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【パブリッシャー事典】インディーに制限されない総合ゲームパブリッシャー/集英社ゲームズ

クリエイターの皆さまに、参加パブリッシャーについて知っていただくことで、マッチングの一助となるべく始動したインタビュー企画「パブリッシャー事典」。各パブリッシャーの特色や得意なこと、目指す姿などをお伺いしていきます。

今回は、集英社発のゲーム会社であり、Game Pitch Baseの運営協力も行っている集英社ゲームズの森さん、山本さんにお話を伺いました!


「集英社ゲームズ」ってどんな会社?

ーー本日はよろしくお願いします! まずは会社の概要を教えてください。

2年前にできた会社でして、集英社100%出資の子会社となっております。

「原石の輝きを世界へ」というミッションを掲げておりまして、いわゆる才能に投資をしようと考えています。
ゲームクリエイターさんやゲームスタジオさんという原石をしっかりと発掘して、僕らのゲーム会社としてのプロデュース能力を足し算することで、グローバルに売っていく。
そんなミッションを達成すべく立ち上がったパブリッシャーです。

これまでのパブリッシュタイトルは?

ーーでは、これまでパブリッシュしたタイトルを教えてください。

1つ目はキャプテン・ベルベット・メテオ ジャンプ+異世界の"小"冒険ですね。2022年7月28日に発売しました。

こちらは、momo-piという小規模なゲームスタジオの作品です。
Google主催のGoogle Play Indie Games Festival 2019で、momo-piの作った『ペルセポネ』という作品がジャンプ+賞を受賞し、それがきっかけとなってプロジェクトがスタートしました。

小規模開発による作品としては珍しく、ジャンプ+のIPを乗せたタイトルです。

2つ目はハテナの塔 -The Tower of Children-ですね。
こちらはタストα というデベロッパーさんと一緒に作ったタイトルです。
いわゆるカードを使ったリアルタイムバトルでありながら、塔の最上部の集落に住む子供たちを地上に降ろす、という設定がユニークなローグライクゲームです。

3つ目はONI – 空と風の哀歌です。こちらは2023年3月9日にリリースしました。

こちらも、KENEI DESIGNの葉山賢英さんというクリエイターが生み出す世界観やアートスタイルに賛同したエンジニアとゲームデザイナー、コアメンバー3名で開発したアクションアドベンチャーです。
桃太郎の世界観をベースにしつつも、桃太郎にやられた鬼が桃太郎を退治するという一風変わったゲームになっています。

4つ目はSOULVARSです。
こちらは90年代のスーパーファミコンのピクセルアートを現代風に甦らせつつ、ハードに遊べるRPGとなっています。
ジーノさんというクリエイターが3年ほどかけて制作し、モバイルでリリースしたものを見てお声掛けしまして、集英社ゲームズでは他プラットフォームへの移植やプロモーションを担当しております。

以上4本をリリースしており、現在は未発表のものも含め、他タイトルを仕込んでいるところです。

ーー今仕込んでいるタイトルについて、ご紹介できるものはありますでしょうか?

公開されているタイトルとして、都市伝説解体センターですね。
こちらもぜひご期待いただけると嬉しいです。

ちょうど、PR部隊やSNS部隊をはじめとした、パブリッシャーとしての機能も拡充してきていますので、全社一丸となって盛り上げていこうと頑張っています。

ここ1年ほどの社内の人数を比べると、おそらく2.5倍くらいになっています。
そのくらい人材投資をしてパブリッシャーとしての体制を整えてきているので、会社設立からまだ2年くらいですが、1年前と今とではぜんぜんちがう組織になっています。
組織の成長性は、これからも期待してもらえる組織になってきていると思います。

会社として得意なこと、サポートできること

ーー続いて、会社として得意なこと、サポートできることを教えてください。

集英社ゲームズは、いわゆる内制の開発チームを持っていないパブリッシャーで、基本の開発部隊としてはプロデューサーが揃っている組織です。

「プロデューサー」って一般的なイメージとしては、予算を取ってきて、制作の進行管理をして、ビルドチェックして……という感じで、予算を獲得してくるのが一番の仕事というイメージがあるかもしれませんが、弊社では少し違います。
作品を司るのがディレクターだとすれば、商品としての価値を司るのがプロデューサー、そこはもちろん重要だと思っているんですが、個人的にはもっとクリエイターと同等に扱って欲しいというか、クリエイティブを上げていくために重要な存在だと思っています。

