見出し画像

新刊のご案内【集英社文庫5月刊】

みなさんこんにちは。
集英社文庫noteです。

ゴールデンウィークも明け、5月も終わりを迎える今日この頃。
徐々に暑さを感じる日も増えており、季節の移り変わりを感じます。
つつじが満開になっていたり紫陽花が咲き始めたり。
緑が元気な季節なので、ふと目をやると心が和みます。

さて、5月21日に集英社文庫の5月刊が刊行されました。
今月は11作品。
心に潤いを与えてくれる味わい深い作品や、学びを得ることができる作品が多く登場しています!
こちらの記事では、それぞれの魅力をご紹介していきます。
みなさんのお気に入りの一冊が見つかったら幸いです。


話題のすばる文学賞受賞作と芥川賞作家が描く意欲作

まずはこちらをご紹介。

左から『ミシンと金魚』『水たまりで息をする』

『ミシンと金魚』
永井 みみ

各紙誌で大反響を呼んだ衝撃のデビュー作、文庫化。
「あたしはいったい、いつまで生きれば、いいんだろう。」
暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……。認知症を患う老女カケイの
絡まり合う記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」!

「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」。
ある日、ヘルパーのみっちゃんから尋ねられた〝あたし〟は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。
母が自分を産んですぐに死んだこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと、赤ん坊を背負いながら毎日毎日ミシンを踏んだこと……。
諦念と悔悟を抱えた老女が、最期に手にした幸福とは——。
第45回すばる文学賞受賞作。

『水たまりで息をする』
高瀬 隼子

ある日、夫が風呂に入らなくなった――。
いまもっとも注目される芥川賞作家が現代社会と家族に孕む問題を鋭利に描きとった作品。

「風呂には入らない」。ある夜、夫がそう告げた。問うと、水が臭くて体につくと痒くなるという。何日経っても風呂に入らない彼は、ペットボトルの水で体を濯ぐことも拒み、やがて雨が降るたび外に出て雨に打たれに行くようになる。結婚して10年、この先も穏やかな生活が続くと思っていた衣津実は、夫と自分を隔てる亀裂に気づき——。誰しもが感じ得る、今を生きる息苦しさを掬い取った意欲作。

最初にご紹介するのは、すばる文学賞を受賞した永井みみさんのデビュー作『ミシンと金魚』と、芥川賞を受賞された高瀬隼子さんの『水たまりで息をする』です。
認知症を患うおばあさんの視点で描かれる『ミシンと金魚』
通院帰り、ヘルパーさんに「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と尋ねられ、自身の過去に思いを馳せる主人公のカケイさん。カケイさんが語る形で描かれる壮絶な女の一生ですが、切なさと温かさが滲みます。傍から見れば決して幸せだとは言えない状況だと思うのですが、一生懸命生きて、生きて、生き抜いてきたカケイさんの姿に愛おしさを感じます。
『水たまりで息をする』は、ある夫婦に訪れたとある変化とその生活を描いた作品。
穏やかで変化のない日常がこの先も続くと思っていた衣津実。
ところが夫に「風呂には入らない」と宣言をされたことで日々が緩やかに変化していきます。
読み終わった後に『水たまりで息をする』というタイトルを何度も反芻したくなる作品です。

大注目のエッセイ&ノンフィクション作品

続いては楽しく読めるこちらの3作品をご紹介!

左から『クラスメイトの女子、全員好きでした』『マチズモを削り取れ』『しつこく わるい食べもの』

『クラスメイトの女子、全員好きでした』
爪 切男

小学校から高校まで、いつもクラスメイトの女子に恋をしていた。
個性豊かな女の子たちの輝きと切ない恋心が詰まったエッセイ21編。

「おまえは、女の子と恋はできないだろう」。
父から突然の宣告を受けた少年は、クラスメイトの女子をひたすら観察することにした。
宇宙一美しいゲロを吐く女の子。
水の飲み方が妖怪みたいな学校のマドンナ。
憧れのプロレスラーそっくりの怪力女番長。
全員素敵で、全員好きだった。
面白くて、情けなくて、ちょっぴり切ない恋の記憶。読めばきっと、恋をしたくなる!
全21編のスクール・エッセイ。

【特集ページはこちら】

『マチズモを削り取れ』 
武田 砂鉄

男、めっちゃ有利なのだ。男、めっちゃ優位なのだ。
路上、電車、会社、トイレ……公共空間にはびこる
マチズモ=男性優位主義の実態を取材&徹底検証!

