見出し画像

他人は思い通りにならない

 生きる上で大切なことを日々学んでいます。

■クライアントに仕事をなすりつけられる事件


 夜中にメール。「ひさこさん、これやっていただけませんか?」フリーランスで働く私は、毎回仕事の契約があり、決められた範囲の依頼内容をこなした対価のギャランティをもらうのだが、明らかにそれに反する後出しメールだった。
 今回仕事をしているクライアントは、お世辞にも"仕事ができるタイプ"ではなく、ハチャメチャなスケジュールで平然と進行する四十代女性編集者。今回も彼女は自分のスケジューリングのミスで八方塞がりになり、私の依頼内容を超えるか超えないかのギリギリのラインで、仕事をなすりつけてくる。

 どうして私を巻き込むんだろう。そして、どうしてそんなハチャメチャなスケジュールで進行して大丈夫なんだろう。てか夜中にメールをするな。
 「申し訳ないけれど、今回のお仕事内容的にはそこまで出来ません」
 はっきりそう言った。(言えた!!!)

 でも、なぜかモヤモヤが残った。
 私がすべき仕事は終了したのに、わざわざ私をメールCCに入れたり、相談と言って電話をしてきたりする彼女の行いが許せなかった。私の仕事の範疇じゃないが、彼女のやり方が気に食わない。
 だって、そのやり方じゃデザイナーにもDTPオペレーターにも印刷所にも確実に迷惑がかかることが目に見えているから。
 
 ……という話を苛々オットにしたら、
マイルールをあまり他人に押し付けないほうがいいよ
 とおだやかに言われた。

■マイルール(すべき論)を押し付けない


 マイルール? そう聞き返すと、オットはこう続けた。
「夜中にメールをしない。スケジュール進行を円滑にする。ギャラの範疇外の仕事は依頼しない。それはぜんぶひさこちゃんのルール。だけど、その人にとってはルールじゃないから、こっちがいくら苛ついても怒っても伝わらないとおもう
 マイルールを押し付けない。なるほど、そう意識すれば、こっちが苛ついたり不安になったりすることは減るかもしれない。

「すべき論(〜すべきだ!)で物事を考えると、思い通りにならない他者に出会った時に困惑しちゃう。メールはすぐに返すべき。電話にはすぐ出るべき。って思っていても、そうは動かない人間もいるよね。他人を思い通りに動かすことはできないのだから、他人に期待しないほうがいい。怒り方にもいろいろあるけど、少なくとも"マイルールに反したから怒る"というのは、ちょっといきすぎかもね

 それを聞いて、急に腹落ちした。
 私はどちらかというと神経質なほう。もしかしたら、マイルールがほかの人よりも多いかもしれない。……ということを前提に今日を生きてみようと思った。ちょっとはラクになるかな。ストレスなくなるかな。

■事実と憶測を棲み分ける


「苛ついたり、怒ったりする前に何が事実なのかを整理して、その事実にだけ怒ればいい」
 オットはそうも言った。

 私には、すぐに想像をふくらませる癖がある。
 ちょっとしたことで「●●さんは私を嫌ったかもしれない」「●●をしなかったせいで△△ができなくなるに違いない」といったように、妄想を繰り広げて、自分の頭の中の誰かに責められ、セルフで落ち込む。
 今こうやって落ち着いている時は、それらは"いきすぎた妄想"ということがわかるのだけど、絶望モードになっている時、これがなかなか止められない。

 パニックになっている時こそ、「事実」と「憶測」を整理しよう。オットの話を聞いてそう思った。

 通っているカウンセリングでも試したことのある認知行動療法がこれにも似ていて、まずは出来事を書き出して「どこまでが事実なのか」「どこからが想像なのか」を分ける。
 すると、多くの場合自分が不安がっていることや苛ついていることが「事実ではなく、想像しただけ」のことだということが分かる。
「な〜んだ、起こってもないことを不安に思う必要なくない? 時間の無駄じゃない?」と思えると、極度に不安がることもなくなるのだ。
 ……という仕組みなのだが、言うは易く行うは難しで、パニックになっていると、なかなか実践できない。

「練習だね」
 精神科主治医のジャコペン先生はよく言う。練習、練習。思うことも、考えることも、練習することで癖が治っていく。そう信じて今日も生きる。生きてくことってこういうのを学んでいくことなのかも。


今度一人暮らしするタイミングがあったら猫を飼いますね!!