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【観劇納め】2023年に観た舞台21本振り返り【宝塚】【2.5次元】

今年も観劇振り返りやりまーす!
今年は業務の関係で早々に11月のうちに観劇納めをしてしまったので、あまり見に行けてないかな~と思っていたんですが、そうでもなかった。
まだ観劇記を書けていないものもありますが、先に総括しちゃいます。
みなさんの1年の観劇はどんな感じでしたか? あ、コメントとかリプとかやめてください。話しあう気はないです。心の中でお返事されてください。

去年のはこちら。


今年は全21本、カンパニーの‟初対面”は2つだけ

まずは演目の振り返りです。1本につき複数回観たものは回数を補記してます。宝塚とナルステだけかな。

1月
・『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~/JAGUAR BEAT』@東京宝塚劇場(×3回)
※前年に続き、詳細省略
・『マヌエラ』PARCO PRODUCE@東京建物Brillia HALL
脚本 鎌田敏夫 演出 千葉哲也 音楽 玉麻尚一 主演 珠城りょう
2月
『海辺のストルーエンセ』宝塚歌劇団 雪組@KAAT神奈川芸術劇場
作 指田珠子 主演 朝美絢
3月 家が水没
4月
・『応天の門―若き日の菅原道真の事―/Deap Sea―海神たちのカルナバル―』宝塚歌劇団 月組@東京宝塚劇場(×2回)
作 田渕大輔/稲葉大地 主演 月城かなと・海乃美月
 ・『バレンシアの熱い花/パッション・ダムール・アゲイン!』宝塚歌劇団 星組@福岡市民会館
作 柴田侑宏(演出 中村暁)/岡田敬二 主演 凪七瑠海・舞空瞳
5月
・『ホロー荘の殺人』ノサカラボ@三越劇場
作 アガサ・クリスティー 翻訳 小田島雄志・小田島恒志 演出・構成 野坂実 主演 凰稀かなめ
・『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』宝塚歌劇団 宙組@東京宝塚劇場
原作 イアン・フレミング 脚本・演出 小池修一郎 主演 真風涼帆・潤花
6月
・『異説 東都電波塔 陰陽奇譚』劇団GAIA_Crew@池袋シアターグリーン BOX in BOX
作 加東岳史 主演 大西真央・伊藤節生
 ・『DEATH TAKES A HOLIDAY』宝塚歌劇団 月組@東急シアターオーブ
脚本 トーマス・ミーハン&ピーター・ストーン 音楽・作詞 モーリー・イェストン 潤色・演出 生田大和 主演 月城かなと・海乃美月
 ・『三日月には程遠い』‐ヨドミ‐@TACCS1179
作 藤丸亮 主演 加々見千懐
7月
・『ライラックの夢路―ドロイゼン家の誇り―/ジュエル・ド・パリ‼―パリの宝石たち―』宝塚歌劇団 雪組@宝塚大劇場
作 謝珠栄/藤井大介 主演 彩風咲奈・夢白あや
・『いとしの儚』悪童会議@品川ステラボール
作 横内謙介 演出 茅野イサム 主演 佐藤流司・七木奏音
・『オイディプス王』@パルテノン多摩
作 ソポクレス 翻訳 河合祥一郎 演出 石丸さち子 主演 三浦涼介
8月
・『大逆転裁判―新・蘇る真実―』宝塚歌劇団 宙組@KAAT神奈川芸術劇場
原作・監修・制作協力 株式会社カプコン 作 鈴木圭 主演 瑠風輝
 ・『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』@帝国劇場
脚本 ジョン・ローガン 演出 アレックス・ティンバース 振付 ソーニャ・タイエ 音楽 マット・スティーン 主演 井上芳雄・望海風斗
9月
・『RAGTIME』@日生劇場
脚本 テレンス・マクナリー 翻訳 小田島恒志 作詞 リン・アレンズ 訳詞 竜真知子 音楽 スティーヴン・フラハティ 演出 藤田俊太郎 主演 石丸幹二・安蘭けい・井上芳雄
・『双曲線上のカルテ ~渡辺淳一作「無影燈」より~』宝塚歌劇団 雪組@日本青年館
作 石田昌也 潤色 樫畑亜依子 主演 和希そら
・『フリューゲル―君がくれた翼―/万華鏡百景色』
作 齋藤吉正/栗田優花 主演 月城かなと・海乃美月
10月
・『ライブスペクタクル NARUTO ~忍の生きる道~』@KAAT神奈川芸術劇場&TOKYO DOME CITY HALL
原作 岸本斉史 脚本・演出 児玉明子 音楽 和田俊輔・はるきねる 主演 中尾暢樹・佐藤流司
・『等伯―反骨の画聖人―』無名塾@能登演劇堂
脚本 岡山矢 演出 仲代達矢 主演 赤羽秀之
11月
・『無駄な抵抗』イキウメ@世田谷パブリックシアター
作 前川知大 主演 池谷のぶえ