なぜ道を歩くだけで、電車に乗るだけで、家を借りるだけで、仕事のキャリアを築こうとするだけで、女性にはこんなに困難がつきまとうのか? 日常にはびこる〈マチズモ=男性優位主義〉の実態を男性ライターが取材&徹底検証! ジェンダーギャップ指数、先進国でぶっちぎり最下位のこの国の「体質」をあぶり出す。個人として考え、社会の問題として捉え、私たちの未来のために問いかけていく全12章。

『しつこく わるい食べもの』 
千早 茜

いいさ、いいさ、いまくらい好きなものを食べるがいいさ。
驚愕と共感の声がどしどし寄せられた食いしん坊作家の気高く偏屈なエッセイ集、シリーズ第2弾!

悪党たちの食卓に憧れ、断捨離にあらがって炊飯器を擁護し、要らぬ助言に嚙みつき、よく腹を下す。
そんな偏屈でめんどくさい食いしん坊作家の自由な日常は、否応なくコロナ禍に侵食されていく。
それでも——。
自由の意味さえ変化してしまう世界で、大切なものや好きな時間は変わらないと確認し、愛する食に救われる日々。
北澤平祐氏の挿画も多数収録した、異色の食エッセイ集シリーズ第2弾!

エッセイとノンフィクションを3冊ご紹介いたしました!
ドラマ化が控える大注目のエッセイ『クラスメイトの女子、全員好きでした』
著者の爪さんが小学校・中学校・高校と学生生活の中で出会った様々な女の子の思い出を綴った全21篇のエッセイ集。
くすっと笑えてほろりと沁みる、ありのままの女の子達への愛しさが溢れる作品です。
日常に潜むマチズモ=男性優位主義を取材&徹底検証した『マチズモを削り取れ』
日本の昨年2023年のジェンダーギャップ指数は146か国中125位で過去最低。
日々の生活の中に何気なく存在する男性の優位性に対して「なんで?」をぶつけ問題を真摯に見つめています。
”男だから”、“女だから“という言葉に何かしら違和感を感じたことがある、言葉にできないけれどなんだかもやっとする感覚。そういった経験のある方は是非読んでみてほしい作品です。
人気エッセイの文庫化第2弾!『しつこく わるい食べもの』
千早茜さんの食へのこだわりと愛がたっぷり詰まったエッセイです。
炊飯器に感情移入したり、パフェとの逢瀬を楽しんだり。
コロナ禍になり日常がひっくり返る中でも好きなものは好き、その大切さを再認識する。食べものへの愛着が小気味いい、気高いエッセイです。
北澤平祐さんの挿絵も可愛く楽しい一冊となっています。

ドキドキハラハラのエンタメ小説

次は、こちらの3作品を。

左から『アパレル興亡』(上・下)『スリーアミーゴスバッドカンパニー 3』

『アパレル興亡』(上・下)
黒木 亮

ユニクロ、ZOZO、三越……
日本経済の栄枯盛衰とファッション業界の裏側を活写!
経済小説の名手が描く巨大産業の一大絵巻。

「俺、東京に行きてえんだ!」昭和28年、山梨県の貧農生まれの田谷毅一は、高校卒業後、親の反対を押し切って東京・神田の小さな婦人服メーカーオリエント・レディに入社。
既製服メーカーが〝つぶし屋〟と蔑まれる中、人並み外れた努力と才覚で会社を急成長させる。
高度経済成長と既製服の普及の波に乗り、事業はますます大きくなるが——。
日本経済の栄枯盛衰とアパレル産業の裏側を活写する長編。

『スリーアミーゴス バッドカンパニー 3』
深町 秋生

政治家の裏金問題、外国人労働者への差別、特殊詐欺グループによる広域強盗事件……。
手段をいとわぬ人材派遣会社“NASヒューマンサービス”が、世に蔓延る悪を成敗します。
大人気シリーズ、待望の第3弾。

人材派遣会社〝NAS〟。
社員の有道が今回派遣された先は、多くの技能実習生が働く建設会社。
そこでは外国人差別に加えて、不当な過重労働が強いられているともっぱらの噂で……。
武闘派の有道、元エリート公安刑事の柴、普段はおしとやかだがひとたび闇に紛れれば無敵の美桜。
そして癖の強い面々を取りまとめる美人社長野宮らが、真の悪に鉄槌を下す。
スリリングな展開の大人気シリーズ第3弾!

【特集ページはこちら】

今月のエンタメ小説2作品をご紹介!
『アパレル興亡』(上・下)
こちらはアパレル業界、洋装業界の裏側を描いた作品。
洋服、と一口に言ってもその製造から販売までにはたくさんの人々がかかわっています。
それぞれの視点から、事実に基づくフィクションとして壮大な物語が描かれていきます。
上下巻で圧倒的な情報量と共に八十年に及ぶ繊維産業の歴史を学ぶこともできる作品です。
『スリーアミーゴス バッドカンパニー 3』
金次第でなんでも請け負う人材派遣会社〝NAS〟。
今回も様々な危険な依頼が舞い込みます。その依頼はそれぞれの過去に関わる人物たちからのもので……?
個性的なメンバーたちが大奮闘!
激しいアクションシーンと人間ドラマが魅力の全4篇です。

バラエティ豊かな書下ろし小説! いきなり文庫!

