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"Trend Note Camp #21 「YC Winter 2019」投資家注目・最新スタートアップ" イベントレポート

本日、アドライト社主催の「YC Winter 2019」報告会に参加してきたので簡易ですが備忘録としてレポートを書き記します。

2019年3月に行われたY Combinator主催のDemo Day「YC Winter 2019」では計37ヶ国から史上最多、189ものスタートアップがDemoDayに登壇。今日はその登壇企業の中で特筆すべき最新のビジネスモデルやトレンドを紹介するというイベントでした。
ゲストは株式会社Wil パートナーの久保田雅也さん。
モデレーターはアドライト社 代表取締役の木村忠昭さん。

YC Winter 2019 参加企業の属性

過去最大の189チームが参戦。2ステージ制に。
B2Bスタートアップが増え40%を占めるまでになった。

<参加企業の事業領域>
Aerospace – 2%
Agriculture – 1%
Automotive – 1%
B2B Software and Services – 40%
Blockchain – 2%
Consumer Goods and Services – 13%
Consumer Media – 6%
Education – 3%
Energy and Environment – 2%
Fintech – 8%
Government – 2%
Healthcare – 14%
Industrial – 3%
Real Estate and Construction – 3%

YC Winter 2019 統計より

注目のスタートアップ

MedCrypt

医療機器のIOTに特化したセキュリティサービスを提供。
医療用機器における保管中のデータやデバイスに送信される信号の暗号化といった一般的なセキュリティ機能に加え、イベントデータを送信することでウィルスによる攻撃を検知する行動モニタリング、そしてソフトウェアライブラリの脆弱性を発見、監視する脆弱性モニタリングがある。

Traverse Technologies

AIを用いて風力・水力発電に向く候補地を特定するサービス。
従来の探査やエンジニアの作業効率を10倍上げる。

Superb AI

AIで使うためのデータをAIで提供するサービス。
教師データをAIで提供。

Trexo Robotics

運動障害のある子ども向けに特化したロボット開発。

JetPack Aviation

ジェットバイクSpeeder™の開発。最高速度240km 。

cherry

従業員が福利厚生を自由に選択できるサービス。
NetflixやSpotifyなどtoCサービスを福利厚生として提供。月額プランに登録し専用のBotをSlackに追加すると、Slack上で専用のコマンドが登録され、ギフトコードが生成。従業員はそのコードを用いて様々なサービスが登録可能。

kaishi

誰もがスポーツだけではなく、何にでも賭け事ができるプラットフォーム。現在200ヶ国以上でライセンスを所持。

ampUp

電気自動車ドライバーと充電スタンドのマッチング。
ドライバーは自分の車種に対応する充電スタンドのみを表示するだけでなく、予約することもできる。現在サンフランシスコの湾岸エリアで展開中。

bensen

音声スピーカーからレストランの注文ができるサービス。

Hearts Aerospace


電動航空機の開発。排出ガス0で燃料費75%・メンテナンス日を50%削減に成功。2025年にスカンジナビアでフライトスタート。

Atomic AIchemy

安全で小型の原子炉を製造。

YSplit

複数でデビットカードを保有できるサービス。
ルームシェアや同棲によって発生する光熱費や水道代などを仮装デビットカードを発行することにより自動で割り勘しそれぞれの口座から引き落としが出来る。

Shiok Meats

培養肉からエビを提供するサービス。培養肉や人工肉は1kgあたり数十万ドルもするが、Shiok Meatsに人工エビは1kgあたり5,000ドル程度の見込み。

Adventurous

家族やグループと一緒にプレイする、地元密着型のARゲーム。ユーザーは指定された場所に集まりそれぞれ別のタスクが与えられ、それをクリアしていく。サンフランシスコで展開中。

Loonify Space

小型の人工衛星を軌道に乗せるための、特製「打ち上げ」システム。気球がロケットを高度35kmまで運び、空中で発射を行う。既に155回分、7,700万ドルの衛星打ち上げの基本合意書を手にしている。

Zerodown

一旦プラットフォームが家を買い上げて顧客の収入に合わせて月次の支払い計画を策定し、支払い済みの分は顧客の持ち分となるサービス。

Nabis


マリファナ配送に特化した配送事業者。通常の物流での運送は違法、そこに目をつけ参入したベンチャー。

Taali Foods

睡蓮の種から作られたポップコーンの代替品。67%少ない脂肪と20%少ないカロリー。健康スナックベンチャー。

Middesk


BtoBパートナーのバックグラウンドチェック。C向けの同様なサービスを手がけているCheckr創業メンバーによる起業で2度目のYC。

Shef


自宅で作った食事を顧客に売る。大手不動産会社が住居者へ提供するサービスの一つ。通常のフードデリバリーが20ドルに対し、6.5ドル。家庭食品の販売がカリフォルニアで合法化。

