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【最終・感染症後の世界】未来をノックする#2 物理的なものの(再)デザイン

こんにちは。シンラボ共同代表の草場です。

昨日のイーロン・マスクが使っている公式?は、X PRIZEファウンダーのピーター・H・ディアマンディス氏の著書『ボールド 突き抜ける力』のフレームワークそのものでした。読み直し中。

超有名オライリーメディアの創業者ティム・オライリー氏が、感染症後の世界で必要なテクノロジーについて書いた本、「21 Technologies for the 21st Century」をまとめてきました。
いよいよ最後の第三部、「The Future Is Knocking」についてまとめます。

14. 物理的なものの(再)デザイン
15. ビジネスモデルの革新
16. 材料科学
17. プロセス制御
18. 生命科学
19. 規制・規制市場との関わり
20. より長い時間軸
21. 多様性

今回は、「物理的なものの(再)デザイン」について書きます。

14. 物理的なものの(再)デザイン
シリコンバレーは今ではソフトウェア新興企業の代名詞です。しかしもともとは、すべてのことに関係していたそうです。

シリコンバレーは、ハードウェア(真空管からシリコンベースのトランジスタへの移行、個々のトランジスタから集積回路への移行、そこからネットワーク化されたコンピュータの大量供給)に関係していた。Appleはシリコンに至るまでのフルスタック企業であり、GoogleでさえもDNAの一部として大規模なハードウェア革新を行っており、コモディティPCから大規模にスケーラブルなシステムを構築して管理する方法を見つけ出し、自動運転車やドローン、コンシューマー機器などの新しい分野でハードウェアの革新を続けている。Facebookもハードウェアの実験を行っている。

しかし、このハードウェアベースの流れが変わっているそうです。

次世代の企業では、ハードウェアとソフトウェアの両方で同期したフルスタック・イノベーションが、重要になっている。

フルスタックは聞き覚えない言葉かもしれないです。フルスタックとは複数の技術分野の技術・知識に精通していることを指します。以下の記事に詳しいです。


未来のスタートアップには、機械学習の開発者だけでなく、冶金家や化学者、電気・光学エンジニア、ソフトウェアエンジニア、遺伝学者や生物学者、制御システムエンジニアなどが含まれるかもしれない。

このことをよく理解するには、シリコンバレーの起源を学ぶ必要があります。最適な本は、 Margaret Pugh O'Mara氏の『The Code』(英語)だそうです。

これは、すべての起業家が学ぶべき歴史であり、新しい産業の進化段階を思い起こさせるだけでなく、富が期待される結果ではない場合に、偉大な起業家のモチベーションを高めるものが何であるかが書かれているからだ。
私たちは、起業家精神が人気投票ではなく、困難で未解決の問題を解決することを必要とする新しい時代に突入している。そしてそれは、私たちが何をどのように作っているのか、それがどのように作られているのかについて、新鮮な思考を必要としている

『The Code』、必読です。
ではこの新しい時代に必要な新鮮な思考とは何か?ここで、テスラのデザイン・ディレクターの話が紹介されています(エッセイ「How Tesla Will Change Your Life」)。

"我々がモデルSを始めたとき、それはきれいな一枚の紙だった" 。これはすべて、スティーブ・ジョブズがAppleで行っていた方法に酷似しているように聞こえました。ジョブスは「非常に素晴らしい製品」を作ることに執着し、他の企業が何をしているかには目を向けず、常に紙一重の視点で物事を考えていました。Appleが携帯電話を作ろうと決めたとき、彼らはより良いブラックベリーを作ろうとしたのではなく、「携帯電話はどうあるべきか」を問い続けました。

「新しい製品モデルをデザインする」、ということではなく、「そもそも携帯電話のデザインはどうあるべきか?」「車のデザインはどうあるべきか?」を考え直すということでしょうか。
デザイン、というと物理的なデザインを考えてしまいがちですが、それが動作するシステムのデザインも必要です。

変化は見慣れた風景の上では起こらない。変化は風景そのものを構築しなければならない。これが、テスラが挑戦してきたものが非常に巨大なものである理由の一部だ。

風景そのものの再構築。あまりイメージが湧きません。オライリー氏はフォードの例を用いて説明しています。

ヘンリー・フォードはただ車を作っただけではなく、車とは何かを定義する風景を作ったのだ。それ以来、自動車会社はフォードの風景の中で仕事をしてきた。

車とは何かを定義する風景。イメージできるようなできないような。。。

テスラはすべてを変える必要があった。大きな転換点は、真の長距離電気自動車を作ることだった。ネットワーク化されたセンサー技術を設計に統合したことも大きな変化だった。販売店を経由せずに消費者に直接販売することも大胆な動きだったが、最も大胆なのはテスラのスーパーチャージャーネットワークの構築だった。イーロン・マスクは、「走行距離の不安」が電気自動車の採用を遅らせている大きな理由の1つであることに気づいた。ガソリン車はほぼどこでも満タンにすることができるが、電気自動車は自宅やオフィスの充電ステーションからの狭い距離に縛られていた。
解決策は、全国規模の超高速充電ネットワークで、Teslaのオーナーは無料で利用できるようにすることだった。
これはゲームチェンジャーだった。

うーん、フォードが作った風景、イーロン・マスクが作った新しい景色がうまく表現できません。もっと考えなければ。

では、上記の筋書きを使って、世界の他の化石燃料をベースとしたエネルギーネットワークを再デザイナするとしたら、どうか?「The Green New Deal: The enormous opportunity in shooting for the moon.」というエッセイの中で、以下の提案がされています。

"電化という単なる行為は、効率性に強力な効果をもたらす。カーボンフリーの電源から米国経済を電化すれば、必要なエネルギー量を半分以上減らすことができる。"

化石燃料を電気に変換する際にエネルギーが失われますが、採掘・精製・流通・輸送時にも失われます。また、車ではエネルギーの7割以上は熱として無駄に使われており、車を動かすために3割程度しか使われていません。そのため、電気を使う行為自体がエネルギーの効率的な利用につながるということです。さらに、電気を現地で発電できれば、移動コストの節約になります。

AppleがiPhoneでやったように、テスラが電気自動車でやったように、「世界の他の化石燃料をベースとしたエネルギーネットワークを再デザインする」ことは、巨大な創造的なデザインのチャンスだ。単に以前のものから始めて、少しずつ手を加えていくのではなく、「どのようにしてエネルギーを供給するべきか」を再デザインするのだ。

携帯電話がどうあるべきか?車はどうあるべきか?を考えぬいたように、「エネルギーはどう供給すべきか?」をデザインしなおすということですね。
ジョブスが携帯を革新しよう、イーロン・マスクが車を再設計しようと思ったモチベーションが気になります。これは、自分のビジョン次第ということでしょうか。
デザインしなおすとは何か?

再デザインとは、あらゆる前提に立ち返り、物理的な制約、ビジネスモデル、システムにセンサーやインテリジェンスを組み込む機会を再検討することを意味する。

まずはどのような世界を構築したいか、考え抜くことにします。

最後にAIがデザインする可能性に関して記載があります。

ジェネレーティブデザインのような新しい機能はまだ黎明期にあり、現在は一連の物理的制約に対してデザインの選択肢を提供している。しかし、最初は人間のデザイナーのための創造的な選択肢を開くためだけであれば、AIが新しいビジネスモデル、美的選択、組み込み機能を提案する可能性もあると考えるに足る理由はたくさんある。

一文一文が含蓄ありすぎてまだまだ議論足りませんが、本日はここまで。

明日は「ビジネスモデルの革新」に関して。

草場壽一
https://sinlab.future-tech-association.org/

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