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【逆噴射小説大賞2020】自作まとめ+α

逆噴射小説大賞2020が終わってしまった……!

今回は前2回と比較してもめちゃくちゃレベルが高く(※ 個人の感想です)、参加者目線でも読者目線でも、最高に楽しいお祭りだった。

ほんと楽しかった……。

そして今、参加者の皆様がどかどかと自作のライナーノーツ的な何かを書いている。他の人のライナーノーツを読むのはめちゃくちゃ楽しい! ということで、せっかくなので僕も書いてみることにした。

前置き

この文章では「今回参加するにあたって考えていた僕のスタンス」そして「各応募作では何を描きたかったのか」「読者の声(抜粋)」等を書いてみようと思う。

一方で「今回参加するにあたって考えた戦術・戦略」などのテクニカルな話題には触れない。それは結果が出てから、あらためて反省や次の展望などと共に書いた方が面白そうだからだ。

ということで、前置き終わり。

僕のスタンス

やはり3回目ということもあり、開催前・開催中に「逆噴射小説大賞ではこうした方が有利」「こうすべき」みたいな話題を目にすることが多かった。僕もそれは理解しつつ、でも今回は敢えてこういうスタンスで臨んだ。

・ 逆噴射小説大賞向けの分析や攻略は一切しない。
・ 自分の作風を研ぎ澄ますことに専念する。
・ 結果や周囲の評価に対して、期待を抱かない。
・ 「物語の強度」を最重視する。

念のため補足すると、ダイハードテイルズ公式によるTipsはしっかり念頭に置いている。そのうえでTipsの範囲を超えた「こうあるべき」「この方が有利」には惑わされないし、自分の中で妙な思い込みや予断をもって臨むことはしない、ということを言い聞かせていた。

やはり賞だし、人が選考するものなので間違いなく有利不利や傾向はあると思う。でも……。

畢竟、800字で有無を言わさず惹きつければいいだけなのだ!

そこにフォーマットなどあるだろうか? 無いよ! そして逆噴射小説大賞とは逆噴射先生が開設した道場という側面もある(※ 個人の妄想です)。その道場の中で1年間錬磨した自分の技を披露するわけだ。

そしてその磨かれた技は道場の外でも通用するものでなければ意味がない。もちろん「逆噴射小説大賞で大賞を取る」をゴールに設定している人であれば、それに特化した技を磨くのもいいだろう。

でも、少なくとも僕はそうではない。磨いた技は日々の営みの中で生かしていきたいし、その過程でさらに技を磨いていく、という循環の中に身を置きたい。

だから僕は自分の武器を研ぎ澄ます。結果はあくまでも、その副産物に過ぎない。

「結果や周囲の評価に対して、期待を抱かない」もそこから必然的に導かれた話で、どうしても一喜一憂してしまうものだけど(具体的にはスキの数とか)、それに対して事前に期待は抱かない。

俎板の鯉じゃないけど、結果や周囲の評価は僕の今の等身大の力量を反映したものに過ぎない。そのうえで、結果を踏まえ、あらためて自分の武器を研ぎ澄ますサイクルへと戻っていく……それでいいのだ。

最後に「物語の強度」。これは逆噴射小説大賞に限らず、小説を書く上で常に念頭に置きたいと思っていることで、逆噴射先生の言うところのR・E・A・Lに通じるものだと思っている。言葉の技巧的な面白みとか、ワンアイディアの強みとか、そういうのも大事だけど、何よりも物語自体が強度を持たなければ意味がない……。

と、長くなってしまったけど事前にそんなことを考えていた。

それでは、作品紹介をやっていきます。

決戦街トーキョー

第一弾。自称「逆噴射小説大賞2020で最もスケールのでかいバトルもの」。
今回の応募作の中で一番気合いを入れて書いた。そういう意味では、僕の作風が一番色濃く出ている作品だと思う。

2018年の第1回逆噴射小説大賞の後、2019年の第2回に突入するまでの間にメモっていたネタ帳に「都市人間」という言葉がある。それがこの「決戦街トーキョー」の元イメージで、つまり、かなり以前から検討していた物語だったりする。

当初は「知性を持った都市同士が戦う」みたいなことを考えていて、比較的コメディ寄りな雰囲気だった。それが去年の逆噴射に応募した「慟哭の巨人ゼガン」のイメージや設定と混じり合い、今のシリアスな形になっていった。

以前から公言しているように僕は富野由悠季が好きで、イデオンのような壮絶で神話的な物語を書いてみたいという欲望がある。だから今回、とにかく800字の中にひりつくような空気感とか、壮大なスケール、神話的な描写などを織り込みたいと考えていた。

ちなみに初期稿にはこんな描写があったりする。

 ハルトは大きく息を吐き、上空を見た。黒雲渦巻く空には無数の輝きがあった。神のごとき巨人たちの降臨である。

「被害報告ッ!」
『マチダ市街、全壊』
「二十三区外など……捨てろ!」
『街律承認。マチダ、パージします』

 パージと同時。ハルトは構えた。

最終的に、こういうギャグと受け止められかねない描写は徹底的に排除した。なぜなら、これは壮絶であるべき物語だからだ。結果として、読者にそういった意図が伝わったのかは、確信を持てていない。ただ僕としてはけっこう気に入っている。来年、できれば続きを書きたいなあ、という気持ちがある。

読者の皆様の声(抜粋)

皆様、ありがとうございます……!