はじめて拝見するカンパニーは、元贔屓の紅ゆずるさんが参加したノサカラボ、そして今年旗揚げした悪童会議の2つにとどまりました。

宝塚歌劇の前物史上最高傑作が生まれました

昨年の観劇記では「触れたくもないマジで嫌いな作品、不出来と思った作品」は名前を伏せましたが、今年どうしても無理だったのはは宝塚のピーエンセとピーラックだけだったので、伏せるのはやめました。普通にTwitterで行ったのバレてるしな。
ピー天の門も潤色は微妙すぎたけど、原作に出会わせてくれたという恩義があるし。とにかく原作好きです。灰原先生本当にだいすき。当作は連載10年とのことなのでスーパー今さらですが、今年は『夜逃げ屋日記』と『応天の門』は2大出会えてよかった大好きな漫画でした。マジでおすすめ。

マジ無理な作品は宝塚だけでしたが、宝塚の前物(※ 2本立ての興行における芝居のこと)の最高傑作が生まれた年でもありました。詳しくはこちらに書いたので割愛↓

さらに、ピーラックはアレだったけど、後物の『ジュエル・ド・パリ‼』はすばらしかった。「『アビアント』と言ってゆくえをくらましてた藤井先生が帰ってきてくれた」と思いました。10年以上ぶりの藤井ショーの復活。うれしかったです。

出だしから新人~中堅の先生のことボロクソ言った風だけど、宝塚はやはりこの「出来が安定しないところ」が好きです。めちゃくちゃ良作が生まれる横で、七転八倒している作品がある。作家の中でも葛藤とストーリーがある。それがいいんです。ピーエンセは無理といったけど、彼女の今時点見た作品が残らずすべて苦手なだけで彼女が嫌いなわけでは‟まだ”ない。一発観ただけで「こいつダメだ」と思う作品もあるんだけどね。彼女の場合は「無理」の中に、一応まだその余韻があります。来年以降に期待。

話は戻って、品質が安定しないのが良いのはなぜか。
それは、置きに行っている作家がいないということだから。まあ、最近は明らかに「ファンに媚びているな」と思う作品もなきにしもあらず……というか、ファン人口の増加とともに増えてきていると思いますが、これからもファンの顔色をうかがわずに生徒(出演者)を見つめる作品がつくられていくことを望みます。『フリューゲル』はその集大成のようでした。齋藤先生がいて、置きにいかずに七転八倒する先生がいて。私は作品を通してしかジャッジできないけれど、作品を通してあの団体を信頼してます。今年の現段階ではね。

余談ですが、私は『双曲線上のカルテ』大好きです。Twitterでも言ったと思うけど、あれをイタリアの話に書き換えているのは「今の日本には戦争に負けた国だけが得られる‟何か“がもはやかけらもなくて、観客の理解が及ばないから」だと思ってます。初演時も、今はもっと。つい田宮二郎を観たくなるのよ。
戦勝国に守られているだけで戦勝国のような顔をして、「世界2位の経済大国」なんて大きな顔をしていた恥ずかしい国。今急激に衰えたのではなくて、ずっとずっと前から‟何かを失っていた”んだなって、あの作品を見て改めて気づきました。
やっぱり石田さんはセンスがいいと思います。来年はショーつくってくれませんかね?

あと!鈴木先生お帰り~~~!!!