お笑い芸人で例えたときに、クリエイターがボケ担当、プロデューサーはツッコミ担当として、お客さんに伝わりやすく届けていくっていうのが一番やらなきゃいけない仕事だと思っていて。
わかりにくければ「もっと伝わりやすいボケにした方がいいんじゃないですか?」みたいに、一緒にネタを作り上げていく存在であるべきというのを思っています。

僕は前職でもオリジナルゲームに関わる機会が多かったので、その経験が集英社ゲームズでも活かせればと考えています。
個人で作り上げるクリエイターの方も多いと思うので、「これって面白いのか?」「ちゃんと伝わるのか?」という迷いが生じた時に、伴走してアドバイスできる存在、クリエイティブを高めていくためのパートナーになれればと考えています。

ーークリエイターに対して、プロデューサーのサポートがかなり手厚い印象がありますね。プロデューサーお一人でどのくらいのタイトルを担当されているのでしょうか?

すでに予算がついて進行しているものに限ると、プロデューサー1人につき、少なくとも2本、多い人で3本ですね。
企画準備段階まで含めると6本くらいです。
繁忙期が重なると限界は2本だと思うのですが、多くのクリエイターに機会を与えるのもパブリッシャーの役目だと思っているので、本数は今後増やしていきたいと思っていますね。

ーークリエイターさんとのコミュニケーション頻度はどのくらいなのでしょうか?

今自分が持っているタイトルは、過去にもお付き合いがあったことや、まだ企画の前半ということもあり、2週間に1回定例をやる程度ですね。
ゲーム制作経験がまだ浅い方であれば、都度コミュニケーションをとって信頼関係を作っていきますし、クリエイターさんの経験値や要望に合わせています。求められていないのに過干渉するのも……ということもありますから。
基本的には、週に1回定例で進捗確認してコミュニケーションをとるパターンが多いですね。
佳境に入るとベタに貼り付いて伴走しているタイトルもあります。
そこは臨機応変に対応しています。

ーークリエイターさんの経験や特性、プロジェクトの状況に合わせるということですね。

キャリアが長いプロデューサーが多いので、そこは付かず離れずというか、「お呼びとあらば即参上」といった感じですね。

プロデューサーはもちろんですが、アシスタントプロデューサー(AP)の存在も大きいかなと思っています。
プロデューサーはベテランで、ゲーム業界のことをよくわかっている方々なのですが、APのメンバーは30歳前後でまだ若い方が多く、若い視点も横に入って、幅広い視点でゲームに向き合えるというのも特長かなと思っています。

ーーいろんなプロデューサーさんがいると思うんですが、どんな方がいらっしゃるんでしょうか?

日本国内のデベロッパーや個人クリエイターと、ゲームを立ち上げてきた経験を持っている方は多いです。
コンソールを長くやってきた人ももちろんいますし、モバイルゲームを長く運用してきた方や、メジャーなタイトルのプロデュース経験がある方、海外のクリエイティブに対して投資やスカウティングをする方、大手ゲーム会社でIPモノのゲームを手がけてきた方もいます。
シニアプロデューサー、プロデューサー、AP全部含めると14人ほどいますね。

あとプロデューサーとは別に、クオリティコントロールのチームを新設しました。
進行中のタイトルの定例に出たりビルドを触ったりして、客観的に開発の進捗やコンテンツの状態を見て、コンサルティングをしてもらっています。
プロデューサーでは見切れない細かな挙動を見てもらったり、さらなるクオリティアップのための提案をしてもらったり、客観的な目線でサポートをしてもらっています。

ーーここまでお伺いしているだけでも、プロデューサー、AP、クオリティコントロールと、1タイトルにたくさんの役割の方が関わっていますね。

そうですね。過剰供給にならないように配慮しながら、手厚くサポートしています。
もちろんQAやストア登録、ローカライズの担当者もチームの中にいます。
ゲームのデバッグやローカライズ、ストア申請全般も、パブリッシャーとしてしっかり対応できますので、まるっと投げてもらってOKです。

