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【ショートショート】オオノとオノ

あるところに県立A高校にごく平凡なB組というクラスがありました。

B組には「おおの」という名字の生徒が3人、「おの」という名字の生徒が1人いました。

整理すると、このクラスには、
・大野
・大野
・大野
・小野
という生徒がいました。
大野性と小野性はこの県では珍しく、このクラスのほかに、この学校にはいません。

ある時、学校のシステムにログインさせるために、学校のメールアドレスを発行しました。
メールアドレスは「名字生年月日@ドメイン」の形でした。
生まれた年が入るので過去の生徒とメールアドレスがかぶらず、クラスが変わっても使い続けられるようにです。

大事な生徒の名前を間違えないように、担任はメールアドレスを生徒に登録するように促しました。
幸い3人いる大野たちの誕生日は同じ日ではなかったので、登録はスムーズに進みました。
無事に登録を終え、担任は一安心しました。この担任は新米で、初めて持つクラスでの仕事だったからです。

それ以降、大事な連絡はシステムから直接生徒にメールが行くため、担任はメールを使うことなく、時が経ちました。

そして、メールアドレスを登録したことを忘れた頃のある日、担任は大野3名と小野を含む何人かに連絡があるため、メールを立ち上げました。

そして生徒のアドレスを検索しようとしたときに、問題は起きました。

「Oono」と入力して、出てきたのは1人だけだったのです。
「何かの間違いだろう…」

担任は冷や汗をかきました。
そして先に他のメンバーを追加してから"大野探し"をすることにしました。

しばらくして今度は小野のメールアドレスを探そうと「Ono」と検索したときにまたもや事件が起きました。

今度は「Ono」の検索結果に2人のアドレスが該当しました。
一瞬の空白の後、担任は気づきました。
「そうかそうか。この2人は大野と小野か。大野はOの上に棒がつくタイプの大野だったのか。」
このことに気付いた担任は、ヒットした「Ono」から始まるアドレスを全て宛先に加えました。

そして先程ヒットした「Oono」のアドレスもメールの宛先に加えました。

「あと1人の大野はどこにいったんだ…」
担任は頭を抱えました。

しばらく試行錯誤し、ネット検索もして数分、ようやく最後の大野にたどり着きました。
「こいつOhnoだったのか!こんなんオーノー!マンマミーヤ!のオーノーだろ!こんなんありかよ…」

3人の大野と1人の小野は、実は、
・大野(Oono)
・大野(Ohno)
・大野(Ono)
・小野(Ono)
だったのです。

メールアドレスを探すだけで四苦八苦の担任は、疲労困憊の顔でメールを送信し、金曜日の学校を後にしました。

翌週の月曜日、担任は恨み半分で大野を呼び出しました。OhnoとOnoの大野です。

担任「おいOhno、お前のメールアドレスO-h-n-oで登録されてたけど、どういうことだ!普通はO-o-n-oじゃないか?」

Ohno「はあ、」

担任「お前のおかげでメールアドレス探すの大変だったんだからな!」

Ohno「と、言われましてもパスポートもOhnoなので、、、」

担任「え!そうなの、それはすまんかった」

担任は納得いかなかったけれど、行き場のなくなった恨みを心にしまいました。
そして次に、Oを伸ばすタイプの大野を呼び出しました。

担任「おいOno、お前のメー…」

Ono「そう言われましても、パスポートもOnoなので、、、」

担任「まだ何も言ってない!けどそうなのか…すまん」

担任の恨みの行き場は完全になくなってしまいました。
この一件以降、この担任は大野恐怖症になりました。行く先々で出会う大野さんに対して
「大野さん、すいませんが英語のスペルを教えてもらえませんか…」
と尋ねずにはいられなくなってしまいました。

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