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「ブランドを作る思考法」イベントレポート

ピースオブケイクさん主催の下記イベントに参加してきたので、その備忘録を書き記します。80人枠に110人のエントリー。すごい。

登壇者

渡邉康太郎さん
Takram パートナー/コンテクストデザイナー
慶應義塾大学SFC 特別招聘教授

山口義宏さん
インサイトフォース株式会社代表取締役

① ブランディングはなぜ必要なのか?

ブランディングの観点は2つ
・インナーブランディング
・マーケットの競争戦略を上げるため。
後者は経済効率が良くなるロジックが必要。
知覚認識された価値を作ることがブランディング

時間軸の問題。
短期的に売上を上げること、中長期的に成長させること。どうバランスを取るべきか?
化粧品の例。
20億までは単品で、広告でいける。認知してくれれば買ってくれる人たちへのリーチ。
その先により多くの顧客に届けたい場合は広告じゃ無理。
ブランドとして、信頼をつくることが必要。

10年前はマス広告が力を持っていたがスマホが普及した今、力を持たなくなった。
スマホとSNSが普及するとそれぞれが個別に調べて探す時代に。
今はブランドが人格として自分へ合うかが求められている。
単にパッケージデザインやビジュアルデザインを越えて日々の接点が増えている。
どう見えるか?からどういう体験をしてもらうか?へ。
それは当然店舗体験も入るが、決済の瞬間も体験の一部
「らしさ」を構成する全てがブランドの範疇。
一ブランド責任者だけではなく経営者まで含めてブランドへの意識醸成が重要な時代に。

ブランディングの問題は、組織が大きくなるほど組織の問題になっていく。
オーナー企業とそうでない企業で状況は異なる。
合意形成へのエネルギーが必要になる。
先払いと後払い。
大きな会社では先払い、まず全社で合意形成を得てから進めるべき。

タクラムのコンサル先では8割がインナーブランディングにまず手を着ける。デザイン戦略を作るといったものの前にまず下地づくりをしっかりやる。全社向けのヒアリング、社内の色々な人へのヒアリングと社内共有。
社外に出す前に、社内のメンバーの意識をまず統一する。

デンマークの公団が、地下鉄の構内に広告を掲示するのではなく自然の写真を掲示をしていた。それはそこに住んでいるホームレスが過ごしやすい様にという配慮のためであった。それは経済合理性ではなく公団としての思想。

経済合理性が無いことをずっとやり続けることが最終的にはブランディングになり、経済合理性が生まれる。

任天堂は売上に直結しないKPIを持っている。
リビングへの設置数、1ゲームの同時アクセス数。
みんなでプレイしてほしいという思想のための数字。
売上を追えば1人1台買ってもらえばいいが、そうじゃない任天堂の思想。
これは上位のKPIがあって、「ゲーム人口を増やす」というものがあるはず。

② いいブランドがやっていること・やらないこと

最近気になっているブランドは?
山口さん
VanMoof(バンムーフ)
https://www.vanmoof.com/jp_jp
上り坂でもパワフル。防犯機能がすごい。最終的にはスタッフが追いかけてくる。見つからなかったら新車を送ってくれる。防犯のシステムがすごい。

渡邉さん
objects.io
https://objcts.io/
ガジェットのためのバッグ。とにかくガジェットに負荷がかからない設計になっている。

Minimal
https://mini-mal.tokyo/
Bean to Barのチョコレート。はじめは仕入れさせてすらもらえなかったが、現地のカカオ農場で働いている人たちと一緒にチョコを作って食べるワークショップをやった。これまで農場の人たちはチョコを食べたことが無かった。そういった取り組みに感動したオーナーが取引をさせてくれる様に。

ブランドのフィロソフィーが商品に直結しているか?