もう1つ特長的な点を言うと、ジャンプ編集部出身メンバーもいるので、キャラ作り、ストーリー、世界観などの壁打ちができるところも、僕らならではのバリューですかね。

『都市伝説解体センター』は、元編集部のメンバーにコンサルとして入ってもらって、1話目の見せ方がかなりキャッチーになりました。
漫画は連載1回目がめちゃくちゃ大事だと思うんですけど、その目線での指摘がもらえる環境は大きいかなと思います。

集英社ゲームズに入って感じるんですけど、漫画における編集者とゲームにおけるプロデューサーは役割が似ているなと感じていますね。

ここ1年くらいでめちゃくちゃ強化したのは宣伝チームです。
そもそも僕らが目指すポジションとして、「インディーゲームパブリッシャーではなくゲームパブリッシャーになろう!」というミッションを掲げてきました。
これは「ゲーム市場に対して幅広くマーケティングができる組織になっていこう」という意味で、規模の大小に関わらず、いろんなゲームをグローバルにチャレンジできる組織を作っていこうとしています。

大手ゲーム会社でビッグタイトルを回していた宣伝マンや、モバイル系の宣伝をやっていたメンバー、ゲームではないものの海外で宣伝をやっていたメンバーに入ってもらったり。

あとは多国籍のメンバーですね。
中国、アメリカなど幅広く外国人のメンバーも採用しており、グローバルに宣伝を押し出していけるような体制を整えています。

ただプレスリリースを送るだけじゃなくて、「仕掛け」を作る動きもできてきています。
表には出せない情報もいっぱいあるんですが、ウィッシュリスト獲得のノウハウや、Steamに限らず、「どういうタイミングでどういう情報を打てばどんなユーザーさんに反応してもらえるか?」のノウハウが、ここ1年で貯まってきました。
デジタルマーケティング周りの人材も強化しており、SNSやデジタル周りの分析・運用も進めています。

あとは、他社パブリッシャーさんもやっていると思いますが、プラットフォームとのリレーション作りもメンバーを増員しています。
いわゆる渉外的な役回りで、任天堂さん、PlayStationさん、XBoxさん、Valveさん含めて、定期的に情報のやり取りをしていく中で、各プラットフォームのイベントでピックアップしてもらう機会もだいぶ増えてきました。
大手のゲーム会社さんがやっていることをコンパクトにしっかり押さえたような宣伝はやれるようになってきましたね。

中国籍のメンバーがいて、台北ゲームショウや韓国のG-STARでの講演やインタビューも同時通訳してくれたり、現地メディアとのパイプ作りができたり、有機的な動きができるようになってきました。

少人数や個人だとできないことができるのは、我々パブリッシャーの強みなので。
専門的にそこへしっかり人材を投資して、ノウハウを平準化していく動きができてきているので、1年前からだいぶ生まれ変わった集英社ゲームズになってきていると思います。

ーー1年前から進化した集英社ゲームズということで、さらに期待が持てますね!
あとはボードゲームを作っているのも特長的ですよね。

ゲームパブリッシャーとはまた違う部隊で、集英社のIPを預かってボードゲーム作るというのをやっています。
ボードゲームのクリエイターとコラボして、集英社IPのボードゲームを作ることもありますね。
おかげさまで大ヒットしていまして、会社としてもしっかりしたビジネスになってきています。

これの知見が複合的にコラボレーションして、ゲームの宣伝に謎解きの要素をいれてみるといった応用もできたりしています。
投資させていただく作品としては、キャラクターや世界観ができているタイトルに注力しているんですけど、アニメや漫画、ボードゲームなど、ゲームだけじゃない作品の広げ方を提案できるようになっています。

今後パブリッシュしていきたいタイトルは?

ーー今後パブリッシュしていきたいタイトルはどんなタイトルでしょうか?

パブリッシャーさんによって色や芸風があると思うんですけれども、集英社ゲームズは今現在は的を絞ることにこだわっていません。

前職で「ゲームやろうぜ!」「PlayStation CAMP!」というゲームクリエイター発掘オーディションをやっていたこともあって、クリエイターの個性やその人の才の発露がどんな世界・表現なのかは、千差万別で十人十色というのを感じています。
当時『TOKYO JUNGLE』『Rain』『勇者のくせになまいきだ。』といったタイトルが生まれるのを見てきて、集英社ゲームズの個性というのは、個性がないのが個性だなと感じています。

