第50回読書会レポート:三浦綾子『塩狩峠』(感想・レビュー)
(レポートの性質上ネタバレを含みます)
お陰様で50回の節目の回を迎えることができました!
満員御礼のキャンセル待ち\(^o^)/
以前より取り上げたかった作品ですが、イメージしていたものより読みやすく、奥深い作品でした。
読書会でもさまざまな意見が出され、この作品を課題本にして良かったなと思いましたよ!
参加者の皆さまの意見・感想
読みやすい
ピュア
仏教からキリスト教へ。どうして?
宗教の犠牲になっていないか?
助けようと思った心が尊い
ふじ子はある意味幸せだ
人間は不完全なもの
昼ドラ・エンタメ小説
自己犠牲の場面がない
トロッコ問題
行動した信夫・行動しない六さん
英雄譚
ハッピーエンド
一途に信じる凄さ
こう言っては失礼かもしれませんが、結局はGive&Takeの話でしょっ。
飛び込んで列車を止めるなんて。。。
という結論を持って読書会へ臨んだのですが、ところがさまざまな視点での解釈が続出し、目からウロコの素晴らしい回となりました。
今回は出された意見の中からポイントを挙げながらご紹介していきたいと思います。
仏教からキリスト教へ。どうして?
主人公の信夫は父と祖母の三人暮らし。特に祖母のトセには士族の跡取り息子として厳しく育てられていました。
ところがひょんなことから、死んだと聞かされていた母親が生きていることがわかります。
母親はキリスト教徒であり、それをトセが嫌悪して、生まれたばかりの信夫を取り上げ追い出したという事実を知るのです。
トセが亡くなり、父親は母親を呼び戻します。
信夫の生活に徐々にキリスト教が流れ込んで来て、ついには北海道で日曜学校の教師として活動を始めるに至るのです。
もっとドラマチックな改宗の転機が合ったのかと思いきや、
「母親が信者だった」
「尊敬する小説家もキリスト教だった」
「恋心を寄せているふじ子もキリスト教だった」
「人格者である父親も信者になっていた」
といったように、”素晴らしい人々”の影響で徐々にそちらへ興味を持っていかれた流れがちょっと微妙かな、という意見が聞かれました。
改宗のきっかけはちょっと強引な気もしますけれども、実際にこんな些細なきっかけの積み重ねで考え方が変わるのかもしれませんね。。。
宗教の犠牲になっていないか?
信夫は性格もまじめで面倒見がよく仕事もできるために上司から気に入られていました。
ただその聖人君子の度合いが過ぎ、Giveの精神のみで様々に奉仕していく様子が普通でないように感じたのは、私が下等な人間だからでしょうか。
まさに罪意識を呼び覚まされました。
信夫のように振る舞わなければならないとしたら、私はやはりキリスト教徒にはなれないなと思うのでした。
また、こうした自己犠牲により「良い人をTakeしている」という意見もきかれ、なるほどなとも思いました。
良い人と呼ばれたい、思われたいが故に犠牲を自ら強いている、という意見に妙に説得力がありました。
しかし、聖書という制限の中で生きる意味を見出すことは、ある意味エクスタシーを感じる気がします。
完全な自由を渇望しつつも、美しい倫理観を設けることで人生が制限され、その中を葛藤しながら解を導き出すことこそ、宗教家の醍醐味なのかもしれません。
信仰がなくても「飛び込める」のでは?
また、本作品では、信仰があったからこそ自らを犠牲にして多くの人の命を救ったという流れに読み取れますが、
目の前で溺れている子供を助けて自分が溺れてしまった
ナイフを振り回している人を取り押さえようとして犠牲になった
というようなニュースは実際にもありますし、
正直、信仰に関係なく犠牲になって飛び込む人は存在するのでは? という指摘には深くうなずけました。
行動した信夫・行動しない六さん
クライマックスの車内で信夫は、幼少期に住んでいた本郷の屋敷を出入りしていた行商の六さんと再会します。
この再会はあまりに唐突すぎて違和感を覚える人が何人かいらっしゃいました。
このあと、二人を乗せた車両は塩狩峠で切り離されてしまい、登ってきた峠をどんどん滑り降りていくことになるのですが、
その際の信夫と六さんの行動が対象的に描かれており、これが本作品で訴えたかったシナリオではないか、との意見に一同うなりました。
つまり、六さんは「ナムマイダ、ナムマイダ……」と浄土宗や浄土真宗で唱えられる念仏をひたすら唱えているだけなのに対し、
信夫は的確に状況を把握してブレーキ操作をしたりと機転を利かせて動いている。
能動的か受動的か、自責か他責かの決定的なスタンスの違いが表れているとの指摘に、たしかにそれは一理あるなと考えさせられました。
酸いも甘いも噛み分けた大人が読むとこうなる?
今回はキリスト教への理解が進むというよりは、違和感を唱える意見が目立ち、そんな視点があったかと、ハッとする発言が多くありました。
ヒール役に対する非難が少なかったのも意外でした。
参加者の皆さんはもう少し信夫の行動を素直に受け止めてもいいのではと思うのですが笑
これがGiverに対する一般的な反応なのでしょうか???
とはいえ、社会に出て様々な経験を経た大人が読む『塩狩峠』とは正にこうしたものなのでしょう。
酸いも甘いも噛み分けてきたご意見ばかりでした。
制限の中にエクスタシーを感じるもよし。
もっと気楽にナンマイダと受動的に生きるのもまたよし。
忌憚のないご意見を聞くことができた貴重な読書会でした。
(2024年6月8日土曜日開催)
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