フィールドワークも含めて堪能した能登での『等伯』

宝塚以外の話します。

今年最大の「観てよかった!」は、圧倒的に『等伯』(無名塾)でした。
改めてずっと行きたかった能登演劇堂。仲代達矢さん率いる無名塾が、合宿で訪れていた縁でつくられた劇場なんですが、今年はその能登にまつわる演目ということで、絶対に逃せない!と。
夏休みをかねて無理やりスケジュールをこじ開け、行ってきました。

これはですね、また観劇記を書かせていただきます。
長谷川等伯という絵師の話なのですが、彼の‟望郷”の想いは身につまされるものでした。
生まれ育った能登を捨てて身を立てるために都にのぼる。そして、命を燃やして故郷を思って「松林屏風図」を描く。
それは単なる、田舎の連中都合の「やっぱり誰にとってもふるさとが一番だよね♪」みたいな‟ふるさと賛歌”なんかでは絶対にぜったいにありません。ぜったいに違う。ふるさとなんかくそくらえ、なんです、私たちにとって、本当は。
そのマーブルな気持ちを丁寧に描いた脚本と演出に、若き等伯と同じように‟ふるさとから逃げた“1人として心震えました。

でも、ここ(能登演劇堂の客席)で私を囲んで‟等伯”を見つめているのは、「捨てられたふるさとの人間」なんだよな……という。しかも、その私たちの焦燥の深層に気づきもしないで。ちょっとだけ気持ち悪い、観劇体験としては、良い意味で。

前日に七尾美術館にも足を運び、七尾の町を歩いて感じたこともありますので、これはまた観劇記としてまとめます。いつになるやら

‟めずらしく本が良いミュージカル”2本の対比

『ノートルダムの鐘』か『貴婦人の訪問』、というくらいミュージカルで本が良いのは珍しい

ミュージカル嫌いと自称はしていますが、今年は結構ミュージカルを観ました。
そのうち『RAGTIME』は脚本が本当に素晴らしかったです。人種や民族の問題とそれに起因する事件を濃密に描いたもので、正直言って日本人(アジア人=欧米人にとっては‟人種の外”の存在ともいうべき)の私には共感や没入はまったくできませんでした

でも、時間が経つにつれてそれが良いなと思うようになりました。
「世界中で愛される作品」って、逆に「世界中の誰にでもわかる程度の作品なんじゃないの?」と、演劇ファン25年やってきてうっすら気づき始めていたから。
「世界中で通用する」ことをめざしたり、ファンすらそれをたたえたりするけど。アイドルとか。なんかクソほどバカバカしいなって。

アメリカ人がアメリカ人にしかわからないことを一生懸命書いてつくって演じるミュージカルがあるんだ! といううれしい発見。
それをわざわざよその文化圏で上演する意味。アジア人やヨーロッパ人からすると「あんたらも元は移民やんか」と思ったりするわけです。マジで楽しかった。

ミュージカルって大体脚本や設定のアラを音楽性でゴリ押しする作品が多いですが、『貴婦人の訪問』『ノートルダムの鐘』に次ぐ読み応えのあるすばらしい本でした。
「アメリカ人ってよくわかんねぇな」が、心地よい。
世界は一つになりませんように、最高だなって思いました。

「本は良いのに音楽が……」という初めての体験

私がミュージカル嫌いな理由は、誰よりも音楽の力を信じているからでもあります。
脚本や設定のアラや書ききれない感情の動き、行間を、音楽で緻密に補完することができる。その圧倒的なパワーに感動するからこそ、そこに頼り切ったもの、ただただ「楽しかった~♪」とか、何のドラマ性や余情もないのに「良いことを言ってた!価値観がアップデートされてた!」みたいな作品がヒットするのが許せない。
なので、ミュージカルが嫌いというより、ミュージカルが好きな人が嫌いという方が近いのかもしれません。(※ 楽理的観点で読み下して議論する人は別。普通に良いオタク。尊敬する)

そんな私が「音楽がじゃましてるやん……」と思う作品に、25年で初めて出会いました。モーリー・イェストンの『DEATH TAKES A HOLIDAY』。

死神が休暇を求めて美しい女に恋をする、という設定や心の動きなど、すべてがおもしろかったのに、ほんっっっとにナンバーが酷いと感じてしまって。ずっとクライマックスのような終始大仰でやかましい曲調。私、イェストンは『ファントム』も『グランドホテル』も嫌いなのですが、それらは脚本の翻案が嫌いなのであって、ナンバーに難があるとは全く思わなかったんですね。なんだかんだ音楽がいいから支持されてるんだろうな、と留飲を下げていた。