Feel First Learn Later。
まず体験してもらう。その後に知ってもらう。

価値に見合わないものがすぐ淘汰される時代に。

言いたいストーリーや薀蓄は沢山あるかもしれないがそれをまず語るべきではない。まず良い体験をしてもらうこと。

ブランドターゲット。誰を象徴的顧客像としてコミュニーケーションしていくか。
自分が好きなのファッションブランドをダサい人が着る様になると顧客が離れる。それはファッションブランドの象徴的顧客像がマスになった。このトレードオフのバランスをいかに取るか。

③ ブランド力をつける発信の仕方とは

SNSやCGMで消費者自身が発信をしてくれる時代。
その中で、ブランド自ら発信する意味は?

D2Cブランドも自ら店舗を作ったり雑誌を作ったりオウンドメディアを作っている。
ただ単にプロダクトを売るのではなく、そのプロダクトが連れて行く理想的なライフスタイルを発信している。
ただモノを買って欲しいのではなく、旅行に行く楽しさを伝える。

語り過ぎも語らな過ぎも生き残っていけない。
上手に語っていく必要がある。
コピー出来ないストーリーが大事。
Feel First のあとにLearn Laterできるものがないと続かない。
一人ひとりのブランド像は違ってもいい。
幹はブランドとして発信するが枝葉は消費者に委ねる
その「誤読性」もブランドとして考える。

ものづくりなど、裏話全てが良いものではない、あくまで読み手がいるか?が大事。
「私たち頑張ってるよ」という全ての話をする必要はない。

良くあるあるは
他社がtwitter、noteやってるからやる
みたいなことで失敗するケース。

テクニックの話、魂の話。
テクニックはいつ投稿するのが見られやすいか、といったもの。
テクニックの前にその「他の人と違う経験をしているか?」といったものがあるかが大事。
自分だけが経験しているものがあるか?、それを知りたい人がいるか?

コンテンツは
書き方のテクニック x 独自の経験
である。

大手企業はやらなくてもいいことが結構ある。中途半端で結果が出ないもの。社内で骨抜きにされてしまうもの。

ブランドアイデンティティ、コーポレートアイデンティティを変更時点でリリースせず、浸透したときにこっそりwebで後日談を上げる様なやり方をする企業も増えている。(タクラムは日経新聞のロゴをマイナーチェンジした)デザイン変更を伝えたい訳ではない。

Appleはイベントで発信する以外は一切自分たちで語らない。

その他

ラグジュアリーブランドも段々と親しみやすさが求められていくのか?
今あらゆるブランドが人格を持つようになってきている。
ユーザーと対話できることがブランドのベーシックスキルとなっている。
西洋のブランドでもLINE@を持ってユーザーに話しかけている。

若い人が全て安いものを買っている訳ではない。本当に欲しいものは高くても買う。全てがハイエンドになっていく。それはそのままだと価格が安くて品質の高いものを作れる大手が寡占する社会。
中間価格の商品が無くなっていく。

ブランド立ち上げにおける正しい仮説検証の仕方とは?
定性と定量で考える。
定性:本当に喜ぶユーザーがいるか?
一人いれば世の中のどこかにはもっといるはず。
これがいないとだめ。
定量:「熱量」を定量化する。NPS。自然発生の口コミの数。指名検索数。
お菓子。発売一週前の自然発生の口コミと発売後の売上が相関している。

一定の推奨度が上がる前にプロモーションをしてしまうことはすごく危険。

常にソーシャルでの言及を追っている。

コンサルに入る時に何をするか?
ひたすら社内外の関係者に話を聞く。
とにかく信頼を得る。

特に印象に残ったこと

・ブランディングは社内での合意形成が肝
・Feel First Learn Later。まず体験してもらい、その後に知ってもらう。
・発信すべきは自分(会社)にしか語れない経験があるか? x 聞きたい人がいるか? が噛み合ったコト
・ブランドの幹は自分たちで作り、枝葉づくりをユーザーに委ねる

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スタートアップ/ビジネス開発といった自身の仕事について整理し書いてます。時々は子育てやローカルネタも。