魔導士 狭間来夢

第二弾。自称「逆噴射小説大賞2020、唯一の二人称小説」。魔術、耽美、そしてミステリー。そういうものを描きたいという欲望があって、美しくもドロドロした雰囲気を出したくて、謎の語り手の独白からはじまっていくようにした。

今回の応募作の中で、周囲の評価という点では一番手ごたえがない作品で、一瞬、僕も「おっと、もっと時間をかけて推敲すべきだったかな……」と思ってしまった(評価は期待しないとか言いつつ!)。

でも自分であらためて読み直してみると、これはこれでやはり良い。絶対に面白くなるやつなので、いつか続きを書いてみたいと思っている。課題としては狭間来夢の扱う魔術がわかりづらいので、そこをうまく描写することと、謎の語り手の独白とのバランスをうまく取ることだろうな……なんて思っている。

読者の皆様の声(抜粋)

ありがとうございます……!

彼方へ

第三弾。自称「逆噴射小説大賞2020で、一番、未知への憧憬を描いた作品」。これはもともとネタ帳にも書かれてなく、他の作品を書いている最中に突然降ってきて、そのままパパッと書けてしまったやつ。

とにかく筆致を抑えて静かに、詩のように、未知の世界の謎とそれへの憧れを描いてみたいと思った。パパッと書いてしまったせいで推敲をあまりせず、読み返してみると「あー、ここはこうした方がいいな」みたいなところもあるんだけど、それも込みで、僕の中の初期衝動みたいなやつがうまく込められていると思う。これもいつか、きちんと続きを書きたい!

読者の皆様の声(抜粋)

皆様、ありがとうございます……!

ウルガンの孤独

第四弾。自称「逆噴射小説大賞2020で、最もパンクしている小説」。

もともと逆噴射小説大賞の最中にあった10月10日のダイハードテイルズ・レディオ、朱鷺田祐介さんゲスト回で、「何が物語をサイバーパンクたらしめるのか」という質問に対して朱鷺田祐介さんが「サイバーパンクなどのパンクは、字義通りのパンク、反骨の精神で、まずそれがなければサイバーパンクではない」(うろ覚え)的なことを話されていて、それを聞いた瞬間、電撃が走ったように「そうであるなら、僕はパンクを書かなければならない!」と思ったのが発端。

冒頭の市場の様子など、オーセンティックなサイバーパンクの雰囲気を借りつつ、まったくの異世界を描いてみたかった。あとサイバーパンクではトランスジェンダーなども重要なので、それも視野に入れた世界観にしている。

これもしっかりと続きを書きたい。ただ、かなりの長編になりそうな予感がする。

読者の皆様の声(抜粋)

皆様、ありがとうございます……!

セツナの久遠

最後の弾丸。自称「逆噴射小説大賞2020で、最もカメラが多い小説」。

これはかなり紆余曲折したやつで、実は狭間来夢と同じぐらいのタイミングで書き始めていた。二人の男の戦いを軸に置こうということだけははじめから決めていて、その闘争が宇宙的な永劫の闘争へと発展していく……みたいなイメージだった。

ただ何パターン書いても納得がいかず、「あー、これはもうお蔵入りかな」と思い始めた時に、天啓のように「今まで書いたパターン、全部盛り込めばいいじゃん」と閃いた。そして、今の形へと練り上げられていった。

これも続きを書きたい。ただ「ウルガンの孤独」と同様、これもかなりの長編になりそうな予感がある……!

読者の皆様の声(抜粋)

皆様、ありがとうございます……!

最後に

無事五作、今の自分の持てるものを尽くして書けた……と思いたいけど、果たしてどうだろう。「もうちょっとやれたのでは!?」という気持ちもけっこうある。

ただ、やっぱり逆噴射小説大賞は特別な祝祭の雰囲気があって、結果に対する想い以上に、とにかく「楽しかった!」という感覚の方が強い。ほんと楽しかった! 来年も参加したい! 参加する!

実は第2回の時から、何度もモノにしようとして没にしているネタがあって、次回こそはそれを投入したいなあ……なんて思っている。自分で言うのもなんだけど、あきらかにブルーオーシャンなネタで、絶対面白くなる。がんばろう。

それでは、最後に。

参加者の皆様、読者の皆様、関係各位、審査はこれからですが、ひとまずお疲れ様でした。一読者として結果がどうなるか……非常に楽しみです。

【おしまい】

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