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なんで学ぶの?教えるの?Udemy講師が「ロウソクの科学」を読んで考えたこと

最近、僕が教える意味ってなんだろうなあ、と考えることがあります。
世の中には素晴らしいIT学習コンテンツがたくさんあるし、素敵な講師さんもたくさんいる中で、僕の講座を選んでもらう理由ってなんだろう?

そんな気持ちで六本木の文喫に行ったとき、ファラデーの「ロウソクの科学」を見つけました。

ファラデーは高校物理に登場する「電磁誘導の法則」を発見した科学者で、この本は彼が子ども向けに行っていた「クリスマス講演」を記録したものです。
講演の内容が本になって、160年後の今でも読み継がれる…まさに伝説の授業ですね!

僕がUdemyなどで教える仕事をしているのも、学生時代にこの本を読んで「ファラデーみたいな人になりたい!」と思った経緯があります。

ものを教える立場になったいま改めてこの伝説の授業を読み返して、学ぶこと、教えることについて考え直してみることにしました。

学ぶことは、興味を持つこと

教える立場になって読み返すと、ファラデー先生の講義の魅力は「問い」の立て方にあるのだ、とわかります。

「ロウソクの科学」講義のイントロダクションはこうです。
ファラデー先生が色々な形のロウソクを見せて、この固体部分が燃料ですよね、このヒモに火をつけますよね、と当たり前のことを説明する。そしてロウソクに火をつけてこう問いかけます。

ロウソクの燃料は個体なのに、炎のある場所までどうやってたどりつくのでしょうか。

ここではっとします。
たしかに…なんでだろう…

ロウソクが燃えるなんて当たり前のことなのに、こんな単純な問いに答えられない。なんでなんで?その後も、先生は問いを続けます。

火のついたロウソクを逆さにすると?

炎はどうしていつもこの形になる?


この講義では「科学を勉強すると何の役に立つのか」という話をしません。意外ですよね。なぜこれを学ぶのか?って、どんな教科書でも必ず最初に書いてあるものです。

ファラデー先生は、分かりそうで分からない問いを立て、その答えを実験で見せることを繰り返して、もっと知りたい!学びたい!という気持ちを育てていきます。
きっとこの講演に参加した子どもたちは、科学を学ぶ意義なんて知らなくても、家に帰って科学の実験をしたでしょう。


ここで気づいたこと…
学ぶというのは、知識を得ることではなくて「興味があるからもっと知りたい」という気持ちを深めることなんじゃないでしょうか。


IT講座をやっていると、仕事に役立つ知識やテクニックを紹介することが喜ばれます。実際、Udemyでもそういう趣旨の講座が流行りますし、もちろん僕もそれを意識して講座を作っています。
でも、ファラデー先生の講義を受けると、知識を増やすことと学ぶことは違うんじゃないか、という気持ちになります。

役に立つことだけを選んで学ぶよりも、興味のあることを見つけて深める方が、最終的に自分らしいスキルが身についてメリットが大きいはずです。
つまり、なにかを学ぶときには「何の役に立つのか?」よりも「これのどこに興味を持てそうか?」という気持ちを持つことが大事なんだと考えました。


教えることは、興味を持たせること

学ぶことが「興味を持つこと」だとすると、教える人の役割は「興味を持たせること」だと考えられます。

ここで大事なのは、ファラデー先生は子どもたちをただ喜ばせることを目的にしていたのではない、ということです。
講演のスポンサーである研究所や王室の大人たちには、科学教育と科学者育成の重要性や、それを実行するためのクリスマス公演であることを強く語っているんですね。

つまりファラデー先生は、次世代の科学者を育てる手段として「科学を学ぶことは大切だよ!」ではなく「科学は面白いよ!」というメッセージを選んだのです。

文章にすると大したことではなく見えますが、教えることを仕事にしている方はどう感じるでしょうか。たとえば僕は…「ITを学ぶことは大切だよ!」という話から始めています。


役に立つ話は、コンテンツが同じなら誰でも大体同じ講義ができます。
でも、興味を持たせる話は、そのテーマに対する深い理解や相手に合わせたコミュニケーションが必要で、コンテンツ以外の能力が試されます。講師として選ばれ続けるには、コンテンツの面白さよりも、興味を持たせる力を磨くことが大切なのではないでしょうか。


教えることを仕事にしているいま「ロウソクの科学」を読み返すと、ファラデー先生の講義の素晴らしさがより深く理解できました。

いま何かを学んでいる方、教えている方、双方に発見のある本です。ぜひ読んでみてください。

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