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「会」にする

私はかねてより、歴史的名作に疎いという悩みがあった。絵画、彫刻、音楽、映画などの様々な作品ジャンルにおいて、その歴史に必ず名を刻んでいる有名な作品やその作者について、自分は全然知識が足りていないと常日頃思っていたのである。

ある作品が歴史に残っているということは、「少なくとも当時は」何かしら革新的な要素があったということだと思っているのだが、それが後世に影響を与え、現代ではスタンダードになっているケースも多く、現代の人々からすると何がそこまで良い(新しかった)のか分からない場合も多いのだろうと思う。
例えば名作とされている映画のレビューの中には、基本的には絶賛されていたとしても、必ずといって良いほど「テンポが悪く退屈だった」「ありきたりな表現ばかりだった」のような感想が書いてあるのを発見できる。
正直に言ってしまえばその気持ちが理解できないわけではなく、テレビなどで昔の名作映画が放映されていても、数年前までの私は退屈だと思って観ないことがほとんどであった。

しかし、歴史に残っているものは個人の好みは置いておいて、必ず歴史に残ってしかるべき点があるはずであり、自分の身近な分野においてはやはり知っておいたほうが良いと思う気持ちが年々強くなってきたのである。

そこで私はまず、名作映画として世間的に有名なもの、世界的な映画祭で賞を取った映画、映画史で必ず名が上がるものなどをざっと調べ、リストにまとめていった。
そして、実際にそのような映画をたくさん集めてみると、やはり実際に観てみるにはなかなか覚悟が必要だった。私が生まれるより何十年も前の白黒映画などもたくさんリストには入っていたのである。

そこで私は数ヶ月前、思い切って「名作映画を観る会」を立ち上げた。
「会」というのは、自分だけではなく、友人など他の人を誘って映画を観るということである。
やることはシンプルで、事前に決めた映画を同じタイミングで各々鑑賞し、観終わったら通話をつないで感想を話し合う、というだけである。

これが我ながら、とてもよい効果を生んだ。
観終わったら感想を言い合わなければいけない為、1人で観るよりも断然集中して観ることができ、感想を話せば自分では気がつかなったことを言ってくれる人がいる為、とても盛り上がるのである。
私はすっかりその会が楽しくなり、数年前までの自分では考えられない量の映画を観ることを習慣にすることができたのである。
(そしてもちろん、名作と呼ばれる映画は観てみると本当に面白いものが多いということに気がつくことができた)


実は私は、このような「〜の会」を今までにいくつか立ち上げている。
やったほうがいい、やってみたい、と思っていてもなかなか1人で実行するのが難しいとき、他の人を巻き込んで協力してもらうのは、オーソドックスではあるがとても強力な手段である。
巻き込んだからにはある程度の緊張感と責任感を感じて取り組むことができ、いつしかそれは習慣になるのである。

勉強やダイエット、楽器の練習など、継続が大切なあらゆることに効果があると思うので、習慣化するのが苦手な人にはぜひオススメしたい。

そして、毎週欠かさず更新している『週刊 ん?』の活動も、実は私が始めた「会」の1つなのであった。

遠藤紘也
ゲーム会社でUIやインタラクションのデザインをしながら、個人でメディアの特性や身体感覚、人間の知覚メカニズムなどに基づいた制作をしています。好きなセンサーは圧力センサーです。
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