「FLOW」―再生と活動。クリエーションが物質を循環させ、生活と舞台に春を呼ぶために。
空間デザイナー・山本大介氏の作品が、僕のパンタンにあるアトリエに程近いギャラリー『GSL Gallery (THE GUILD OF SAINT LUKE)』で展示されているということで、観に行ってきました。山本氏とは2022年のパリファッションウィークで『beautiful people』のデフィレの振付に関わったことが縁の始まりです。
今年は、私が大学時代に自然科学を学ぶ上で必読とされていたレイチェル・カーソンの「沈黙の春」が出版されてから、ちょうど50年目に当たります。その後、世界は多岐にわたるエコに関する進歩を遂げてきましたが、現在は単なるリサイクルを超え、循環することをさらなる喜びとする構造物が、現実の空間に点ではなく線として存在する時代に至ったと感じています。
そんな中で、山本氏の「資材を廃棄せずに循環を空間プロセスに組み込んでいる」というアプローチに大きな興味を抱き、この展覧会を訪れるタイミングを楽しみにしていました。会場に足を踏み入れてすぐに分かったのは、「単なるリサイクル」と「循環を空間プロセスに組み込むこと」の間の顕著な違いです。この椅子は、椅子としての役割を果たしつつも、その価値が再度塗り替えられたものだけが発することができる「持続可能性」や「循環の喜び」を発していたからです。
具体的に、我々が最も身近に目にする、紙のリサイクルを例に取ってみます。真っ白でつるつるの絹のような上質紙は、リサイクルされると必ず少し色がくすんだやや粗い、公式書類として使われるのを避けられがちな質感のものに再生されます。一方、缶や瓶のリサイクルは、その変化を気づかれないほど見事に行われます。特に水平リサイクル(例えば瓶から瓶へのリサイクル)は、その効果はなおさらです。
しかし、これらのリサイクルは単に「リサイクル」という枠を超えてはいません。空間プロセスに組み込まれたものは、その空間が存続するための不可欠な要素として機能し、次の空間へと引き継がれるまでの役割を担うピースとなります。そのような積極的な価値を持ち得るものとして提供できるものでなければ、真の「循環を空間プロセスに組み込む」ことには至らないのです。「FLOW NOT CHAIR」はこのような理念を、存在のみを通して語りかけてくれていると私は感じました。
さてこのギャラリーがあるのも、僕のアトリエがあるのも、パリの北東に隣接する「パンタン市」です。
アトリエとギャラリーの間は徒歩10分程度なのですが、ここを訪れる前に、「資材を廃棄せずに循環を空間プロセスに組み込む」取り組みを行っている施設に寄り道をしました。僕の舞台を形にするために、とても大切な役割を担っている、舞台美術に関する施設です。その話はまた、次の投稿にて。
Compagnie ÔBUNGESSHA by SHU OKUNO
次回公演のお知らせ
« Blanc de Blanc(白の中の白)»
マイムと身体表現によるソロ舞台作品の再演です。
パリ公演 6月6日(木)・6月7日(金)20時00~
INFO & RESERVATION
アヴィニヨン国際演劇祭OFF2024
Festival OFF d'Avignon 2024
6月29日から7月21日(偶数日)10時45分~
Théâtre Transversal
1時間の公演時間の間、沈黙を保つことができる全ての人が、公演対象になります。
※現在公式ページが改装中です!
日本語でのお知らせは、できるだけnoteで更新します。
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