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EPPでプレミアリーグ二つのダービーを分析

・はじめに

私は2021年1月にEPPという効果的なパスを測る新指標を紹介する記事を書きました。新指標と言っても私が独自に考えて手集計で集めたデータですので、統計学的なアプローチは一切していません。ただその記事の反響が良かったので現在に至るまでEPPに関する記事をいくつか書いてきました。

上のマガジンから確認できます。
その第三弾として先日英語でEPPを紹介する記事を書きました。その中でノースロンドンダービーとマンチェスターダービーをEPPを使って分析しました。せっかくなのでそれを日本語でも投稿してみます。
そもそものEPPに関しては冒頭のリンクをクリックしてみてください。

・ノースロンドンダービー

まず、アーセナルのボール保持率は65%で、パス成功率は90%でした。つまりアーセナルがボールを保持して試合を支配していたことになります。実際、アーセナルのEPPは55.4で、トッテナムのは32.9でした。もちろんレッドカードも要因の一つがではありますが、アーセナルがどうトッテナムを下したのかEPPで見てみましょう。

EPPを出し手と受け手に分けて集計しました

まずアーセナルのSBを比較してみます。ジンチェンコのパサーEPPが12.6であるのに対し、ホワイトは3.5でした。つまりジンチェンコの与えられたタスクはホワイトよりも攻撃的だったということです。実際にWhoscored.comの平均的な選手のポジションを見ると、ジンチェンコはホワイトよりも内側の高い位置でプレーしていることがわかります。
最も注目すべきなのは、この試合で最も高い数値となったジェズスのレシーバーEPPです。トッテナムはこの試合で守備的にプレーし、シャドーはWBと共にアーセナルのWGにダブルチームを組みました。そのためボランチであるホイビェアとベンタンクールは、中央でプレーするアーセナルのSBと動き回るIHに対応する必要がありました。例えばベンタンクールがジンチェンコやジャカにプレスをかければ、その背後には空いたスペースができます。そこでジェズスはそのスペースに下がり、ジンチェンコやトーマスからパスを受けることができました。これがジェズスが最も効果的にパスを受けれた理由です。ただ一方で、ウーデゴールとホワイトのEPPは左サイドよりも低い数字。つまりアーセナルの右サイドは左サイドよりも効果的なプレーができていなかったと言えます。

次にスパーズを見てみます。トッテナムはそれほど多くのパスを通ししていないため、EPPだけで分析するのは難しいですが、いくつかのことが分かります。ソン・フンミンとケインのパサーEPPはリシャルリソンより圧倒的に高いですが、レシーバーEPPはリシャルリソンより低い数字です。これはソン・フンミンとケインがカウンターの場面で起点としてプレーし、リシャルリソンがシュートチャンスに絡んでいたことを表しています。

・マンチェスターダービー

全体として、シティがこの試合の主導権を握っていました。実際、シティは485本のパスをユナイテッドは408本のパスを通し、大差はなかったにもかかわらず、シティのEPPは58.9とユナイテッドの約2倍でした。

EPPを出し手と受け手に分けて集計しました

グリーリッシュはドリブルどキーパスが3回とチャンスメイクが主なプレーでした。そのためグリーリッシュは高い位置でパスを受けていました。従ってレシーバーEPPは14.7と、この試合では最も高い数値となりました。一方、フォーデンはドリブルやキーパスは全くなく、逆に6本のシュートを打ちました。その結果、チャンスメイクではなく、シュートチャンスに集中し、レシーバーEPPはグリーリッシュより低くなりました。フォーデンがよりシュートチャンスに絡む代わりに、デ・ブルイネが右サイドでより多くのチャンスを作っていました。実際にパサーEPPは12.8となり、この試合では最も高い数字でした。

ではなぜユナイテッドはシティとは対照的に良いプレーができなかったのでしょうか?マルティネス、マラシア、ショーなどの左サイドの選手たちのパサーEPPは、シティの4バックとほぼ同じ数字でした。しかしシティと違うのは攻撃陣のパサーEPPで、シティの攻撃陣のパサーEPPは全員3.0を超えていますが、ユナイテッドの場合は全員3.0を下回っています。つまりユナイテッドがチャンスを作れなかったのは、攻撃陣の連携がうまくいかなかったからだと言えると思います。

・まとめ

こんな感じでEPPはチームとしてのパス評価はもちろん、誰が効果的なパスを出した/受けたのかがわかるようになります。もしEPPが良いなと感じたらぜひ拡散よろしくお願いします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


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