
第23回読書会レポート:ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』(感想・レビュー)
2021年最後の読書会。12月の回はほっこり年を越したいと思い、毎年児童文学から課題本を選出しています。
今回も不朽の名作『オズの魔法使い』をチョイス!
大人になってから読む良質な児童書は示唆に富み、気付きが多いんですよね!
参加者の皆さまからのご感想
2021年最後の読書会も満員御礼での開催となりました。
初参加の方も4名もいらしていただきました!
学生さんのご参加もあり、大いに盛り上がりました♪

ファンタジーの王道にして原点
印象に残った意見として、「異世界もの」「冒険」「魔法」が盛り込まれた本作品はファンタジーの王道だ、という指摘でした。
人間の普遍性をついているからこそ、100年以上経っても色褪せずに読み継がれていくのでしょう。
原題は『THE WONDERFUL WIZARD OF OZ』つまり……主人公はオズ!?
『オズの魔法使い』といえば、ドロシーという女の子が竜巻で家ごと飛ばされて未知の土地へたどり着き、そこでさまざまな悩みを抱えた仲間と出会い、その悩みを解消するためにエメラルドの都を目指す。
その道中でさまざまな困難に打ち勝つといった、要するに、主人公はドロシーとして展開されていく話なのだと思いこんでいましたが、よくよく読んでみると、題名からしてもオズこそが真の主人公ではないのでしょうか?
結局オズは、ただの背の低い人間のオジさんだったわけですが、なぜ偉大な魔法使いとして恐れられるに至ったのでしょうか。
それは簡単に支配者を作り出してしまう集団心理を指摘しているのではないかと考えられます。
無力なオズだけれども、相手の心を巧みに操る術は天性のものがあり、現にかかしには脳みそを与え、ブリキには心を与え、ライオンには勇気を与えているのです。
結局はマインド次第という核心をついたオズの策は、この物語のテーマそのものでしょう。
しかしオズは大魔法使いとして君臨していたにもかかわらず、その座を捨ててオマハへの帰郷を決行します。
そのきっかけを作ってくれたのがドロシーでした。
視点を変えることで題名に込められた真意が読み取りやすくなりそうです。
オズはオマハへ帰れたのか?
じつはオズが故郷のオマハへたどり着いたのかどうかは書かれていません。それ故に途中で死んだと読み取った人と、ちゃんと帰れたと解釈した人とに別れたのは面白かったです。
一方ドロシーはオズの力ではカンザスに帰れず、南の国の魔法使いに助けてもらい、ようやく帰ることができました。
自信を取り戻した仲間たちがそれぞれ”統治者”になるところがアメリカナイズ!
望みを叶えた仲間達の結末も興味深いものがありました。
まず賢いカカシはオズから後継者として指名を受けエメラルドの国を統治し、心を取り戻した木こりは西の国の統治者としての道を選び、百獣の王として目覚めたライオンは森の王として迎えられているのです。
なぜそれぞれが権力者になるのか不可思議なような気もしますが、いわゆるアメリカナイズされた結末と思えば納得かもしれません。
アメリカ人たるや強くあらねばならない、という理想のアメリカ人像を象徴するストーリーを担ってきたのでしょう。
『オズの魔法使い』がアメリカ人の心に、いかに溶け込んでいるかが伺えるエピソードを見つけました。
あの名曲『Over the Rainbow』は、ミュージカル映画『オズの魔法使い』の主題歌だったということで、ビックリ!
1939年のアカデミー歌曲賞を受賞したそうです。
さらに62年後の2001年に「20世紀の歌」365曲のうち、1位を獲得したということですから、どれだけアメリカ人の心に浸透しているのかが、容易に察しがつくところです。
余談ですが、アメリカではドラえもんは放送されないそうです。理由はのび太くんがあまりにも頼りなく、世界のNo.1であり続けなければならないアメリカ人にとって教育上承服できない物語だから、と聞いたことがあります笑。
(2021年12月12日日曜日開催)

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【第23回課題本】