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【AIと意思決定】複雑だがリスク減らせる!『予測マシンの世紀 第二部』#20

こんにちは。シンラボ共同代表の草場です。

AIとの共同に関して、『予測マシンの世紀 AIが駆動する新たな経済』をまとめていきます。推理小説のようで、ドキドキワクワクです。

目次
はじめに―機械知能
安さはすべてを変化させる
第1部 予測
第2部 意思決定(決断を解明する;判断の価値 ほか) 
 第七章 決定を解明する
 第八章 判断の価値
 第九章 判断を予測する
 第十章 複雑さを飼いならす
第3部 ツール(ワークフローを分解する;決断を分解する ほか)
第4部 戦略(経営層にとってのAI;AIがあなたのビジネスを変容させるとき ほか)
第5部 社会(AIと人類の未来) 

第二部、決断に関してです。昨日の記事は以下です。

■複雑さを飼いならす
昨日は、より多くの"then"を扱うことが可能になったおかげで、空港のラウンジを無くせる可能性があることを見ていきました。今後、より多くの"if"、より多くの"then"を扱えるようになります。本日はここをまとめます。

予測能力が高まれば、より多くのことをより頻繁に予測できるようになり、不確実性が減少する。また、新しい予測は、以前は考えられなかったような選択肢を可能にするという間接的な効果もある。

予測マシンをフル活用することで、不確実性をほぼ無くすことができ、新たな選択肢を選ぶことが出来ます。いいぞ。しかも、"if"、"then"を細かくコーディングする必要は無いです。今まで本でみてきたように、人間がどのようにふるまうかを予測マシンにトレーニングさせればよいからです。

"if "や "then"を明示的にコード化する必要はない。例題を使って予測マシンをトレーニングすればいいのだ。今まで予測問題として理解されていなかった問題も、予測問題として取り組むことができるようになった。私たちは、気づかないうちに妥協していたのだ。

昨日見たように、状況が複雑だと人間は適当な部分で妥協しますが、予測マシンのおかげで複雑な状況に対応できるようになりました。もう妥協の必要がないわけです。

人間の妥協に関しては、本でさらに議論しています。

人間が意思決定を行う際には、このような妥協が重要なポイントとなる。ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンは、これを「サティスファイシング」と呼んだ。古典的な経済学では、超知的な人間が完全に合理的な意思決定を行うことをモデル化しているが、サイモンは、人間は複雑さに対応できないことを認識し、彼の研究で強調した。人間は複雑さに対応できず、目的を達成するために最善を尽くすことで満足する。考えることは難しいので、人は近道をする。

サイモンさん、すごい人みたいです。ノーベル賞だけでなく、チューリング賞も受賞。サイモンさん曰く、コンピューターは処理資源が限られており、限られた時間内に限られた数のステップで、限られた数の処理しか実行できないそうです。彼は、人間のようにコンピュータも満足するものだと認識していたと。このことを認識するには、練習が必要だそうです。

より良い予測が可能にする可能性を想像するには、練習と時間が必要だ。多くの人にとって、空港ラウンジが予測の甘さに対する解決策であり、強力な予測マシンの時代には価値が下がると考えるのは直感的ではない
私たちは満足することに慣れすぎていて、何かを決めるときに予測が必要だと考えることさえない

なんで空港ラウンジが必要か、確かに理由はわかりませんでした。人間は妥協に慣れすぎていて、予測精度が上がって複雑な状況に対応できる時にどう考えればよいか、慣れていないのですね。このことさえ、認識していませんでした。

さて、もう少し、今まで予測問題でなかった問題を予測問題として捉えなおす点をもう少し議論します。第九章でも議論しました。

まずは翻訳です。

翻訳の例では、専門家は自動言語翻訳を予測の問題ではなく、言語学的な問題として捉えていた。文法的なルールを設定していた。これでは、「もしも」の数が多すぎて、翻訳精度が上がらなかった。翻訳が予測問題となったのは、翻訳が一文ごと、あるいは段落ごとに行われる可能性があることを研究者が認識してからである。

どうしても、ルールベースで考える頭があるので、"if"→"then"ルールをコーディングしたくなりますが、ここを練習して「人間だったらどうするか」を予測する問題として捉えなおす必要があります。練習だ。

予測マシンによる翻訳では、相手の言語に相当する可能性の高い文章を予測する。プロの翻訳者がどのような文を使うかというifを予測し、最適な翻訳を選択する。このシステムには言語学的なルールは一切ない

もう一つの例として本では、放射線科医の仕事が取り上げられています。放射線科医の仕事は、画像を撮影して、問題点を特定することです。その際、画像の異常を予測します。この場合の重要な性能指標は、診断の精度です。患者が病気のときにマシンが病気を予測し、患者が健康なときには病気がないと予測するかどうかです。この判断には何が必要かを考えなければなりません。ここを分解します。

例えば、医師がしこりを疑い、それががんであるかどうかを判断する方法を決めなければならないとする。二つ選択肢があります。
一つの選択肢は医療用画像処理
もう一つの選択肢は、生検のような侵襲的(手術)なもの
生検は、正確な診断ができる可能性が高いが、生検は侵襲的だ。したがって、医師も患者も、問題が深刻である可能性が低い場合は、生検を避けたがる。放射線科医の仕事の一つは、侵襲的な処置(手術)を行わない理由を提供することだ。
理想的なのは、重大な診断を確定するためにのみ手術を行うことだ。生検にはコストがかかる。生検を行うかどうかは、生検自体にどれだけの費用と侵襲性があるか、病気を見過ごしてしまうことがどれだけ悪いことなのかによって決まる。
医師はこれらの要素をもとに、生検が侵襲的な処置による肉体的・金銭的コストに見合うかどうかを判断する。

この判断の際、予測マシンの予測精度が低いとリスクが高まっていました。画像から信頼性の高い診断が得られれば、患者は侵襲的な生検を行わずに済みます。予測マシンの精度が上がった今、もはや妥協する必要はないのです。

AIの進歩は、満足のいく結果を得る必要性が減り、"if "や "thens "が増えることを意味する。より複雑でありながらリスクは少ない。これにより、選択肢が広がり、意思決定が変わる。

より複雑な状況に対応して予測ができます。複雑な状況でありながらリスクを減らせるという状況になりました。咀嚼できていないですが、これを踏まえてどのような戦略を立てるか、考えていきます。

草場壽一
https://sinlab.future-tech-association.org/




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