就活解禁#ニコニコ内定塾#2017年就活編#8th#3/1
「いやー今年も来ちゃったね、就活解禁。忙しくなるなぁ。ねぇ斉木くん」
ブクブクと肥えた体にハイエナのような鋭い目つきで、一枚1000円以上する肉を頬張る。
「そうですねー。一斉に企業の採用サイトもオープンしましたし。また今年も野田様のために例年通り優秀な人材をご提供いたしますよ」
斉木はペコペコしながら野田と呼んだ目の前の男に酒を注いだ。
場所は赤坂。野田はとある企業の採用チームのリーダーで「ニコニコ内定塾」の取引先だ。
「ほら私も良い歳じゃない?もうそろそろ部長の座が回ってくると良いなぁって思っちゃってるわけよ。けど上からのノルマも厳しくてね‥ひとまずさ、早慶マーチ以上を20人、上位国公立を5人ぐらいお願いできる?」
「いやぁ、さすがに弊社としても中々厳しいところはありまして‥ほら最近優秀層はキラキラ系のベンチャーにも持っていかれがちでしてね‥御社のようないぶし銀的なかっこよさがわからないというか」
困り顔の斉木に向かって、野田の顔がにゅっと近づく。
「そこをなんとかお願いできないかな?今年は面接までで一人50万円、内定承諾でプラス50万円出すからさ」
野田は現在47歳。採用チームリーダーを5年もやっており、もう部長になるか、そのまま地方に流れるか、どちらかの道しか残っていなかった。
今年が勝負の年だ。野田は直感的にそう感じていた。自分が採用リーダーになってから今まで以上に「良い人材」を採用してきた自信もある。
別にそれは野田個人が優秀だったわけでは決してなかった。
今まで成果を上げることができたのは、「ニコニコ内定塾」のような就活斡旋業者をうまく使って来たからだった。
就活斡旋業者は、簡単にいえば企業に学生を斡旋する企業だ。
業者側は企業側のニーズを汲み取り、大学のランク、出身校のランク、参加していたインターン‥そのような情報と共に学生の企業に紹介する。
紹介したあとは簡単で、紹介された学生が面接を受ければ〜円、内定承諾をすれば〜円、と決まった単価を支払う。
「結構な金額いきますね‥」
少し驚いた顔で斉木が呟く。
「下手に就活エントリーサイトにお金払っても私のような企業は中々効果が得られないからね。だって学生にダイレクトメール出すだけでも結構お金かかるんだよ?」
それに‥と野田は薄気味悪く笑う。
「ニコニコさんのご紹介いただく学生は評判いいんですよ。色々とね」
○この物語はフィクションです。実在する団体や個人、事件などは一切関係がありません。