「今こういうものが当たっているからこれでいこう」って視点で企画を見ているプロデューサーはいなくて、「これはまだ無いけど、チャレンジしたら面白そうだよね」で企画に魅力を感じるプロデューサーが多いです。

集英社という大きな拠り所がある中で、IPの企画も今後はやっていきたいと思っているんですけれども、「キャラクター」というのはポイントになってくる気がしています。

繰り返しになりますが、僕らはゲームパブリッシャーであろうとしているので、規模や特定のキーワード、例えば「インディーであるべき!」みたいなのとは良い意味で違う方向として、総合的に力をつけていきたいなと思っています。
「インディー」みたいな言葉に振り回されないパブリッシャーでありたいなと思っています。

面白そうであれば、規模や金額は関係ないと本当に思っているので、必要なお金はしっかり投資していきたいし、しっかり作品を届けられるパブリッシャーでいたいですね。
総合的にいろんなゲームを出して、ノウハウを作っていきたいと思っています。

ーーラインナップを見ていると、規模が大きめの作品が多い印象なのですが、例えば1人で開発している超小規模なクリエイターさんへも投資する可能性はあるのでしょうか?

人数はあんまり関係ないかなと思っていて。
「プロになりたいかどうか?」は大事にしているかもしれません。
「アマチュアでもゲームが作れればそれでいいんですよね」とか「ゲームじゃなくてもいいんですよね」とかではなく、「このゲームで絶対に名を上げたい! 独り立ちしていきたい! ヒットを出していきたい! だからパブリッシャーの力が必要なんだ!」という気持ちとか、覚悟を持っている人が僕らの投資先になるかなと思っていますね。

最初は1人でも、チームを集めて5人で作っていく場合もあると思いますし、究極1人でもその気持ちを持ち続けられるのであれば、代わりに5年かかったとしても、それはそれで応援できるし。
人数が理由にはならないし、線引きにもならないです。

ピッチデッキに盛り込んで欲しい情報は?

ーーでは、ピッチデッキに盛り込んで欲しい情報はありますでしょうか?

遠慮せずに「こういう打ち出し方をして欲しい」「これくらい宣伝にお金使って欲しい」はぜひ伝えて欲しいですね。
「宣伝費高すぎるなぁ」とかで判断することはないので、何を理想として考えているのかは、具体的に数字なり出して書いていただく方がいいかなと思います。

開発側の人間としては、どこまで行っても企画の内容が大事だと思っています。
最初にボケとツッコミの話をしましたが、ピッチデッキは一番最初にネタをおろす場所だと思うんですね。
「どういう順番で何を説明すれば、読み手が一番興味を持つか?」とか「自分の想いが一番伝わるか?」を吟味して、企画書の構成を練ってもらうのがいいのかなと思います。

Game Pitch Base 参加クリエイターに向けて

ーー最後に、Game Pitch Baseに参加しているクリエイターに向けて一言お願いします!

「作りたい」って気持ちは「作るべき」っていう要請を遥かにを上回る原動力になると思っていて。
組織の中でゲームを作るってなったら、「この時期にこういうゲーム出すべきだよね」っていう組織的使命で物事が動くことが非常に多いと思うんですよね。

クリエイティブに関しては、「べき」という要請よりは、「誰がどんな強い気持ちでこれを作りたいと思っているか?」の方がよっぽど大事だと思うんですよ。
その辺りを集英社ゲームズとしても、カルチャーとして推奨したいと思っていて。
企画も大事なんですけど、最終的には人なので、「作るべき」じゃなくて「作りたい」ってどれだけ思っている方なのかっていうのは大事にしたいなと思っています。

ーーありがとうございました!


2022年に集英社から立ち上がった集英社ゲームズ。
設立から2年ほどでありながら、集英社ならではの編集部のノウハウを活かしたフィードバック体制、プロデュース面の手厚いサポート、グローバルに向けた宣伝体制など、インディーゲームに限定しない「ゲームパブリッシャー」になろうという本気度合いを感じました。

クリエイター自身の「作りたい」という強い想いに、全力で向き合おうとする姿勢からは情熱が感じられ、クリエイターと同等の覚悟を持って突き進む「バディ」のような存在にも思えました。

「世界に向けて、本気で作りたい」という強い意思をお持ちの方は、ぜひお話ししてみてはいかがでしょうか。

集英社ゲームズのGame Pitch Base パブリッシャーページはこちら

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