける時全て期待に応えてくれる。拡張するとCMがそれを損なうものではなかったり、ECもその様な設計になっている。その拡張性をいかに考えるかがCXだと思う。人に自信を持って進められる。ニューバランスに合うパンツといった周辺領域も広がっている。ニューバランスの体験を損なわない拡張性。

ニューバランスのマーケティング
着地が全てオンラインでの買い物でなくてもいいと思っている。店舗でもECのポイントが使える。ECでも店舗在庫が確認できる。元々ECで買っていた人が店舗に行く事例も。

商品力があることは当然。とはいえ商品力があるから売れる訳ではない。マーケティングだけで売ることはできない。商品がしょぼく、顧客に損をさせることはできない。商品力はやっぱり非常に大事。商品も含めた体験が重要。靴が良かった、店員の対応が良かった、など全ての接点での体験。マーケティングを必要とすればするほどコストが上がる。セールをされると逆に萎えてしまう感覚がある。顧客を裏切らない。

組織について
DTC(Direct To Customer)と名のついたセクションがあり、店舗とECは同じ傘の下にある。3つのコアバリュー(誠実・チームワーク・顧客満足度)を大事にしている。店舗/ECといった1チャネルだけの話をしない。施策をやるときはオフラインとオンライン両方の観点で常に考える。アプリも店舗寄りのネタも多い。どっちがどっち、じゃなくお客様ファースト。同じ組織にいることが大きい。

これからは店員がより大事になってくる。店員まで熱量をいかに伝播させるか。

「ニューバランスっぽさ」という自分たちの軸を作ること。

これからのメーカーについての考え方
SKUは増やさなくていい。主力商品が大半のシェアを占めているはず。「これをまず買ってください」というものがあることが重要。自信が無い商品を買われても仕方ない。

熱量あるブランドづくりで、極上の体験をつくる

登壇者
株式会社スマイルズ 野崎さん

株式会社BAKE 貞清さん

株式会社Clear 生駒さん

株式会社オールユアーズ 木村さん

新規ブランドを作る際のインスピレーション

(生駒さん)日本酒蔵を巡りながら、美味しい日本酒の価格が安いことに違和感を持った。海外を渡り歩いたことで世界における日本酒のポテンシャルを感じた。

(貞清さん)創業者が菓子店の息子。出来たての美味しさが味わえるお店が無いと思い、単品のお店を作ることにした。

(野崎さん)会社の理念が「世の中の体温を上げる」。世の中の体温を上げるなら何でもやりたいと思っている。一切マーケティングをしない。自分が作りたいものを作る。業態開発も答えは自分の内側にある。自分の過去にヒントや可能性がある。そこをきちんと理解しておくことが大事。

(野崎さん)100本のスプーン。昔、通っていたファミレスの体験があった。小さい頃にステーキをナイフを使って食べた経験。最近のファミレスは家族がいない、もしくはバラバラ。昔、ファミレスに親父が自分にナイフの使い方を教えてくれた様な体験を現代に蘇らせたいと思った。海苔弁。社長と商品開発者がタクシーの中で好きな食べ物の話をした際に海苔弁いいよね、といった会話からはじまった。会議で決まることは100%無い

(貞清さん)プレスバターサンドも社内の会話でマルセイユバターサンドが美味しいという話が出て、明らかに超強い相手と思ったがそれを超えるものを作ろうとなってはじまった。

人格設定の意義

(生駒さん)ターゲットのペルソナ設定をする一般的な流れとは真逆のプロセス。まず我々が何者なのか、という自分たちの人格をはっきりさせる。ブランドをどこで切っても自分たちの哲学が浸透している。酒が美味しくてもCSが今ひとつだったり梱包が残念だったりしたら意味が無い。

(野崎さん)スマイルズもスープストックという人格も全部違う。何で人格設定するか。長くブランドをやっていると、そのブランドを守ればいい、といった固定化することが良しとなってしまう。年が経った際に人は年を取る。ブランドも時間をとって変わる。人格も変わっていく。ブランドを独り歩きさせるために、人格をはっきりさせる。

スープストックも誠実なイメージだが、「右と左どちらでもいいよ、自分は右が好きだけどね」といった柔軟性を大切にしている。カレーしか売らない日を作った。例えば普段カラオケは行かないが、行ったらマイクを離さない、みたいな振れ幅。

ブランドは関係性だと考えているからこそ、変わっていいと思っている。

(貞清さん)みんなが同じ設定で人格設定をしている。ターゲットを作って置きにいくのではなく、自分たちが熱狂している。

(野崎さん)人格は決まっている訳ではない。多義性がある。相手によって側面が変わる。それぞれが、それぞれが思う人格を作って欲しい。「あなたはスープストックをどう思ってますか?」と逆に問う。失敗も勿論ある。

(生駒さん)まだサービスがはじまったばかりなので、今は「自分たちはこうだ」というのをハッキリさせるフェーズと思っている。徐々に身内で

(野崎さん)段々ブランドが確立すればするほど足元の商売は良くなるが、新しい顧客にとって排他的になるリスク。顧客を見て、ギリギリのラインで

人格は誰がつくるのか

(貞清さん)みんなで考える

(野崎さん)ケースバイケース。スープは遠山社長。決済フローが無いので各々がやりたい様にやる。声がデカイヤツが勝つ。全員を納得させる必要はない。

(生駒さん)みんなで考えるが、合議ではない。

(野崎さん)100本のスプーンのあざみ野店。敷地にジャングルみたいな場所があった。建物を作っていたが、広報担当が「これじゃない」と違約金を払って白紙に戻し、子どもたちと公園を作るプロジェクトを立ち上げた。

世の中に無いものをやろうとしたときに上手くいかない理由は幾らでもある。
上手くいかなかったときに自分の熱量が無いと続かない。

(生駒さん)世界の全ては人間の意思でできている。ガソリンになる様な意思の源泉が必要。はじめは日本酒で飯食えたらいいな、位だった。自分は意思は降り積もってくるものだと思っている。小さい小さい核が雪だるまの様に大きくなって、人生で成し遂げたいことになった。

その積み重ねがブランドでは。

価格設定

(木村さん)決め。自分目線で値付け。それに原価を合わせるために頑張るしかない。

(野崎さん)決め。文喫をやる際に1,500円という入場料設定。前例が全く無いので議論が巻き起こった。お店に長く滞在してほしいからコーヒー3杯分と考えた。そのくらいの価格だと客が出会おうとしてくれるのではと考えた。新著じゃない書籍が売れている。結果的に買い上げ率と単価が高い。入場料1,500円+本3,000円+ご飯。

所感

参加するまでコンサマトリーという言葉が耳慣れなかったが、今回お話されていたスピーカーの皆さんの仕事への向き合い方がまさにその言葉の事例なのだなと思いました。

「世界の全ては人の意思で出来ている」といったお話があったがまさにそうで、個人の想い入れがあるプロダクトやサービスが人の共感を呼び、世界を変えている。

その点で自分の中の「好き」や日々の暮らしを丁寧に生きる中での気づきとかが巡り巡って経済性を生む時代になったと感じます。

様々なプロダクトやサービスがコモディティ化していく中、イノベーションは個人の内省から生まれる。

そんなことを様々な切り口のセッションで感じました。
自らも仕事の形をアップデートして、また次回も参加したいと思います。

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スタートアップ/ビジネス開発といった自身の仕事について整理し書いてます。時々は子育てやローカルネタも。