Allure System


モデルの自動生成。アイテム写真を撮れば様々なモデルに様々なポーズで見せることができる。世界のファッションブランドはモデルと写真家に年間50億ドル払っていることから着想。

Basilica


DLモデルに必要な基礎データを保有し、企業が用意するデータを圧倒的に減らすサービス。

KEEPER


ギグ・エコノミー用の税務申告ツール。機械学習を利用し銀行取引明細から、税務控除を自動で抽出。

Gerostate Alpha


老化防止の創薬ベンチャー。寿命を延ばす150の物質を特定。

Alpaca ※日本発


日本から登壇したAlpaca。日本人としては2社目。無料で株取引できるAPIを提供。開発者は自由に株式取引システムを開発することができる。

「YC Winter2019」に現地参加した所感

・規模拡大に拠る希薄化
スタートアップ数が200を越え、投資家も増えた。今回からピッチが2ステージに分かれ片方しか参加できない様に。

・海外スタートアップの増加
全体の40%が海外勢に。南米やアフリカなど現地のベンチャーエコシステムが未発達な国地域のスタートアップは、シリコンバレーで桁違いな調達ができるようになった。投資家サイドも未開拓の市場への投資ニーズが高まっている。イノベーションのグローバル化。日本からAlpacaが登壇。 

・バリュエーションの高騰
沈静化せずむしろ上がっている。Demo Day登壇企業のフェーズは基本プレシリーズAという建前で、かつては6〜7Mドルであったが今回は10Mドル以下の会社は一社もなし。中には30Mという会社も。

・二極化するスタートアップ
人気企業はDemo Day前に早々に資金調達を終えてイベント終了後は全く姿を消してしまうが、調達に苦しむ企業は残って投資家へピッチを続けるというばらつきが広がった。

・"Netfrix for モノ" 、"Paypal in 地域"、 "AirBnB for 場所"
既存のビジネスモデル応用があらゆる地域、ドメインに隅々まで行き渡る様に。逆にイノベーション余地が枯渇。  

・教育とHRのコンバージェンス
Hire→Train」から「Train→Hire」へ。これまでの採用HRは「マッチング最適化」だったが、HRが教育に染み出してきた。採用前に教育し、優秀な人を採用する流れに。企業のソフトウェア化が進む中、資産である「人」へのニーズの高まりにアカデミックがついていっていない。 

・ディープテックの増加
バイオテック、メディカル、宇宙といった産学連携の密度と野心的に成長を求めるチームの姿が改めて印象に。10年以上先の未来を見据えたスタートアップの台頭。

・AIは現実路線へ
これまでの「何でもAI」なピッチから、機械学習時のデータ支援など現実路線へ

・As a service化、API化の進展
サブスクモデルやAPIエコノミーは引き続きトレンド  

・ブロックチェーンや仮想通貨はほぼゼロ

イベントの所感

今回、特に印象に残ったのは下記。

・"Netfrix for モノ" 、"Paypal in 地域"、 "AirBnB for 場所"
既存のビジネスモデル応用があらゆる地域、ドメインに隅々まで行き渡る様に。逆にイノベーション余地が枯渇。  

地域軸ではUSやヨーロッパで成熟が見え始めた既存ビジネスモデルを南米やアフリカといったエリアで展開しようとするスタートアップが非常に多いそうです。投資家も未開拓市場への投資に積極的で、Demo Dayに参加することで未開拓市場を切り拓くスタートアップと思惑が一致し高いバリュエーションがつくというエコシステムが生まれているそう。

確かに、もはや2軸以上の掛け算でないとイノベーション余地が無さそうな感覚があります。

日本も日本独自のビジネストレンドがありつつも、大きく見ればやはりUSを中心にした海外から波及していく流れであることは間違いなく、現職での事業開発の方向性の参考として、また中長期的な海外展開に向けてこの辺りの情報は継続的にウォッチしていきたいと思っています。

こういったイベントに興味あれば下記フォローしておくのがおすすめです。



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スタートアップ/ビジネス開発といった自身の仕事について整理し書いてます。時々は子育てやローカルネタも。