それが、逆に音楽がじゃましてるな、と。
これは初めての体験でした。

じゃあ、逆にミュージカルのウリって何? と新しい疑問も。
楽しいミュージカルが観たい♪ みたいな人は依然多いけど、楽しくもないしね。演者が朗々と技術を発表できればいいのか? と。
新しく考えたいテーマをいただきました。

舞台ってやっぱり演者が9割、良くも悪くも

本は良いのに演者が苦手……に多く当たって感じたこと

結局演者が朗々と技術を発表できればいいわけ?という疑問。
その疑問も抱きつつ、自分としても「演者って大事だな……」と思った年でもありました。

今年は初めましてのカンパニーが少なくて、予想できないことが去年より少ないのにもかかわらず「どうしても演者が苦手」と思う作品に多く当たりました。
脚本家や演出家を信用しているのに、そんなその人が選ぶ客演なのに「苦手」と感じるのは何なんだろうな、と。これはおもしろいなと思いました。また、作品自体も面白いと思ったのに、この役のこの人が不快だ、みたいなことがノイズにもなる。
下手とかじゃないんです。苦手なの。技術やキャリアじゃないんですよ、これは大事なことなんだけど。

それがなぜか?という現時点での考察は、この記事の途中で分析しているのでよかったら読んでください↓

つまり、気づいたのは、そういう‟失敗”を極力回避できるのが「推し」を基準に観劇するというスタイルの利点でもあります。
一部の作家は「演者じゃなく作品を見てほしい」といいますが、作品を中心に見ていたのに演者がノイズで作品全体を不快に感じるという体験を経ると、作品がひどいことよりも演者が不快な方が私には耐えられないな、ということにも改めて気づきました。

よく考えたら当たり前なんですが、演劇の最大の魅力は人が目の前で演じていることなわけです。
やっぱり演者が9割。これからも舞台の上で輝く演者を第一義に見つめていきたいと思います。

劇団NARUTOの最終章によせて

「舞台は演者が9割」という主張に行き着いたのは、ナルステを通して8年にわたって演者の成長譚を見つめてきた経験も一助になりました。
大ヒット漫画『NARUTO-ナルト-』の世界を借りながらも、当時無名の演者が木ノ葉の子どもたちのように成長していく姿が一つの‟商品”だったと言えると思います。

元々大好きな原作、大好きな作家が8年かけて演者をスターに育てたこと。
こういう作品が、本当に「作品としての力がある」んじゃないの?
と思ったりしました。

だから、まるごと推せるカンパニーの観劇体験を大切に

そういったことを通して、私たちはどんなに舞台観劇が好きな人でも「失敗したくない」んだなと、今年改めて気づかされた1年でもありました。
だから推しばっかり見るわけだよね。推しが出てれば、とりあえず0点とか赤点は回避できるからね。
そういう意味では、宝塚はハズレを引きにくいうまい仕組みだと思います。どんなに作家に興味がなくて推し(贔屓)ばっかり見てる人でも、自分的ハズレを引きたくなければ「この先生は嫌い」とあたりをつけられるし、嫌いな演者がいる人はその人が出ている作品や組を避ければいいわけですから。

そういう観点で、宝塚以外で「カンパニーごと好き」と確定したのは‐ヨドミ‐さんでした。去年出会って衝撃を受けてほめたたえましたが、今年改めて「カンパニーごと好きだな」と確信しました。
藤丸さんの書く本も演出も好きだし、誰が主演しても全部好き
今年1年悲喜こもごもいろいろあったからこそ、それが奇跡のような出会いだと思うのです。本当にありがたい!

***

観劇記録なのでまとめはございません。
長々とすみませんでした~

舞台観劇ってどの程度の姿勢で観るかは自由だけど、感想や意見は自由じゃないと私は思ってます。
そういう、一見世間的には不確かで「みんな違ってみんないい」なんて思われているようなものを、理論と情熱で解き明かしていきたいなと思ってます。
2024年はますます具体的にエンタメにもかかわって世の中に貢献していきたいなと思います。

★★★2023年3月・書籍を上梓しました★★★

宝塚の座付き作家を推す!   スターを支える立役者たち 七島 周子(著)
四六判  280ページ 並製
定価 2000円+税
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074

https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787274533/

ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
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