続いては文庫書き下ろしの3作品をご紹介。

左から『ウィンズテイル・テイルズ 封印の繭と運命の標』『旅立ちの空 お江戸縁切り帖』『鶴は戦火の空を舞った』

『ウィンズテイル・テイルズ 封印の繭と運命の標』
門田 充宏

世界の危機を救え!
世紀の大実験。それは巨大生物vs.人類、究極のバトルロイヤル。
近未来SF×バトルファンタジー、第2弾。

変異から百二十年。
少年・リンディは仲間と共に、人類史上初めて謎の巨大生物〈徘徊者〉の封印に成功する。
戦果を聞きつけてウィンズテイルにやってきた研究者たちは、特殊能力を持つリンディらに様々な人体実験を強いる。
飽くなき探究心は、さらなる危険な実験へと彼らを駆り立て、とうとう徘徊者よりも恐ろしい敵を呼び覚ましてしまうことに! 
近未来SF×バトルファンタジー、緊迫の第2弾。

【詳しくはこちらの紹介ページから】

『旅立ちの空 お江戸縁切り帖』
泉 ゆたか

生霊の視える「縁切り屋」お糸が母親の秘密を知って選んだ道とは⁉
温かで個性豊かな長屋の面々との別れの時、怒涛のシリーズ最終巻。
大人気青春時代小説。

江戸の長屋で〝縁切り屋〟を営むお糸。
客の相談に乗り、相応しい縁切り状を認めている。この商売をするうち、縁切り状を受け取った者に関わる生霊が視えることに気づく。
男女や親子、商売の問題など、縁を切りたい者と切られる者の複雑な心情に生霊の力を借りて寄り添っていくが……。
みんなの駆け込み寺に成長したお糸が、自分を捨てた母の秘密を知って選んだ新たな道とは!? 
大人気の青春時代小説。

『鶴は戦火の空を舞った』
岩井 三四二

「地上」から自由になりたい!
日本の軍組織を離れた彼は海を渡り、フランスで戦闘機を駆る。
ライト兄弟からわずか10年で実践投入! 戦闘機は「凧のお化け」から急速に進化!
胸躍るドラマ、白熱の空中戦!
近代を舞台にした歴史時代小説の新地平!

戦闘機が実戦に投入された第一次世界大戦当時。
日本軍で招集された操縦訓練生の一人、錦織英彦は持ち前の体力と視力で操縦センスを発揮。
しかし上司に好かれず任務から外されてしまう。
しがらみを捨て、自由に飛びたいと思った英彦は、フランスでピロット(戦闘機乗り)になった先人のことを知り、渡仏。
アス(エース)を目指す新たな挑戦が始まった——。
近代を舞台にした、歴史時代小説の新地平。

【こちらから冒頭を試し読みいただけます】

今月の文庫オリジナル書下ろし小説は3作品!
壮大な世界観で描かれる少年少女の闘いの物語『ウィンズテイル・テイルズ   封印の繭と運命の標』
こちらは先月刊行された『ウィンズテイル・テイルズ 時不知の魔女と刻印の子』に引き続いてのウィンズテイルシリーズ第2弾。
未知の生物によって侵略が行われ、文明が失われてしまった世界が舞台となるこのシリーズ。
今作では主人公・リンディたちのもとに研究者達がやってきます。人類の復興のために実験を行うのですがその結果最悪の敵を呼び起こしてしまい……!?
迫力のバトルシーン満載のディストピアファンタジーです!
『旅立ちの空 お江戸縁切り帖』はシリーズ最終巻。
「縁切り屋」を営むお糸は、たくさんの出会いと別れを経て成長してきました。今作ではタイトル通り長屋の面々の新たな旅立ちと、自身のルーツである母親のことを知ることになり……。
人は変わっていきます。その変化を優しく受け止め、肯定し、温かな気持ちを残してくれる青春時代小説となっています。
日本の戦闘機パイロット最初期を描いた『鶴は戦火の空を舞った』
空にあこがれ、飛ぶことに取りつかれた主人公は日本でパイロットができなくなるとフランスへと渡ります。
手に汗握る空中戦もさながら、戦闘機の歴史をたどる一冊にもなっており、”凧の親戚みたい”と言われていたアンリ・ファルマン機からタイトルにもなっている”鶴”フランカーなど、登場する機体について調べると戦闘機の目覚ましい進化に驚くこと間違いなし!

いかがだったでしょうか?
今月もバラエティ豊かな集英社文庫でした。
来月の刊行もお楽しみに!

集英社文庫noteでは連載小説からおすすめ本、裏話まで様々な情報を発信中です!
フォローやスキでの応援、よろしくお願いいたします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?